序盤から拮抗するリーガエスパニョーラで、「ポゼッション」の意味するものとは。

「ボール保持」の概念が真っ二つに分かれたアトレティコとベティスの一戦(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

バルセロナとレアル・マドリーが、リーガエスパニョーラで苦しんでいる。

かつてないほどの拮抗性が、リーガを包んでいる。リーガ第8節終了時点で、首位に立っているのはセビージャだ。この展開を、予想した者は少なかったはずだ。

■ポゼッションの重要性が低く

セビージャは8試合で18得点を記録しており、その得点力で快進撃を続けている。

だがポゼッション率では、どうだろうか。決してセビージャが優れているわけではない。

リーガの順位表から見ると、1位セビージャ(49%)、2位バルセロナ(72%)、3位アトレティコ・マドリー(49%)、4位レアル・マドリー(68%)、5位エスパニョール(49%)、6位アラベス(37%)、7位バジャドリー(46%)、8位ベティス(69%)という数字だ。

上位8チームで、50%を上回っているのは、3チームのみである。

ロシア・ワールドカップで優勝したフランスのポゼッション率は、48%だった。一方、70%に迫るポゼッション率を記録したスペインやドイツはベスト8にさえ進めなかった。その傾向が、今シーズンのリーガにも反映されている。

■CBとビルドアップ

今季のここまでのリーガエスパニョーラで、パス本数の上位5選手のうち、実に3選手がセンターバックだ。

それはアイサ・マンディ(735本/ベティス)、ジェラール・ピケ(700本/バルセロナ)、マルク・バルトラ(672本/ベティス)である。

現代フットボールにおいては、足元の技術に優れたGKが増え、後方からのビルドアップの重要性が高まっている。ボールを握り、試合を支配するという考え方を浸透させているキケ・セティエン監督率いるベティスの2選手が、トップ5入りしているのは偶然ではないだろう。

ポゼッションスタイルの象徴が、センターバックなのだ。つまり、彼らの存在はチームのストラクチャー(構築)の根幹に関わる。

ポゼッションの重要性が低くなる一方で、センターバックは後方から積極的に参加する。対戦相手はボール奪取からのショートカウンターを虎視眈々と狙っている。センターバックにミスは許されない。そのミスは失点に直結するからだ。

■シフトする中盤の役割

そしてまた、中盤の役割においても、転換期が訪れている。

ジョゼップ・グアルディオラ監督率いるバルセロナが覇権を独り占めしていた時に比べると、その時ほどボール保持への関心は高くなくなった。それに応じるように、ミドルゾーンで要求される職能にも変化が生じている。

加えて、テクノロジーの発達により、ゴール前で審判団からより厳しい視線が注がれるようになった。何よりも大きいのは、言わずと知れたVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の導入である。

ゴール前でVARの恐怖に慄くのではなく、中盤の早い段階でファウルをしてプレーを止める。総体的に見た時、これが失点を防ぐ有効な手段になるのは間違いない。

すると、中盤の攻防が鍵を握ることになる。戦術的ファウルー「賢いファウル」「インテリジェントなファウル」といわれるプレーーが肝要になる。フットボールにおいて、「継続性」は大事な要素だ。だからこそ、プレーを止め、流れを寸断することに意味が宿る。

ファウル数のトップ5を見れば、パぺ・ディオプ(22回/エイバルMF)、ダミアン・ムスト(20回/ウエスカMF)、ジェネ・ダコナム(19回/ヘタフェDF・MF)、クリスティアン・ストゥアニ(19回/ジローナFW)、アンドレ・シウバ(19回/セビージャFW)と純粋なCBが一人もいないことが分かる。

その一方で、ボール奪取数に関しては、ルベン・アルカラス(72回/バジャドリーMF)、エベル・バネガ(70回/セビージャMF)、マルク・ロカ(62回/エスパニョールMF)と中盤の選手がランキングの上位を占めている。

これまではボランチがチームの「舵取り役」とされてきた。だが攻撃の出発点はセンターバックへと移り変わり、中盤の選手には守備のタスクがより求められるようになっている。

戦術の傾向を押さえながら、組織として確固たる拠り所を作らなければ、強豪でさえ簡単に勝てない時代になってきた。緻密な計算と徹底した工夫によって、スター・システムは破滅への道を辿っているのである。