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アトレティコの継続困難だった【3−1−4−2】とシメオネの「保守性」

森田泰史スポーツライター
シュートを打つコレア(写真:ロイター/アフロ)

「勝てない時は、負けないようにプレーしなければいけない」

ホセ・マリア・ヒメネスは、そう肩を落とした。チャンピオンズリーグ・グループステージ第5節で、アトレティコ ・マドリーが本拠地ワンダ・メトロポリターノでミランに0−1と敗れた後のコメントだ。

グループステージ最終節でのアトレティコの勝利は必須になった。引き分けは意味をなさない。またアトレティコがポルトに勝ったとしても、ミランがリヴァプールに勝利すれば、アトレティコのグループ敗退が決まる。つまり、非常に厳しい状況に追い込まれたのだ。

ミラン戦のジョレンテ
ミラン戦のジョレンテ写真:ムツ・カワモリ/アフロ

■ビッグマッチで露呈したウィークポイント

批判の矛先はディエゴ・シメオネ監督に向けられている。

昨季、アトレティコはリーガエスパニョーラで優勝を達成した。とりわけ、シーズン前半戦は「無双状態」だった。勝ち点50を積み上げ、冬の王者に輝き、調子の上がらないレアル・マドリーとバルセロナを大きく引き離していた。

アトレティコがリーガで優勝できたのは、システムチェンジとプレースタイルの変更が功を奏したからだ。従来の【4−4−2】を諦め、【3−1−4−2】を基本布陣にした。それまでの堅守速攻の戦い方から、ポゼッション・フットボールへの切り替えが進められた。

(アトレティコの3ー1ー4ー2)

キープレーヤーになったのは、コケ、マリオ・エルモソ、マルコス・ジョレンテだ。

アンカーに据えられたコケは、誰よりも卓越した戦術眼で試合を読み、中盤の底からゲームを組み立てた。

エルモソは左CBからのビルドアップで貢献。縦パスとサイドチェンジを使い分けながら、後方で起点になった。

ジョレンテは右インサイドハーフで躍動した。2列目から果敢に飛び出して、ニアゾーンを突くランニングで右WBのキリアン・トリッピアーと協働しながら右サイドを攻略した。

コケとレマル
コケとレマル写真:ムツ・カワモリ/アフロ

■複数システムと生じる迷い

だが今季のアトレティコは、それを継続しなかった。

大きかったのはアントワーヌ・グリーズマンの加入だ。この夏、サラリーキャップの問題を抱えていたバルセロナは、グリーズマンの放出先を探していた。そして最終的には、移籍市場最終日にレンタルという形でグリーズマンのアトレティコ復帰が決定した。

グリーズマン、ルイス・スアレス、ジョアン・フェリックス。この3選手を共存させようと、シメオネ監督は腐心してきた。自ずと【3−1−4−2】のシステムから遠ざかり、【4−3−3】や【5−2−3】あるいは【4−4−2】が使われるようになった。

(アトレティコの複数システム)

アトレティコを研究してくるチームは、弱点を見抜いていた。

前線からのプレッシングを掛ければ、アトレティコは苦しむ。チャンピオンズリーグで対戦したミラン、リヴァプール、ポルトは、その方法でアトレティコを追い詰めた。

昨季の戦い方を継続していれば、【3−1−4−2】でのビルドアップの仕方を考えれば良かったはずだ。

3−1−4−2の距離感
3−1−4−2の距離感

だが複数のシステムを迷いながら使うシメオネ・アトレティコが、相手の前からのプレスを回避する手段を持ち合わせてはいなかった。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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