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バルサとレアルの運命を決する「クラシコ」の行方は?メッシのラストマッチの可能性とジダンの「勝負強さ」

森田泰史スポーツライター
競り合うバルベルデとメッシ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

レアル・マドリーとバルセロナが、リーガエスパニョーラのタイトルを懸けて激突する。

「世界が止まる一戦」と称されるクラシコは現地時間10日に行われる。3位マドリー(勝ち点63)がホームに2位バルセロナ(勝ち点65)を迎え撃つ。両者は首位アトレティコ・マドリー(勝ち点66)を追っている。

クラシコに意気込むベンゼマ
クラシコに意気込むベンゼマ写真:なかしまだいすけ/アフロ

「クラシコは世界最高の試合だ。そう考えるのは僕だけじゃない。歴史ある2チームの戦いで、いつも重要なゲームになる」と語るのはカリム・ベンゼマだ。

「難しい試合になるだろう。バルセロナはポゼッションを好むチームだ。僕たちと同じようにね。シーズン前半戦の時は中盤が鍵だった。今回もそうなるかもしれない。ただ、僕たちは勝ちにいく。なぜなら僕たちにとって決勝のようなものだからだ」

中盤で鍵を握るモドリッチ
中盤で鍵を握るモドリッチ写真:なかしまだいすけ/アフロ

マドリーとバルセロナは、この試合に合わせるかのようにギアを上げてきた。

まずはマドリーだ。直近12試合で10勝2分けと無敗を維持している。先のチャンピオンズリーグ準々決勝ファーストレグではホームでリヴァプールに3-1と勝利した。今季、幾度となくジネディーヌ・ジダン監督の解任の可能性が取りざたされてきたマドリーだが、勝負所で強さを発揮している。

ただ、2020-21シーズンは困難に見舞われた。負傷者とコロナの陽性反応者が続出してチーム状態が不安定になり、コパ・デル・レイではベスト32で2部B(実質3部)に属するアルコジャーノに屈した。

大きな打撃となったのは、セルヒオ・ラモスとダニ・カルバハルの不在だ。S・ラモス(リーガ15試合出場/出場率49%)、カルバハル(リーガ11試合出場/出場率33%)とジダン監督は彼らを欠いて多くの試合に臨まなければいけなかった。

その穴を埋めたのがナチョ・フェルナンデス、エデル・ミリトン、ルーカス・バスケスといった選手たちだ。彼らは今季開幕の段階ではジダン監督の「プランA」ではなかっただろう。この夏、ナチョには移籍の噂があった。ミリトンについては、移籍金5000万ユーロと高額で加入していたが、期待に応えるパフォーマンスを見せられていなかった。L・バスケスに関してはマルコ・アセンシオやロドリゴ・ゴエスとの厳しいポジション争いが待ち受けていた。

だがジダン監督はナチョやミリトンをコミットさせ、サイドバックへのコンバートでL・バスケスの新たな力を引き出した。時に3バックを使い、試行錯誤しながら前進した。

バルサ「MSN」時代のクラシコ
バルサ「MSN」時代のクラシコ写真:なかしまだいすけ/アフロ

次に、バルセロナだ。チャンピオンズリーグではパリ・サンジェルマンに敗れてベスト16敗退が決定。だがリーガでは直近の19試合で無敗だ。その間、16勝3分け48得点13失点という数字を残している。

今季のバルセロナはクラブとして揺れに揺れていた。ロナルド・クーマン新監督の就任、リオネル・メッシの退団騒動、ジョゼップ・マリア・バルトメウ前会長の辞任、会長選挙、ジョアン・ラポルタ新会長の当選...。1シーズンのうちにこれだけの変化が訪れたのだから、普通に考えればスポーツ的側面の結果は望めない。

だがバルセロナはシーズン終盤に2冠の可能性を残している。コパ決勝ではアスレティック・クルブとの試合を控えている。そしてリーガでは、クラシコの結果次第でタイトルレースに踏み止まれるかが決まる。

クーマン監督の下で爆発したのがウスマン・デンベレである。公式戦36試合出場10得点4アシスト。メッシがストップされた時に、クーマン監督の次善の策として解決案を提示した。

2017年夏に移籍金固定額1億500万ユーロでボルシア・ドルトムントからバルセロナに移籍したデンベレだが、度重なる負傷に苦しめられてきた。2017-18シーズン(23試合4得点8アシスト)、2018-19シーズン(42試合14得点8アシスト)、2019-20シーズン(9試合1得点)とフル稼働できたのはセカンドシーズンのみだ。

得点を喜ぶメッシ
得点を喜ぶメッシ写真:ロイター/アフロ

しかし、バルセロナの中心はやはりメッシだ。

メッシは今季、バルセロナで通算768試合出場を達成した。シャビ・エルナンデス(767試合)の記録を塗り替え、再びクラブ史に名を刻んだ。

ただ、メッシはクラシコにおいて2018年5月6日以降、ノーゴールが続いている。奇しくも、クリスティアーノ・ロナウドがユヴェントスに移籍してから、ずっと無得点だ。

45回目のクラシコを迎えるメッシだが、ここまでマドリー戦44試合で26得点をマークしている。そして、契約延長にサインしなければ、これが彼の最後のクラシコになる。

C・ロナウドとメッシ
C・ロナウドとメッシ写真:アフロ

クーマン監督はメッシ依存にならないようにシステムチェンジとローテーションをうまく使いながら事を進めてきた。

「システムチェンジで、前線からプレッシングをするようになった。敵陣でボールを奪えるようになり、そこでパスを回せるようになった。そこが改善して激しくプレスを掛けられるようになったから多くの試合で勝利できるようになった」とはペドリの言葉だ。

また、クラシコについてペドリは「ファンとして、個人的にとても楽しみにしていた試合だ。いまは、それを選手としてプレーできる。第一に、大きなモチベーションを抱いているよ」「ラ・リーガの行方を左右する試合になると思う。勝ち点3獲得を目指す。僕たちにとって、ファンにとって、とても重要な試合だ」と話している。

「僕は幼い頃からバルサのファンだった。今日みたいな日が訪れることを、ずっと夢見ていた。メッシやブスケッツの横でプレーしているというのは、考えないようにしているよ...。自分が生まれ育った街のグラウンドでプレーしているんだと思うようにしている。そう、あの頃みたいにプレーを楽しもうとしているんだ」

ジダン監督とクーマン監督
ジダン監督とクーマン監督写真:ロイター/アフロ

クラシコで敗れた方は、ラ・リーガの優勝争いにおいて非常に厳しい立場に立たされる。スペイン『マルカ』のアンケートでは、1万8890票(日本時間9日午前時点)でマドリーの勝利(56%)、バルセロナの勝利(34%)、引き分け(10%)とマドリーの勝利という見方が強い。

そして、その行方を、アトレティコとディエゴ・シメオネ監督が固唾を呑んで見守っている。引き分けの可能性は低いようにみえる。天秤の傾きを、決して見逃さないようにしたい。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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