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コウチーニョがバイエルンに移籍。 バルサの「第三のFW」をめぐる混沌を経て輝きを取り戻す旅路へ。

森田泰史スポーツライター
バイエルンのユニフォームに袖を通したコウチーニョ(写真:アフロ)

フィリペ・コウチーニョのバイエルン・ミュンヘンへの移籍が決定した。

バイエルンはレンタルでコウチーニョを獲得。レンタル料850万ユーロ(約10億円)をバルセロナに支払い、コウチーニョの年俸1200万ユーロ(約14億円)を負担する。加えて、レンタル終了時に行使可能な1億2000万ユーロ(約144億円)の買い取りオプションを有している。

これはハメス・ロドリゲス獲得の際に用いた手法と、非常によく似ている。だが、バイエルンは最終的にハメスを買い取らなかった。そして現在、ハメスはレアル・マドリーで去就不透明なまま日々を過ごしている。コウチーニョが同じ状況に置かれてもおかしくはない。

2017年夏のネイマール退団から彼の代役を探し続けているバルセロナだが、その旅は終わる気配を見せない。2017年夏に移籍金固定額1億500万ユーロ(約126億円)でウスマン・デンベレを、2018年冬に移籍金固定額1億2000万ユーロ(約144億円)でコウチーニョを獲得した。ただ、期待していたような成果は得られなかった。

■リヴァプールでの輝き

この夏、ネイマールのバルセロナ復帰の可能性が取り沙汰されると、コウチーニョとデンベレが「換金」の材料として持ち出された。ネイマール再獲得に向け、移籍金の引き下げを目論むバルセロナが、選手譲渡をオペレーションに含めようとしたのである。

コウチーニョはバルセロナ移籍後、75試合に出場して21得点11アシストを記録している。だが、リオネル・メッシとジョルディ・アルバが支配する左サイドで連携に難を見せ、昨季のチャンピオンズリーグ準々決勝セカンドレグのマンチェスター・ユナイテッド戦でゴールを決めた後には、観衆に向けて耳を塞ぐポーズをしてバルセロニスタとの関係が悪化した。

2018年冬に移籍したコウチーニョは、2017-18シーズン、バルセロナで22試合に出場して10得点を記録している。つまり、得点の47%は、加入から半年で記録されたものだ。彼が適応に苦しんでいた証だろう。

リヴァプールでは、輝きを放っていた。モハメド・サラー、サディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノと自在に連携して、攻撃の軸になった。201試合54得点46アシストを記録。ブラジル代表に定着して、時代のフットボールシーンを担うと目される選手になった。

■3人目のトップ

この夏、アントワーヌ・グリーズマンがバルセロナに移籍した。バルセロナは契約解除金1億2000万ユーロ(約144億円)を支払った。デンベレ、コウチーニョ、グリーズマン獲得に、3億4500万ユーロ(約414億円)を投じた。バルセロナがネイマール売却で得た資金は2億2200万ユーロ(約264億円)である。単純に考えて、完全なる「赤字」だ。

無論、4-3-3を伝統のシステムとしているバルセロナにとって、3トップが重要なのは言うまでもない。メッシ、サミュエル・エトー、ティエリ・アンリ。メッシ、ダビド・ビジャ、ペドロ・ロドリゲス。メッシ、ルイス・スアレス、ネイマール。数多のクラック(名手)がバルセロニスタに歓喜を届けてきた。

だが現在、メッシ、スアレスと共存する「第三のFW」が定まらない。

ネイマールの代わりは、ネイマールしかいない。

そして、コウチーニョはコウチーニョであり続ける必要がある。バルセロナに移籍してからの彼は、どこか、ふわっとしていた。ネイマールの代役、アンドレス・イニエスタの後釜...。ウィングとインサイドハーフの狭間に置かれ、確固としたポジションさえ決まらなかった。

コウチーニョはドイツで新たな挑戦に臨む。バイエルンでは、アリエン・ロッベン、フランク・リベリという偉大な選手たちの穴埋めを期待される。簡単ではない。だが、決断を下したコウチーニョに残されているのは、前進だけだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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