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なぜユーロで3バックがトレンドになっているのか?グアルディオラの影響力と守備戦術の変遷。

森田泰史スポーツライター
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

ヨーロッパが、盛り上がっている。

EURO2020が開幕を迎えた。新型コロナウィルスの影響で開催が一年延期になった本大会だが、複数都市開催と有観客でまさにフットボールの祭典と化している。

写真:代表撮影/ロイター/アフロ

欧州の人々がひとつひとつのプレーに一喜一憂している姿を見るのは久しぶりだ。開幕節のデンマーク対フィンランドの一戦では、クリスティアン・エリクセンが試合中に倒れ、肝を冷やした。一命をとりとめ、次戦のデンマーク対ベルギーの試合では、前半10分にゲームが中断されてスタジアム全体を拍手喝采が覆った。それは、なんとも素晴らしい光景であった。

だが目を引くのはエモーショナルな部分ばかりではない。今回のEUROは、非常に戦術的な意味合いで長けている。

■最終ラインの配置

まず、フォーカスすべきは最終ラインの配置だ。

大半のチームが、3バックを採用している。基本配置は4バックだったとしても、攻撃時に可変で3バックになるところが非常に多い。これには、率直に、驚いた。3バックが使われる可能性はあると思っていたが、ここまでとは、という印象だ。

このシステムのトレンドに、大きな影響を与えた人物がいる。ジョゼップ・グアルディオラ監督だ。2020-21シーズン、マンチェスター・シティをチャンピオンズリーグ決勝に導いた指揮官である。

グアルディオラ監督はジョアン・カンセロに新たな役割を与えた。「カンセロロール」と呼ばれたそれは、サイドバックの概念を覆すものだった。

写真:ロイター/アフロ

元々、グアルディオラ監督はサイドバックを重視する指揮官だ。

バルセロナ時代にはダニ・アウベスやエリック・アビダルを、バイエルン・ミュンヘン時代にはダビド・アラバやジョシュア・キミッヒの「コンバート」を成功させている。

「コンバート」という表現は相応しくないかも知れない。グアルディオラ監督は、試合中の配置を動かすことで、彼らが複数のポジションをこなすように仕向けていく。

D・アウベスは、バルセロナで「偽ウィング」になった。リオネル・メッシのゼロトップを生かすため、ウィングの選手はディアゴナルランで中央に走っていく。その時、ワイドに張るのが、サイドバックのD・アウベスであった。

(D・アウベスのウィング化)

加えて、アビダルは必然的に最終ラインに下がる。2CB+アビダルで3バックが形成される。この形は今回のEUROで幾度となくみられる形の原型だ。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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