シメオネとマチンの類似性。セビージャが躍進する秘密とは。

セビージャ対レアル・マドリー(写真:ロイター/アフロ)

新たな指揮官の就任は劇的にチームを変える。今季のセビージャで、それが証明されている。

リーガエスパニョーラ第18節終了時点でセビージャは3位に位置している。首位バルセロナ、2位アトレティコ・マドリーに次ぐポジションにつけており、この調子を維持すればシーズン終盤の優勝争いに加わるのは十分に可能だ。

■転機

思えば、この数年セビージャを取り巻く状況は混沌としていた。クラブにとって大きな打撃となったのは、2016年夏のスポーツディレクターを務めたモンチの退任である。

セルヒオ・ラモス、ダニ・アウベス、イバン・ラキティッチ...。モンチがセビージャに引き入れた名選手は数知れない。補強において辣腕を振るっていた人物が去り、セビジスタは少なからず不安を覚えた。

事実、モンチがいなくなり、セビージャに苦難の日々が訪れた。エドゥアルド・ベリッソ、ヴィンチェンツォ・モンテッラ、ホアキン・カパロスと2017-18シーズンのうちに3名の監督がチームを率いることになり、モンチの後任を任されたオスカル・アリアスはコパ・デル・レイの決勝でバルセロナに大敗した直後に解任された。

内部で人が激しく入れ替わった。そんな中、2018年5月28日にパブロ・マチン監督の就任が発表される。

■ジローナでの功績

マチンがセビージャに招聘されたのは、ジローナでの功績が大きい。

2013-14シーズン、2部B(実質3部)降格の危機に喘いでいたジローナは終盤戦を見据えて監督交代を決断した。そこで呼ばれたのが、マチンだった。

マチンに率いられて2部残留を果たしたジローナは、14-15シーズン(3位)、15-16シーズン(4位)と上位陣の常連となり、16-17シーズンにクラブ史上初の1部昇格という快挙を成し遂げた。

しかしながら、マチンはセビージャで船出から座礁する。開幕から4試合で1勝1分け2敗。勝利したのは、昇格組であるラージョ・バジェカーノとの試合だけだった。

「3-2-4-1」という特殊なシステムを駆使してジローナを1部昇格・残留に導いたマチンだが、セビージャでそれは機能しなかった。

転機となったのは、リーガ第4節ヘタフェ戦だ。この試合を0-2で落とすと、マチン監督は布陣の変更を決断する。慣れ親しんだシステムを捨て、「3-1-4-2」を選択した。そして、リーガ第5節でレバンテを6-2で粉砕する。

■システムチェンジ

システムチェンジを可能にした背景には、エベル・バネガの存在がある。就任当初からバネガがキープレーヤーになると踏んでいたマチンは、プレシーズンの際に彼にジローナ時代の愛弟子であるアレックス・グラネイのビデオを見せていたといわれている。

バネガをアンカーに据え、チームに軸が通った。そして、好循環が生み出される。2トップの恩恵を受けるように、ウィサム・ベン・イェデル(リーガで9得点)とアンドレ・シウバ(8得点)がゴールを量産。2人の決定力を頼りに、組織の構築が進んだ。

マチンにとっては、3バックを続けられたことも大きかった。状況次第で、左右のサイドハーフをウィングバックのように機能させ、守備時に5バックが形成される。

ディフェンス面の安定は数字に表れている。セビージャ(18失点)より失点数が少ないのは、アトレティコ(13失点)、ヘタフェ(15失点)、バレンシア(16失点)のみである。

■シメオネとの類似性

堅守速攻型のチームといえば、その代表格はディエゴ・シメオネ監督が率いるアトレティコだ。

「シメオネは本当に素晴らしい監督だ。我々、監督というのは、勝利を得るために存在している。派手なフットボールが期待されると言うなら、それを体現するチームは他にあるだろうがね」

リーガ第18節アトレティコ戦を前に、マチンはシメオネへの賛辞を惜しまなかった。

セビージャは本拠地サンチェス・ピスファンで圧倒的な強さを誇示している。直近11試合で10勝1分けと無敗だ。つまり、マチンのセビージャはセビジスタと一体化している。それがホームでの無類の強さに反映される。その点においても、シメオネのアトレティコと酷似している。

リーガ第13節バジャドリー戦(1-0)で勝利して、セビージャは暫定首位に躍り出た。だがマチンは「この時点で首位にいるという結果は予期していなかった」と浮ついた様子を微塵も見せなかった。

今季のリーガは、近年稀に見るほどに拮抗している。とはいえ、2強以外のチームが優勝したのは、アトレティコが栄冠に輝いた2013-14シーズンだ。バルセロナとレアル・マドリーの牙城を崩すのは簡単ではない。だがセビージャの挑戦は観る者を沸かせている。