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メッシ、スアレス、グリーズマンの共存は?バルサの優勝に向けたセティエンの秘策。

森田泰史スポーツライター
得点を喜ぶMSG(写真:ロイター/アフロ)

彼らの共存は、可能なのだろうか。バルセロナのキケ・セティエン監督はひとつの解を導き出そうとしているのかも知れない。

「彼ら」とはリオネル・メッシ、ルイス・スアレス、アントワーヌ・グリーズマンの3選手である。バルセロナにとって、2017年夏にネイマールがパリ・サンジェルマンに移籍して以降、新たな3トップの選定は至上命題となってきた。

ウスマン・デンベレ、フィリップ・コウチーニョを獲得したバルセロナだが、度重なる負傷と適応に苦しんだ2選手がネイマールの穴を埋めるには至らなかった。そして、今季開幕前に契約解除金1億2000万ユーロを支払い、グリーズマンを獲得。メッシとスアレスの2選手と化学反応を起こせるのかに注目が集まった。

■共存の可能性

3人目のネイマール代役候補としてバルセロナに加入したグリーズマン。彼をフィットさせられるかどうかはエルネスト・バルベルデ前監督とセティエン監督の大きな課題だった。

先のビジャレアル戦で、セティエン監督は【4-4-2】の布陣を採用している。指揮官は2トップにスアレスとグリーズマンを、トップ下にメッシを据えた。この試合、バルセロナはポゼッション率(68%)、シュート数(18本)、パス本数(762本)と内容でビジャレアルを圧倒。中断明けの試合で無敗だったビジャレアルを粉砕している。

「先日の試合で我々はリキ(・プッチ)を含めてこのシステムを試した。そこで手応えをつかんだ」とは、セティエン監督の弁である。アトレティコ・マドリー戦で、リキ・プッチをトップ下に配置した【4-4-2】を試験採用。アトレティコ戦ではポゼッション率(73%)、シュート数(12本)、パス本数(709本)という数字を残していた。

■メッシの役割

共存に向けて、大きな変化が起こった。トップ下に入るメッシの役割だ。

ビジャレアル戦でスアレスとグリーズマンの得点をお膳立てして2アシストしたメッシは、今季リーガで19アシストを記録している。2010-11シーズンと2014-15シーズンの自身の記録(18アシスト)を塗り替えた。

バルセロナでは、2008-09シーズンにシャビ・エルナンデスが20アシストを記録している。「ペップ・チーム」の愛称で親しまれるジョゼップ・グアルディオラ監督のバルセロナで、メインエンジンとして稼働していたシャビを、メッシが超えようとしているのである。

グアルディオラ監督のラストシーズン、2011-12シーズンにメッシは50得点16アシストを記録している。ペップ・チームにおいて、メッシは完全なるフィニッシャーだったのだ。

そのメッシに操舵士の役割を託して、セティエン監督のバルセロナは変わろうとしている。だがバルベルデ前監督を実質的に解任してセティエンを招聘したのは、「クライフイズム」への回帰が求められたからだ。

【4-4-2】では、バルセロニスタは納得しない。それではバルベルデと変わらない。いまの解は暫定解に過ぎず、現在試されているシステムで慣らし運転を終えた後、【4-3-3】でMSGを共存させることがセティエンには期待される。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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