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アトレティコが「無敗を貫き」CL出場権獲得に前進中…サウールのボランチ固定とジョレンテの支配力

森田泰史スポーツライター
得点を喜ぶサウール(写真:ロイター/アフロ)

チャンピオンズリーグ出場権獲得に向け、大きく前進している。

新型コロナウィルスによる中断期間を明けて、アトレティコ・マドリーの調子が上向きだ。中断後の7試合を5勝2分けとして、首位レアル・マドリー、2位バルセロナに次ぐ3位のポジションについた。

■ジョレンテのFW起用

その中で好パフォーマンスを披露している選手の一人が、マルコス・ジョレンテだ。

チャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦セカンドレグのリヴァプール戦で2得点を挙げて自信を深めたジョレンテ。そしてディエゴ・シメオネ監督は彼をより攻撃的なポジションに置き、覚醒させていく。

シメオネ監督はジョレンテを【4-4-2】の右サイドハーフ、あるいは2トップの一角として起用するようになった。その理由について「ジョレンテの技術、フィジカル、シュートの精度を見て、そして彼と会話を重ねる中で、(FW起用という)代替案が浮上した。我々のチームで、そのポジションは簡単ではない。攻守のトランジションの場面でバランスを整える役割だからだ。私はグリーズマンがFWやセカンドトップでプレーできると思った。だが周囲の人々は彼をサイドでプレーさせるべきだと言っていた。リュカ・エルナンデスが(フランス代表の選手として)ワールドカップで優勝した時、彼のポジションは左サイドバックだった」と語っている。

「ジョレンテはトレーニングでゴールを量産していた。スピード、運動量、技術、プレービジョンを持ち合わせている。だが他ならぬ彼自身がFWでのプレーをイメージしていたように思う」

ジョレンテは指揮官の期待に応えるように中断明けの7試合で1得点4アシストという結果を残している。

■サウールのポジションを固定

そして、シーズン終盤戦で輝きを放つ選手がもう一人いる。サウール・ニゲスだ。

サウールは、現在リーガで最もポリバレントな選手だと言える。だが、その使い勝手の良さゆえに、シメオネ・アトレティコでポジションが定まらなかった。

正確にいえば、ポジションが定まらなかったというより、シメオネ監督が必要に応じてサウールの置き場所を変えていた。今季、サウールは公式戦43試合に出場。先発した試合においては24試合(ボランチ)、14試合(左MF)、2試合(右MF)、3試合(左SB)と多様な使われ方をされてきた。

中断明けの試合で、アトレティコは前線からのプレスを強化している。そこでジョレンテのFW起用と同様に重要になったのが、サウールのポジション選定ーボランチ固定ーである。

サウールは今季3得点を挙げている。そこにはバルセロナ戦のPK2発が含まれるが、その得点数以上に、生き生きとプレーするサウールがチームに活力を与えている。

「サウールの戦術面のポテンシャルは計り知れない。また、2列目の飛び出し、セットプレーにおけるヘディングの強さ、ミドルシュートといった特徴がある。それでいて、守備のタスクを決して怠らない」

シメオネ監督はサウールを激賞している。

■全試合先発出場はオブラクのみ

現在、過密日程を考慮して、FIFAのルール変更で5人の交代が可能となっている。

シメオネ監督が全試合で先発させたのはGKヤン・オブラクのみだ。

フィールドプレーヤーではホセ・ヒメネス(先発6試合)、サウール(6試合)といった選手が多く起用されているが、全試合フル出場している選手はいない。

シメオネ監督は鍵を握る選手を維持しながら、多様性を駆使して大きな目標であるチャンピオンズリーグ出場権を手繰り寄せようとしている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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