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コウチーニョ、アレクシス、イカルディの移籍が決定。2019年は「レンタル」の夏に。

森田泰史スポーツライター
PSGに移籍したイカルディ(写真:ロイター/アフロ)

欧州5大リーグの移籍市場が9月2日に閉鎖した。2019年は「レンタル移籍の夏」と名付けられるかもしれない。

バイエルン・ミュンヘンを筆頭に、レアル・マドリー、パリ・サンジェルマン、インテルなどがレンタルで大物選手を引き入れている。その背景にあるのは、ファイナンシャルフェアプレー(FFP)である。

FFPによって、UEFAに加盟するクラブにおいては収入が支出を上回らなければいけなくなった。端的に言えば、黒字経営だけを認めるという方針だ。また金融機関からの借入金、オーナーの資産による赤字の補填は不可だとされ、これによって大富豪を会長に就任させてポケットマネーで資金繰りをするという手法は通用しなくなった。

■抜け道

そのFFPの抜け道のひとつが、レンタルだ。

フィリペ・コウチーニョ(バイエルン)、アレクシス・サンチェス(インテル)、マウロ・イカルディ(パリSG)、ジョバニ・ロ・セルソ(トッテナム)、ダニ・セバジョス(アーセナル)、アルフォンソ・アレオラ(マドリー)らがこの夏にレンタル移籍を果たしている。

だが、その形態は多種多様だ。例えばコウチーニョに関しては、バイエルンがレンタル料850万ユーロ(約10億円)を支払い、1億2000万ユーロ(約140億円)の買い取りオプションを有して、年俸を全額負担する。セバジョスについては、アーセナルが年俸を負担するものの買い取りオプションは付けられていない。アレクシスのケースでは、インテル側に買い取りオプションがなく、年俸を両クラブが分割で負担。インテルが500万ユーロ(約6億円)、マンチェスター・ユナイテッドが700万ユーロ(約8億円)を支払う契約だ。

レンタルを回避方法として活用した代表例がパリSGだ。2017年夏に契約解除金2億2200万ユーロ(約255億円)を支払い、ネイマールを獲得したナセル・アル=ケライフィ会長だが、同年夏にキリアン・ムバッペを引き入れようと試みた。そして、2017年夏にレンタル料4500万ユーロ(約52億円)を、2018年夏に完全移籍させるために1億3500万ユーロ(約156億円)をモナコに支払う契約で取引を成立させた。

■新たな傾向

レンタルというのは、ある意味、「移籍金支払いの先送り」である。

それに加えて、獲得する側は選手のパフォーマンスを見てから完全移籍させるかどうかを判断できる。現に、先んじてこの手法を採り入れ、2017年夏にハメス・ロドリゲスを獲得したバイエルンは、4200万ユーロ(約48億円)の買い取りオプションを行使しなかった。

また、レンタル移籍には、ふたつのメリットがある。ひとつは、高額な移籍金が発生しないこと。もうひとつは、指揮官の構想外になった選手の年俸を他クラブに肩代わりさせられることだ。

UEFAの規定では、選手とスタッフの総年俸額を予算の70%に抑えなければいけない。ビッグクラブとはいえ、この制度は大きな足枷(あしかせ)になっている。バルセロナがネイマール獲得を諦めざるを得なかった理由も、そこにある

構想外になった高年俸の選手をどう扱うかは、フロント陣にとっては頭痛の種だ。しかしながらレンタル手法を駆使すれば、総年俸額のコントロールが容易になる。移籍先で試合に出れば、その選手の市場価値を維持することもできる。

フットボール界を取り巻く経済事情が状況を変化させた。「金の成る木」は、もはや存在しない。想像力を駆使した補強が、求められている。

FFP導入で、新たな傾向、新たな現象が生まれている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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