Yahoo!ニュース

バルサが仕掛けた時限装置。急成長するアンス・ファティと、カンテラーノに開かれた道。

森田泰史スポーツライター
ドリブルするアンス・ファティ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

バルセロナのアンス・ファティの勢いが止まらない。

アンス・ファティはリーガエスパニョーラ第2節ベティス戦トップデビューを飾った。16歳298日で、クラブ史上2番目の記録だった。

すると、続くリーガ第3節オサスナ戦で、初ゴールを挙げる。16歳304日での得点で、ボージャン・クルキッチ(17歳83日)を抜いて、アンス・ファティがクラブ史上最年少得点記録保持者になった。

■ラ・マシアの象徴

第2節ベティス戦では、ジェラール・ピケ、ジョルディ・アルバ、セルヒオ・ブスケッツ、セルジ・ロベルト、ラフィーニャ・アルカンタラ(現セルタ)、カルレス・ペレスと6人のカンテラーノが先発している。そして、この試合で、ファティが途中出場して7人のカンテラーノがピッチに立った。

バルセロナの育成寮ラ・マシアに、ようやく焦点が当てられている。

故ヨハン・クライフのフットボールに対する理解と解釈が、ラ・マシアに息づいている。選手たちは、カンテラ時代から、伝統のシステム4-3-3とポゼッションを叩き込まれる。それこそが、他クラブが羨む「遺産」であったはずだ。

だが、近年、ラ・マシアの存在感は薄れ始めていた。アンドレ・ゴメス、パウリーニョ、アルトゥーロ・ビダル...。彼らの獲得は、必ずしもバルセロニスタに歓迎されるものではなかった。そして、この夏、ネイマールへの関心が取り沙汰され続けた。ネイマールが復帰すれば戦力はアップする。しかし、一方で、選手たちをマネジメントする負担が増す。また、カンテラーノたちの出場機会は限られる。

右に行くか、左に行くか。クラブの方向性が決まるような移籍騒動を経て、ネイマールのパリ・サンジェルマン残留が決まった。

かくして、カンテラーノたちへの道は正式に開かれた。アンス・ファティやカルレス・ペレスにチャンスが訪れたのである。

■確約されない成功

20歳以下の選手で、アンス・ファティを除いて今季初めてリーガ1部のピッチに立った選手は7名いる。

久保建英(マジョルカ)、ジョアン・フェリックス(アトレティコ・マドリー)、ロドリゴ・リケルメ(アトレティコ・マドリー)、アレクサンドル・イサク(レアル・ソシエダ)、イケル・ロサダ(セルタ)、ボルハ・サインス(アラベス)、オイハン・サンセト(アスレティック・ビルバオ)。ここには、この夏に移籍してきた選手も含まれている。

だが、無論、早期デビューは成功を確約するものではない。

現在、リーガ1部の最年少得点記録を保持しているのはファブリシオ・オリンガである。16歳98日で初ゴールを記録したオリンガだが、衰退期に入ったマラガに引っ張られるように彼のキャリアは下降線を辿った。2014年にマラガを退団して4クラブを渡り歩いたのち、現在ベルギーのロイヤル・エクセル・ムスクロンでプレーしている。

そのベルギーでは、ニイ・ランプティが16歳でデビューできるように、リーグ戦の規則が変更された過去がある。しかしながら「新たなペレ」と称されたランプティに、サッカーの王様と同じような道を歩むことはできなかった。

大衆は期待する。しかし、16歳から18歳の青年に、さも救世主のような活躍を求めるのは酷だ。ただ、周りが正しく認識ができれば、彼らの成長は約束されている。そのポテンシャルは無限大だからである。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

リーガエスパニョーラは「戦術の宝庫」。ここだけ押さえておけば、大丈夫だと言えるほどに。戦術はサッカーにおいて一要素に過ぎないかもしれませんが、選手交代をきっかけに試合が大きく動くことや、監督の采配で劣勢だったチームが逆転することもあります。なぜそうなったのか。そのファクターを分析し、解説するというのが基本コンセプト。これを知れば、日本代表や応援しているチームのサッカー観戦が、100倍楽しくなります。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

森田泰史の最近の記事