なぜマドリーはチェルシーに敗れたのか?ジダンの敗者の弁...アザールの存在とシステムチェンジの代償。

競り合うリュディガーとベンゼマ(写真:ロイター/アフロ)

決勝進出に値するチームが、勝利した。

 チャンピオンズリーグ準決勝で、レアル・マドリーはチェルシーと対戦した。ホームのファーストレグを1-1として迎えたアウェーのセカンドレグで、0-2で敗れたマドリーは欧州最高峰の大会から姿を消している。

得点を喜ぶヴェルナー
得点を喜ぶヴェルナー写真:ロイター/アフロ

 今季、マドリーは負傷者が続出している。チェルシー戦では、ラファエル・ヴァラン、ダニ・カルバハル、ルーカス・バスケスが負傷で欠場。セルヒオ・ラモスとフェルラン・メンディが「ぶっつけ本番」で負傷明けの一戦に臨んだ。

 ジネディーヌ・ジダン監督は3バックを選択した。【3-4-2-1】のチェルシーに対して、【3-1-4-2】で挑んだ。ヴィニシウス・ジュニオールを右ウィングバックに、コンディションが万全ではないエデン・アザールをトップに組み込む苦しい采配だった。

■複数のシステム

 主力の度重なる負傷離脱は、ジダン監督に布陣変更を考慮させた。

 マドリーは直近20試合で、14通りのディフェンスラインのメンバーを揃えた。そのうち、最も起用されたのはヴァラン、ナチョ・フェルナンデス、メンディ、L・バスケスの4バックだった。

 だがクラシコでL・バスケスが負傷して今季絶望となると、ジダン監督は3バックの導入を本格的に検討する。今季、初めて3バックが試されたのはリーガエスパニョーラ第1節延期分のヘタフェ戦だ。

 ナチョ、ヴァラン、メンディをセンターバックで起用して、ウィングバックにはカンテラーノのマルヴィン・パークとマルセロを据えた。その試合を2-0で制したジダン監督には、確かな手応えがあったはずだ。

レアル・マドリーのジダン監督
レアル・マドリーのジダン監督写真:ロイター/アフロ

 ジダン監督は今季、公式戦48試合で5つのシステムを使用している。

 指揮官は【4-3-3】【4-2-3-1】【4-1-4-1】【3-4-3】【3-5-2】を使い分けてきた。使い分けてきた、と言えば聞こえはいい。だが実態は欠場者の穴を埋めるために必死にやり繰りした結果だった。

■BBCとジダン・マドリー

 2015-16シーズン、2016-17シーズン、2017-18シーズンとCL3連覇を達成したジダン・マドリーだが、その時は【4-3-3】が基本布陣だった。ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドの「BBC」が欧州の脅威となっていた。その代替案は、指揮官にとってイスコをトップ下に配置した【4-4-2】のみであった。

 「BBC」は形成された5年間で、210試合に出場して442得点を挙げた。その期間のマドリーの総得点は784得点で、全体の56%を「BBC」が記録したことになる。何より、マドリーに13タイトルをもたらしており、その功績は大きい。

アザールとベンゼマ
アザールとベンゼマ写真:ロイター/アフロ

 「BBC」後のマドリーで、期待を懸けられていたのがエデン・アザールだ。2019年夏にマドリーが移籍金1億ユーロ(約130億円)でチェルシーから獲得した選手である。

 2017-18シーズン、チェルシーでアザールは輝きを放っていた。公式戦52試合に出場して17得点13アシスト。「すべての試合で違いを生み出してくれる。彼のようなタレントを備えている選手には、毎試合決定的な存在になることを要求する」と当時のアントニオ・コンテ監督が語っていた。

「神に与えられた才能を、爆発させなければいけない。だがアザールは、時に満足してしまう。1点決めて、もういいかなと思ってしまうんだ。クリスティアーノ・ロナウドや(リオネル・)メッシは、そうではない。2点、3点、4点と狙いにいく。そういう点では、アザールにまだ改善の余地はある」

 アザールはチェルシーでも適応に苦しんでいた。移籍一年目の2012-13シーズン、彼のドリブル成功率は48%だった。

 そこから少しずつ地位を確立していき、最後の3年間においては2016-17シーズン(ドリブル成功率74%)、17-18シーズン(76%)、18-19シーズン(63%)と得意のプレーを見せられるようになった。

 ただ、チェルシー時代のアザールはケガに強い選手だった。在籍した7シーズンで、欠場したのは20試合だ。一方、マドリーに移籍して以降は、すでに55試合を欠場している。

中盤で奮闘したモドリッチ
中盤で奮闘したモドリッチ写真:ムツ・カワモリ/アフロ

「(負傷に関して)これまで何度も話してきたが、そういう巡り合わせだったということだ。決勝まで、あと一歩に迫った。いまは、リーガのことだけを考えるべきだ」とはジダン監督の敗戦の弁である。

「システムは明確だった。このシステムは幾度となく使用してきたものだ。だがデュエルの部分でチェルシーに敗れた。我々には何かが欠けていた。非常の要求の高い試合だった」

「準決勝の試合だ。選手たちは準備ができていた。試合に出たのなら、それは準備ができていたからだ。私は選手たちを誇りに思う。チェルシーは素晴らしい試合をした。彼らが突破にふさわしかった」

マドリーは今季のリーガで2位につけており、首位アトレティコ・マドリーを勝ち点2差で追っている。次のセビージャ戦は決戦だ。

2017-18シーズン以来のチャンピオンズリーグ・ベスト4進出だった。だが今季のマドリーは無冠に終わる可能性がある。ジダンと選手たちの戦いは終わっていない。

フットボールライター/戦術分析家 東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。カンプ・ノウでメッシの5人抜きを目の当たりにして衝撃を受ける。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。『Foot! MARTES』出演中。

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