ペップの革命。マンチェスター・シティに生じる新たな予感と、「偽サイドバック」の可能性。

ラポルテとダビド・シルバ(写真:ロイター/アフロ)

攻撃が最大の防御である。それがマンチェスター・シティを率いるペップ・グアルディオラ監督の基本的な考え方だ。

シティは今季のプレミアリーグで10試合を消化した時点で首位に立っている。27得点という決定力もさることながら、注目すべきはその守備力だ。彼らはここまで、わずか3失点しか喫していないのである。

欧州の5大リーグにおいて、失点数の少なさは1位だ。2位リヴァプール(10試合4失点)、3位アトレティコ・マドリー(10試合5失点)、4位インテル(10試合6失点)、5位パリ・サンジェルマン(11試合6失点)と、ディフェンスを自慢とするチームを抑えての功績だ。

■ラポルテの存在

そのペップ・シティを支えているのが、アイメリク・ラポルテである。フランス代表に招集されないのが不思議なくらいの選手で、グアルディオラ監督が「世界を見渡しても、ラポルテ以上の左利きのセンターバックを見つけるのは困難だ」と手放しで称賛するプレーヤーだ。

今年の1月にラポルテとアスレティック・ビルバオの間に設定されていた契約解除金6500万ユーロ(約83億円)を支払い、シティは彼を獲得した。ビルバオという中堅クラブから、トップクラスの国際試合を経験していないラポルテを高額で引き入れ、当初は懐疑的な目を向ける者もいた。だが今季の活躍を見れば、シティの正当性は証明されている。

ラポルテはプレミアリーグ10試合、チャンピオンズリーグ3試合、コミュニティー・シールド1試合、そのすべてに出場している唯一の選手だ。欠場したのはリーグカップのオックスフォード戦とカラバフ・カップのフラム戦のみ。ペップは彼の才能に心酔している。

ジョン・ストーンズ、ニコラス・オタメンディ、ヴァンサン・コンパニ、誰と組んでも問題がない。それだけではなく、チャンピオンズリーグ・グループステージ第2節のホッフェンハイム戦では、新たな可能性を感じさせた。

■ファルソ・ラテラル

ホッフェンハイム戦で、ペップはラポルテを左サイドバックで起用した。シティでは、ここまでファビアン・デルフやバンジャマン・メンディにファルソ・ラテラル(偽サイドバック)の役割を与えてきた指揮官だが、あの試合においてはラポルテにそのタスクを課しているように見えた。

ペップがよく使う形のファルソ・ラテラルとは、中盤の底に位置する選手(アンカー)が最終ラインまで下がり、2枚のセンターバックと協働してビルドアップをするために、サイドバックがミドルゾーンまで上がるというものだ。これは相手の2トップが掛ける前線からのプレッシングをかわす目的で使われる。

ペップが率いるチームと対峙する時、大半の指揮官が4-4-2を採用する。事実、バイエルン・ミュンヘン指揮官就任一年目、最初の10試合で、ほとんどすべての相手チームが4-4-2を採用するという「珍現象」が起きた。対戦相手はCB2枚に対して、FW2枚をぶつけてくる。この策を打ち破るために、編み出されたのが、3枚でのビルドアップと、ファルソ・ラテラルだと言える。一時的に3-4-2-1を形成して、相手の4-4-2を破壊するのだ。

ただ、ラポルテのファルソ・ラテラルに関しては、少々異なった。ペップがバルセロナで指揮を執っていた頃の、それに近かった。右サイドバックのダニ・アウベスが前線まで上がる。それをカバーするために、左SB、左CB、右CBがスライドする。最終ラインが3枚になる。左SB(当時はエリック・アビダル)が、「第三のCB」に変化するのだ。

前述したように、ボールを保持するというのが、ペップにとって「一番の守備」である。現に、シティの1試合平均ポゼッション率(67,%)、パス成功率(89%)はプレミアリーグで1位の数字だ。

また、守備はDFだけでは成り立たない。FWとMFを含めた、連動したプレッシング。ロシア・ワールドカップにおけるペップの影響力は、ポゼッションではなく、トランジションだった。

だが刻一刻と進化するフットボールの世界で、同じところに留まるのは自殺行為である。戦術に幅を持たせるーー。ラポルテのファルソ・ラテラルは、ペップ・シティの新たな広がりを予感させている。