ルカ・エルナンデスにバイエルン移籍の可能性。アトレティコのカンテラーノ流出が意味するもの。

バイエルン戦のルカ(左)(写真:ロイター/アフロ)

ルカ・エルナンデスに、バイエルン・ミュンヘン移籍の可能性が浮上している。

ルカがアトレティコ・マドリー退団に近づく。元々、それはスペイン『マルカ』の報道だった。いわゆる「トバシ」の可能性もあった。しかし、雲行きは怪しい。

アトレティコが公式声明で報道を否定。だがその後、バイエルンのカール・ハインツ・ルンメニゲCEOは「認めることも、否定することも、できない」と獲得をほのめかしている。

火のない所に煙は立たない。1月の移籍市場でルカがバイエルンに移籍する可能性がゼロだとは、現時点では言い切れないだろう。

■テオのレアル・マドリー移籍

鍵を握りそうなのはマヌエル・ガルシア・キロン代理人だ。何を隠そう、彼はテオ・エルナンデス(レアル・ソシエダにレンタル加入中)の、アトレティコ・マドリーからレアル・マドリーへの移籍に尽力した人物である。弟のテオに続き、兄のルカを、ビッグクラブに売り込む算段なのかもしれない。

ルカはアトレティコのカンテラーノだ。スペイン代表とフランス代表でプレーする可能性があったが、ディディエ・デシャン監督に招集されたのをきっかけに、フランス代表でのプレーを選択。瞬く間にスタメンの座を勝ち取り、ロシア・ワールドカップで同国の優勝に大きく貢献した。

先に挙げた代理人の存在に加え、争点になるのは契約解除金だろう。スペインでは、所属クラブとの間に設定されている契約解除金がスペインプロリーグ機構(LFP)に支払われると、その選手はフリーになるというルールがある。つまり、バイエルンがルカの契約解除金を用意した場合、アトレティコに抗う術はない。ルカの契約解除金は8000万ユーロ(約103億円)に設定されている。

顕著な例は、ネイマールのパリ・サンジェルマン移籍だ。2億2200万ユーロ(約283億円)という莫大な契約解除金を、パリSGは準備した。代理人であるネイマール・シニアとパリSGに水面下で動かれ、バルセロナは指を咥えて見守るしかなかった。

バイエルンは過去、すでに、スペインのルールの「盲点」を突く形である選手を獲得している。それは2012年夏に加入したハビ・マルティネスである。当時、アスレティック・ビルバオに所属していたハビ・マルティネスだが、マルセロ・ビエルサ政権でCBとして起用され、不満を溜め込んでいた。バイエルンはハビ・マルティネスの契約解除金4000万ユーロ(約51億円)を拵え、ハビ・マルティネスがそれをLFPに収め、移籍が成立した。

■カンテラーノの流出

この夏、アトレティコはアントワーヌ・グリーズマンの慰留に腐心した。年俸2000万ユーロ(約25億円)、2023年までの契約でフランス代表のアタッカーと合意に至った。加えて、アトレティコはトマ・レマル、ロドリゴ・エルナンデス、サンティアゴ・アリアス、二コラ・カリニッチらの獲得に、1億1000万ユーロ(約141億円)前後を費やした。新本拠地ワンダ・メトロポリターノ設計にかかった費用も嵩んでおり、ビッグクラブに狙われた選手(今回のケースではルカ・エルナンデス)の年俸を大幅にアップして残留させる、という戦略を採ることが非常に難しい状況だ。

また、リーガにおいては、所属選手の年俸総額の上限が定められている。今季のアトレティコの場合、その額は2億9300万ユーロ(約377億円)だといわれている。アトレティコはグリーズマンに2000万ユーロを費やしている。ルカの年俸を上げようとしても、あるいは他選手の契約更改においても、ある種の障害が生じる。事実、アトレティコは今夏、それを理由にセルタから獲得したジョニーをウルヴァーハンプトンにレンタル放出したのだ。

あるいは、高年俸の選手を放出するか、である。例えば、年俸850万ユーロ(約11億円)を受け取っているとされるジエゴ・コスタだ。ジエゴ・コスタは、グリーズマンの契約延長以降、自身の年俸アップを要求してきた。だが、今季はリーガで1得点と結果を残せずにいる。そして、彼に対しては中国からの関心が絶えない。ジエゴ・コスタを売却して、浮いたお金でルカの慰留に努める、というのは、ひとつの手段だ。

ルカはセンターバックと左サイドバックでプレーできるポリバレントな選手だ。シメオネ監督にとって、欠かせない選手となっている。ディエゴ・ゴディン、ホセ・ヒメネス、フアンフラン・トーレス...。今季のアトレティコは守備陣に負傷者が続出しており、そういった状況で、ルカの存在感は日を追うごとに増している。

ルカがいなくなれば、サウール・ニゲスやトーマス・パーティーをセンターバックに組み込まなければならなくなる。自ずとシメオネ監督の戦術の幅は狭まる。ポリバレントな選手を、穴埋め的に起用せざるを得なくなる。本来であれば、そういった選手を自由自在に配置して、多様性を獲得するのがベストなのだ。

また、カンテラーノの流出という意味で、クラブに与える影響も少なくない。ルカは11歳でアトレティコの下部組織に入団。順調にステップアップしてトップチームに定着して、W杯の優勝メンバーになるほどに成長した。しかしながら、そのルカが移籍するとなれば、クラブの方針に釘が刺されることになる。

契約解除金の存在が、これまで幾度となく移籍市場を沸かせてきた。そして、アトレティコにとって、カンテラーノの放出は大きな痛手だ。気の抜けない1月が迫っている。