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ジダン・マドリーの鍵はクロース、モドリッチ、カゼミーロの「盤石の中盤」にあり。

森田泰史スポーツライター
得点を喜ぶマドリーの選手たち(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

レアル・マドリーに、光が差し込んでいる。

2020-21シーズン、マドリーは序盤戦でクライシスに襲われた。チャンピオンズリーグでグループステージ敗退の危機に追い込まれ、ジネディーヌ・ジダン監督の解任の可能性が取りざたされた。リーガエスパニョーラではアトレティコ・マドリーやレアル・ソシエダを追う展開を強いられた。

だが「決戦」となったボルシア・メンヒェングラッドバッハ戦で勝利を収め、風向きが変わった。以降、6勝1分けとマドリーは完全に調子を取り戻している。

■盤石の中盤

ジダン・マドリーが息を吹き返した背景には、ある選手たちの存在がある。

トニ・クロース、ルカ・モドリッチ、カゼミーロ。ジダン監督の下で、「盤石の中盤」を築いてきたプレーヤーだ。

パスを出すクロース
パスを出すクロース写真:ムツ・カワモリ/アフロ

昨季、マドリーはフェデリコ・バルベルデが台頭した。そして、今夏、マルティン・ウーデゴールのレンタルバックが決定した。ジダン監督はバルベルデとウーデゴールを組み込みながら若返りを図る。そう予想されていた。

だが蓋を開けてみれば、お馴染みのメンバーがピッチに立っていた。リーガの出場時間においてはカゼミーロ(1124分)、モドリッチ(1217分)、クロース(1110分)が中盤の選手では最も多いプレータイムを得ている。

なかでも、クロースの存在感は際立っている。昨年12月30日の『マルカ』によれば、その時点でクロースのリーガでのパス成功率は93.2%だった。フレンキー・デ・ヨング(バルセロナ/89.9%)やコケ(アトレティコ・マドリー/90.2%)を凌ぎリーガでトップの数字であった。

■クロースの役割

そのクロースは、マドリーのビルドアップにおいて大きな役割を果たしている。

サイドバックとセンターバックの間に落ちるクロース(クロースロール)、スペースを空けるために前線に上がるカゼミーロ(アンカー出し)、そしてモドリッチが絡んでマドリーの後方からの球出しは円滑になる。

アンカー出し/筆者作成
アンカー出し/筆者作成

だがリーガ第13節のアトレティコ・マドリーとのダービーマッチでは、この形が崩された。カゼミーロが中央に留まり、クロースやモドリッチがサイドバックと連携してサイドからボールを運ぶことでアトレティコのプレスを無効化した。

クロースロール/筆者作成
クロースロール/筆者作成

つまるところ、元の形に戻したのだ。2015-16シーズン、16-17シーズン、17-18シーズン、チャンピオンズリーグで3連覇を達成したマドリーの盤石の中盤を生かすために。

無論、この3選手に頼り続けるわけにはいかないだろう。「全選手が重要だ」が口癖のジダン監督にとってバルベルデ、ウーデゴール、イスコらの貢献は不可欠だ。

だがカゼミーロ(28歳)、モドリッチ(35歳)、クロース(31歳)、平均年齢31.3歳の中盤がジダン・マドリーを再び上昇気流に導いたのは間違いない事実である。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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