「縦型2トップ」と森保ジャパンのジレンマ。新たなオプションを模索する可能性はあるか。

新たな代表で9番を背負う南野(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

森保ジャパンの勢いが止まらない。

森保一監督就任後、日本代表はコスタリカ戦(3-0)、パナマ戦(3-0)、ウルグアイ戦(4-3)、ベネズエラ戦(1-1)、キルギス戦(4-0)と4勝1分けで切り抜けている。すべて国際親善試合とはいえ、初動としては申し分ない結果だ。

■縦型2トップ

中島翔哉、堂安律、南野拓実。森保ジャパンが好発進する原動力となったのは、ロシア・ワールドカップに呼ばれなかった3選手である。

そのなかで、森保監督が拠り所としたのは、4-4-2だった。さらに、その後指揮官は縦型2トップを試している。前線に据えられたのは南野と大迫勇也。だが、南野と大迫の「縦型2トップ」は現状あまり機能していない。どちらかと言えば、被害を被っているのは大迫の方で、非常にやりづらそうにプレーしている印象を受ける。南野、中島、堂安のプレーリズムと、大迫のそれが合っていないのだ。

大迫は前線に確と構え、世界の強豪相手にも通用するポストワークで、日本代表に欠かせない存在となってきた。しかしながら「NMD」と称される3人のアタッカーは、流動的に動いて相手のディフェンスラインを混乱させ、アジリティと技術を最大限に発揮してゴール前に侵入していく。そうなると、大迫は然るべきタイミングでサイドに流れてスペースを空ける必要があるが、それをやるのであれば、大迫がCFである価値が半減してしまう。

南野と大迫の併用への、期待値は高まる。世界の強豪相手に通じる大迫のポストワークと、南野の技術と得点力。個人技で打開する力があるのは、南野の方だ。ただ、ここまでの試合を見る限り、南野と小林悠の縦型2トップの方が機能していた。森保監督は、今後そのジレンマと向き合っていくことになるだろう。

■オプション化

かといって、大迫をいきなり外すのは、正直、惜しい。なので、まずはシステム変更のオプション化を提唱したい。そして、その選択肢として、森保監督がサンフレッチェ広島時代に愛用していた3-4-2-1ほど適するものはない。

攻撃陣の個の能力に目を奪われがちだが、現代表の強みは攻守の切り替えの早さ(トランジション)だ。無論、それは先に挙げた3選手に象徴されるように、「決め切る力」があってこそ成り立つ。しかしながら、組織としての基盤が強固でなければ、厳しい試合になればなるほど苦しくなる。

現在のシステムは、トランジションの観点でいえば、十分に機能している。だがアジアカップを見据えれば、オプションが欲しいところだ。

思い返せば、奇しくも、西野朗前監督の初陣が、この布陣だった。前線のトライアングルを形成したのは本田圭佑、宇佐美貴史、大迫である。ただ、あの頃の代表において、重要なのは守備の部分であった。フランクフルトでのリベロの経験が買われた格好で、長谷部誠が3バックの中央に入り、後方から試合のコントロールが求められた。だがロシアW杯前国内最後の試合でガーナに0-2と敗れると、西野前監督はこのシステムに見切りをつけ、ロシアW杯では封印した。

3-4-2-1を考える上で、あるチームが思い浮かぶ。リーガエスパニョーラで戦う、ジローナだ。

ジローナは昨季1部に昇格したばかりのチームだ。そのジローナが、昨季3-4-2-1を採用していた。リーガ第10節ではレアル・マドリーを2-1で破り、その後も安定した戦いを見せて見事残留を決めた。

昨季、ジローナがこのシステムで躍進した背景には、リーガに2トップを敷くチームが多かったという事実がある。バルセロナ、アトレティコ・マドリー、レアル・マドリー、バレンシアと上位に食い込んだところは、いずれも4-4-2を使っていた。

これらのチームの縦のラインが3つなのに対して、ジローナの縦ラインは4つだ。「4」の高さに位置する両サイドハーフを捕まえるのは困難だ。例えば4-4-2では、サイドハーフに対してSBが対応することになる。相手のSBを引き出せたら、2シャドーがその裏のスペースを狙う。対応に来なければサイドハーフがシンプルにクロスボールを放り込む。

ただ、中央には空中戦に強い選手を置く必要がある。しかし、これを試合終盤のオプションだとした場合、吉田を上げてのパワープレーも想定できる。

■攻守の切り替え

前述したように、森保ジャパンの特徴は攻守の切り替えにある。

最初の3試合となったコスタリカ戦のポゼッション率(53.4%)、パス成功率(80.4%)、ボール奪取数(55回)、パナマ戦のポゼッション率(51.9%)、パス成功率(84%)、ボール奪取数(68回)、ウルグアイ戦のポゼッション率(50.5%)、パス成功率(75.8%)、ボール奪取数(66回)、ベネズエラ戦のポゼッション率(58%)、パス成功率(81%)、ボール奪取数(40回)、キルギス戦のポゼッション率(73%)、パス成功率(88%)、ボール奪取数(68回)だ。

ちなみに、ロシアW杯では、コロンビア戦のポゼッション率(59%)、パス成功率(87%)、ボール奪取数(46回)、セネガル戦のポゼッション率(54%)、パス成功率(84%)、ボール奪取数(39回)、ポーランド戦のポゼッション率(54%)、パス成功率(86%)、ボール奪取数(41回)、ベルギー戦のポゼッション率(44%)、パス成功率(83%)、ボール奪取数(40回)だった。森保監督のチームの方が、ボール奪取数で上回っている。指揮官のコンセプトは浸透してきていると言える。

だからこそ、布陣の変更を検討する余地がある。今後親善試合でテストすることはできない。だが指揮官がよく知るシステムであるという利点があり、トレーニングで落とし込むのは十分可能だろう。アジアカップに入り、展開次第ではあるが、グループステージでリードを奪ってから試験的に採用することもできるかも知れない。

「NMD」のコンディション頼りでは、心もとない。一方で、戦いにおいて「いつでも抜ける刀を鞘に納めておく」というのは強い。とりわけ、対戦相手が4-4-2を採用してきた場合、3-4-2-1のオプション採用を考えて欲しい。新システムのオプション化は、最後の準備期間で浸透させるのに、悪くない選択肢のはずだ。