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モンチの復帰と原点回帰。セビージャが再建に向けて踏み出した一歩。

森田泰史スポーツライター
セビージャへの復帰を決めたモンチ(写真:ロイター/アフロ)

揺れるクラブに、一人の男が帰還した。

その男の名はラモン・ロドリゲス・ベルデホ。「モンチ」の愛称で親しまれる、天才的なスポーツディレクターである。

そのモンチが、セビージャに戻ってきた。だが視界は決して良好ではない。セビージャは先日、成績不振を理由にパブロ・マチン監督を解任したばかりだ。

後任には、ホアキン・カパロス監督が就いた。チャンピオンズリーグ出場圏の4位以内を確保する。それが、現在のクラブの目標だ。主に補強を担当するモンチに、できることは少ない。ただ、セビージャ再建への工程はすでに始まっている。

■訪れた別れ

2016-17シーズン、ホルヘ・サンパオリ監督率いるセビージャはリーガを4位で終え、チャンピオンズリーグ・プレーオフ出場権を獲得した。しかしながら、変化の必要性を感じたモンチはそのシーズンの半ばに退任を決断している。

スペインを離れ、ローマのスポーツディレクターに就任したモンチは新天地でも手腕を発揮する。ジェンギズ・ウンデル(移籍金1490万ユーロ)、ジャスティン・クライファート(移籍金1875万ユーロ)など将来有望な選手を安価で引き入れた。

また、モンチはアリソン・ベッカーを移籍金6200万ユーロでリヴァプールに、ラジャ・ナインゴランを移籍金2400万ユーロでインテルに売却している。

ローマはモンチの就任一年目に選手売却で1億7815万ユーロ(約224億円)を得て、選手獲得に1億4610万ユーロ(約184億円)を費やした。就任二年目には、選手売却費を1億5550万ユーロ(約195億円)として、1億1860万ユーロ(約149億円)を補強に投じた。

スポーツ的側面においては、就任一年目にセリエAを3位でフィニッシュ。チャンピオンズリーグではベスト4に進出した。だが今季、ローマはチャンピオンズリーグでベスト16敗退が決まり、エウゼビオ・ディ・フランチェスコ監督が解任された。失望を隠せなかったモンチは行き場を失い、辞意を固めている。

■繰り返される歴史

安く買って、高く売る。それは中期・長期計画でこそ成り立つものだ。

モンチはスポーツディレクターとして17年間セビージャに在籍した。その間、セビージャはヨーロッパリーグ(旧称UEFAカップ)で5度優勝を飾り、コパ・デル・レイを2度制し、スペイン・スーパーカップのタイトルを獲得している。

選手時代を含めると、両者の関係はさらに深い。1988年にセビージャに加入したモンチはGKとして115試合に出場。クラブの総務として働いたのち、2000年から補強を担当した。

「最高の鼓動を、その震えた場所を、心は決して忘れない」

モンチは、就任直前にこの言葉を引用して復帰をほのめかした。セビジスモの魂を噛み締めるように。

彼が初めてセビージャのスポーツディレクターという要職に就いた当初、監督を務めていたのはカパロスである。かくして、歴史は繰り返された。

セビジスタは栄光の日々に思いを馳せる。そして、モンチの新たな挑戦が幕を開けようとしている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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