Yahoo!ニュース

レアル・マドリーが迎える「クリスティアーノ以後」の時代。新たな歴史は刻まれるのか。

森田泰史スポーツライター
ベンゼマ、ベイル、C・ロナウドはレアル・マドリーの看板3トップだった(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

「このチームは勝ち続けるために変化を必要としている」

ジネディーヌ・ジダン前監督はそう言い残し、昨季終了時にクラブを去った。そして、レアル・マドリーのアイドル的な存在だったジズーの言葉をなぞるように、大きな変化が訪れた。

クリスティアーノ・ロナウドの退団である。

■偉大な先達に

C・ロナウドは移籍金1億ユーロ(約128億円)を置き土産に、ユヴェントスに移籍した。33歳という年齢を顧みれば、マドリーはあり得ないほどの高額で彼を売却している。

だがマドリーにおけるC・ロナウドの影響力は絶大だった。

C・ロナウドは在籍した9年間で公式戦438試合450得点を記録。ラウール・ゴンサレス(323得点)、アルフレッド・ディ・ステファノ(308得点)を上回り、クラブ史上最多得点者となった。

マドリーでプレーする選手にとって、ラウールとディ・ステファノの存在は無視できるものではない。ラウールはマドリーのカンテラーノで、育成組織ラ・ファブリカの最高傑作と言える選手だ。ディ・ステファノは在籍した1953年から1964年までの間に、5度のチャンピオンズリーグ(旧チャンピオンズカップ)優勝を経験した。

C・ロナウドはマドリーに在籍した9年間で、4度のCL優勝に貢献している。得点数、獲得タイトル数においては、彼らに引けを取らない。偉大な先達に肩を並べたのだ。

それだけではない。2009年夏に、マドリーはマンチェスター・ユナイテッドからC・ロナウドを獲得するため、当時史上最高額だった9400万ユーロ(約120億円)の移籍金を支払った。本拠地サンティアゴ・ベルナベウで行われた入団会見には、およそ7万5000人が詰めかけた。

遡ると、1984年7月5日に行われたディエゴ・マラドーナのナポリ移籍時の入団会見に、6万5000人が駆け付けたことがある。C・ロナウドへの期待値は、それを上回るものだったのだ。

■代替不可能な選手

C・ロナウドの抜けた穴を、如何にして埋めるか。マドリーは未だ、その答えを見つけられていない。

C・ロナウドの代役など、いない。彼がマドリーで年間40得点を下回ったのは、移籍1年目の2009-10シーズン(公式戦35得点)だけなのだ。

それ以降、彼は10-11シーズン(54得点)、11-12シーズン(55得点)、12-13シーズン(55得点)、13-14シーズン(47得点)、14-15シーズン(54得点)、15-16シーズン(48得点)、16-17シーズン(46得点)、17-18シーズン(44得点)と類を見ない決定力を示している。

絶対的なエースが不在となり、フロレンティーノ・ペレス会長が密かに期待を寄せているのが、ガレス・ベイルだ。しかし、ベイルには、まだ荷が重い。C・ロナウドが抜けたシーズン、突如として彼に40ゴールの肩代わりをさせるのは、無謀だ。ベイルの得点数のキャリアハイは、2012-13シーズンにトッテナムで記録した26得点なのだ。

なお、カリム・ベンゼマのマドリーでの年間最高得点数は2011-12シーズンの32得点で、マルコ・アセンシオは昨季の11得点だ。「BBC」と同等に「BBA」に頼るのは、時期尚早である。

■補強の行方

UEFAスーパーカップで、マドリーはアトレティコ・マドリーに2-4で敗戦した。マドリーが国際大会の決勝で敗れたのは、18年ぶりのことだ。警鐘は鳴らされている。

C・ロナウド獲得以降、ペレス会長が行った「大きな買い物」は、2013年夏のベイル、2014年夏のハメス・ロドリゲスのみだ。ベイル獲得の際には移籍金1億100万ユーロ(約129億円)、ハメス獲得時には移籍金7500万ユーロ(約96億円)が支払われた。

ただ、この4年に関しては、移籍金5000万ユーロ(約64億円)を超える獲得選手は存在しない。

そのマドリーが現在狙っているのが、バレンシアのロドリゴ・モレノである。バレンシアはロドリゴの放出を考えておらず、彼の獲得を希望するクラブに対しては契約解除金1億2000万ユーロ(約153億円)の支払いを頑なに要求している。C・ロナウドを1億ユーロで売却したマドリーが、それ以上の額でロドリゴを獲得するということに、果たしてマドリディスタが納得するだろうか。

現有戦力に満足している節があるペレス会長だが、彼にはかつて「絶対に、絶対に、絶対にない」と語った数カ月後に、ディビッド・ベッカムを獲得した過去がある。ネイマール獲得のために、3億ユーロ(約384億円)の資金を貯えているとも言われている。レアル・マドリーなら、ペレス会長なら...。移籍市場の終盤に、何が起きてもおかしくはない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

リーガエスパニョーラは「戦術の宝庫」。ここだけ押さえておけば、大丈夫だと言えるほどに。戦術はサッカーにおいて一要素に過ぎないかもしれませんが、選手交代をきっかけに試合が大きく動くことや、監督の采配で劣勢だったチームが逆転することもあります。なぜそうなったのか。そのファクターを分析し、解説するというのが基本コンセプト。これを知れば、日本代表や応援しているチームのサッカー観戦が、100倍楽しくなります。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

森田泰史の最近の記事