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ウーデゴール、フェラン・トーレス…リーガの「傑出したイレブン」を私的に選出。

森田泰史スポーツライター
レアル・マドリー戦のフェラン・トーレス(写真:ロイター/アフロ)

新型コロナウィルスの影響で、リーガエスパニョーラは一時中断していた。現在、6月11日の再開に向けて急ピッチで準備が進められている。

リーガ第27節終了時点では、首位バルセロナと2位レアル・マドリーの2強によるタイトルレースになる様相を呈していた。一方で3位セビージャ、4位レアル・ソシエダ、5位ヘタフェ、6位アトレティコ・マドリーとチャンピオンズリーグ/ヨーロッパリーグ出場権争いは熾烈を極めている。

今回は、僭越ながら、そんなリーガの「傑出したイレブン」を選定してみたい。「傑出したイレブン」とは、どういうことかと言えば、過去10年にわたりリーガのタイトルを奪取してきたバルセロナ、マドリー、アトレティコを除いた17チームからベストイレブンを選ぶということだ。

■4-3-3のシステム

まずは前線だ。ちなみに、システムは【4-3-3】である。

FW:ミケル・オジャルサバル(レアル・ソシエダ)、チミー・アビラ(オサスナ)、フェラン・トーレス(バレンシア)

オジャルサバルは、ソシエダでシャビ・プリエトの後継者として10番を背負っている。昨年夏に行われたU-21欧州選手権においても、ファビアン・ルイス、ダニ・セバージョスらと共に主力としてスペイン代表の優勝に大きく貢献した。左右両足が使えて、左WG、CF、右WGと前線の3ポジションで起用可能。バスク人らしく、体躯に恵まれ、なおかつ規律を遵守する愚直さがある。オールラウンド・プレーヤーである。

チミー・アビラは、オサスナの得点源として負傷するまで素晴らしいパフォーマンスを見せていた。小柄ながら、スピードとパワーがあり、がむしゃらにゴールに向かう。その迫力は同じアルゼンチン人であるセルヒオ・アグエロ(マンチェスター・シティ)を彷彿させる。

そして、フェラン・トーレスだ。今季、リーガではアンス・ファティ(バルセロナ)やロドリゴ・ゴエス(レアル・マドリー)をはじめ、若い選手の台頭が目立った。その中で、フェランは20歳にしてバレンシアのエース級のサイドアタッカーとして躍動している。

■難しい中盤の人選

次は中盤だ。

MF:ミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)、マルティン・ウーデゴール(レアル・ソシエダ)、エドガル・ゴンサレス(ベティス)

絶対に欠かせないのはウーデゴールである。今季、リーガで最もブレイクした選手だと言えるだろう。16歳でマドリーに加入した「神童」は、ヘーレンフェーン、フィテッセへのレンタル移籍を経て、一回りも二回りも大きくなってリーガに帰ってきた。イマノル・アルグアシル監督の下、ポゼッションを志向するソシエダで、質実剛健なバスク人に不足しがちなファイナルサードのクリエイティビティを担保している。

そのウーデゴールをソシエダで陰から支えているのがメリーノだ。フィジカルベースが高く、肉弾戦を厭わない。ファビアン、セバージョスがいなければ、U-21欧州選手権で主役になっていたのは彼だったはずだ。今季、ソシエダで輝くウーデゴールの横にメリーノがいるのは決して偶然ではない。

アンカーには、エドガルを入れたい。聞き慣れない名前かも知れないが、是非この機会に覚えていただきたい。ベティスのルビ監督が、キケ・セティエン時代からの脱却を図り、苦心の末に採用した可変式3バックで重要な役割を担ってきた。193cmの長身で、3バックの中央とアンカーを巧みにこなす。戦術理解度に優れた23歳の若きプレーヤーである。

■最終ラインの統率

前線、中盤ときたので、最終ラインに突入する。

DF:ぺルビス・エストゥピニャン(オサスナ)、ジエゴ・カルロス(セビージャ)、ジェネ・ダコナム(ヘタフェ)、ヘスス・ナバス(セビージャ)

今季のリーガ前期におけるボール奪取数に着目すると、オサスナの左サイドバックの価値が分かる。メリーノ(151回)、カゼミーロ(レアル・マドリー/141回)、エストゥピニャン(129回)とトップ3に入っている。最近では、バルセロナ移籍の憶測が流れ、話題を呼んだ。

「モンチ・メソッド」はまったく廃れていなかった。それを証明しているのがジエゴ・カルロスの活躍だ。この夏、セビージャのスポーツディレクターに復職したモンチは移籍金1500万ユーロ(約18億円)でナントからD・カルロスを獲得。セルヒオ・ラモス(レアル・マドリー)、ジェラール・ピケ(バルセロナ)と高齢化しつつあったリーガのDF陣に新風を吹き込んだ。

昨季、今季と大躍進しているチームを挙げるなら、ヘタフェだろう。そのヘタフェの土台となっているジェネは、余りあるパワーとスピードでリーガの猛者たち(アタッカー)を止め続けてきた。ホセ・ボルダラス監督の戦術において、フィジカルに優れたセンターバックの存在は核となっている。

J・ナバスは2017年夏にセビージャに復帰。マンチェスター・シティへのアドベンチャーを終えて、「心のクラブ」に戻ってきた。が、彼の居場所はウィングではなくサイドバックだった。ジョゼップ・グアルディオラ監督の指導を受け、ポジションを一つ下げた。それが30歳を超えた選手の進化を促すと、誰が想像しただろう。右サイドバックでアップダウンを繰り返すJ・ナバスを、ルイス・エンリケ監督がスペイン代表に再び招集するまで時間はかからなかった。

■守護神とスーパーサブ

そして、守護神である。

GK:アレックス・レミーロ(レアル・ソシエダ)

アスレティック・ビルバオのカンテラで育ち、昨年夏にソシエダへの「禁断の移籍」を果たした。キックの精度が高く、現在のリーガではマルク=アンドレ・テア・シュテーゲン(バルセロナ)に次いで、ビルドアップ能力が高い選手だろう。ケパ・アリサバラガ(チェルシー)のようにビッグクラブが彼に触手を伸ばす日は遠くないかも知れない。

最後に、スーパーサブにアンヘル・ロドリゲス(ヘタフェ)を入れる。これで完璧だ。このチームに、死角はない。2強が相手でも、戦える。はずだ。

筆者作成/背番号は仮
筆者作成/背番号は仮

【リーガの傑出したイレブン】

FW:オジャルサバル、アビラ、フェラン

MF:メリーノ、ウーデゴール、エドガル

DF:エストゥピニャン、D・カルロス、ジェネ、J・ナバス

GK:レミーロ

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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