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ジダンがクラシコで見せた「修正力」…メッシ封じと「左で創る」バルサ対策。

森田泰史スポーツライター
S・ラモスを中心にメッシをストップ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

手に汗を握る熱戦だった。「世界が止まる」と称される試合、クラシコは2019-20シーズンのリーガエスパニョーラのタイトルの行方を左右するとされ、大きな注目を集めた。現地時間1日にリーガ第26節のレアル・マドリー対バルセロナが行われ、結果は2-0で、マドリーが勝利している。

今季、一時は単独首位に立ったのマドリーだが、それはジネディーヌ・ジダン監督がドブレテ(2冠)を達成した2016-17シーズン以来の出来事であった。そして、マドリーは公式戦21試合(リーガ13試合)で無敗を続けた。

しかしながら、シーズン終盤が近づくにつれ、疲労の影響が出てきた。この数週間でレアル・ソシエダ、レバンテ、マンチェスター・シティに敗れ、セルタ相手にドロー。勝利したのはオサスナ戦のみで、直近5試合1勝1分け3敗という戦績だった。

■ジダンの修正力

光ったのは、ジダン監督の「修正力」だ。ただ、それは今回のクラシコでの手直しではない。その前の試合、チャンピオンズリーグ決勝トーナメント一回戦ファーストレグのマンチェスター・シティ戦(1-2)からの修正だった。

マドリーはシティ戦で、前線からプレスを掛けて高い位置でボールを奪取しようとした。だがGKエデルソン・モラレスにロングボールを蹴られ、そのプレスが無効化された。10日間にわたりマドリーの試合を分析したというジョゼップ・グアルディオラ監督の、作戦勝ちだった。

同じ轍を踏むまいと、ジダン監督はバルセロナとの試合で戦い方を変更する。守備の強度の高いフェデリコ・バルベルデの位置を下げ、「前プレ」に参加させるのではなくジョルディ・アルバのマーカーにした。「前プレ」に行く役割はイスコとカリム・ベンゼマに託された。

これは2つの大きな効果をもたらした。まず、GKマーク=アンドレ・テア・シュテーゲンのロングボールを封じた。そして、それはアルトゥーロ・ビダルの前線での存在価値を削る意味さえあった。キケ・セティエン監督のプランにおいては、ルイス・スアレスが負傷離脱する中、GKからのロングボールはビダルに向けられるという傾向があったからだ。

もうひとつは、「左で創る」バルサ対策になった。リオネル・メッシ、フレンキー・デ・ヨング、アルバの3選手が絡みながら左サイドで攻撃をオーガナイズするバルセロナに対して、マドリーはF・バルベルデ、ダニ・カルバハル、カゼミーロがマークを受け渡しながらスペースを潰した。

特に、メッシに対して21アシストを記録しているアルバをストップするのは、勝利に向けた大きな仕事だった。F・バルベルデが右ウィングバックあるいは右サイドバックのように動き、カルバハルが中央に絞って瞬間的に5バックを形成。それぞれが自分の役割を全うして、バルセロナの左サイドを不毛の地とした。

■攻撃と守備のバランス

ビダルとネルソン・セメドが待ち構えるバルセロナの右サイドでは、ヴィニシウス・ジュニオール、トニ・クロース、マルセロが躍動した。「クロースロール」のタスクで、左インサイドハーフから最終ラインに下がってビルドアップに参加したクロースに対してバルセロナはビダルをぶつけ、セメドには1対1でヴィニシウスを止めることが要求された。

だが攻撃時にメッシをフリーにさせるために動き、守備時にハードワークを求められたビダルはスタミナが切れ、マルティン・ブライスホワイトと交代でピッチを去る。すると、そのブライスホワイトが右WGに入った直後、マドリーが左サイドを攻略。クロースのスルーパスを受けたヴィニシウスがジェラール・ピケのブロックを受けながらシュートをねじ込み、先制点を奪取した。その時、セメドはベンゼマに引っ張られて中央に寄っていた。

メッシとアルトゥールに対してGKティボ・クルトゥワがビッグセーブを披露して、味方を盛り立てる。マルセロが、メッシに対して気迫のスライディングタックルを見せた。

ジダン・マドリーの特徴は守備だ。今季、GKクルトゥワは16試合を無失点で抑えている。クルトゥワが出場した試合で、マドリーは公式戦31試合24失点(リーガ23試合14失点)という数字を残しており、その失点数の少なさは着目に値する。

一方、攻撃面では問題を抱えてきた。ガレス・ベイル(公式戦18試合3得点)、ルカ・ヨヴィッチ(24試合2得点)、ヴィニシウス・ジュニオール(27試合4得点)と得点力は心許ない。唯一気を吐いてきたカリム・ベンゼマ(35試合18得点)にせよ、2020年に突入してから2得点とパフォーマンスが落ちている。

その中で、ヴィニシウスとマリアーノ・ディアス(公式戦3試合1得点)がゴールを奪ったのは、意味があったかもしれない。

ここまで行われたクラシコは、トータルで244試合を数えた。レアル・マドリー(96勝96敗52分け405得点)、バルセロナ(96勝95敗52分け399得点)と完全に五分五分となった。

リーガのクラシコにおいて、マドリーが本拠地サンティアゴ・ベルナベウでバルセロナに勝利したのは、2014-15シーズン以来だ。

現時点、リーガの色は白に染められようとしている。だが、残りは12試合ーー。まだ、優勝者が決まったわけではない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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