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レアル・マドリーは奇跡を許さず。本拠地ベルナベウとの共鳴に、欧州の舞台で示す「生命力」

森田泰史スポーツライター
勝利を喜ぶレアル・マドリーの選手たち(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

およそ1年前に、前人未到の域に達した。それでも欧州王者の野心は全く衰えていない。

レアル・マドリーは昨季、チャンピオンズリーグ(CL)で優勝を飾った。前年に続く、同大会連覇。誰も成し遂げられなかったことを、彼らは達成したのである。

■新興勢力と激突

2017年12月11日。決勝トーナメント1回戦の抽選会が行われると、周囲から好奇の目がジネディーヌ・ジダン監督率いるチームに注がれた。

対戦相手はパリ・サンジェルマンだった。今季開幕前に大型補強を敢行したパリSGとマドリーが対戦する。王者と新興勢力の象徴が激突するという構図はメディアの興味を刺激した。

それだけではない。パリSG戦を前にして、マドリーはリーガエスパニョーラで未消化1試合ながら首位バルセロナと勝ち点17差の4位に位置していた。コパ・デル・レイでは準々決勝でレガネス相手に不覚を取り、ベスト8敗退。「手負いのマドリー」に、残された道はCLのタイトルしかなかった。

■ベルナベウとの共鳴

「共に伝説を作り、記憶に名誉を与えよう。一致団結してこそレアル・マドリーだ」

セルヒオ・ラモスはパリSGとの大一番を目前に控え、ソーシャルメディアを通じてそう呼び掛けた。準々決勝進出に向け、マドリディスタの支持が必要不可欠だと考えたからだ。

そして試合開始直前、マドリーの本拠地サンティアゴ・ベルナベウのゴール裏に大きな横断幕が掲げられた。テニスプレーヤーのラファエル・ナダルをモチーフにしたイラストに、「マドリディスモは決して屈しない」というメッセージが添えられていた。

スペインで「パリで最強の男」と言えば、ナダルである。ナダルはパリ開催の全仏オープンで過去10回優勝しており、同大会の最多優勝選手だ。マドリディスタの思いは明確だった。

その思いは結実する。マドリーは第1戦を3-1、第2戦を2-1で制し、堂々と欧州8強に名乗りを挙げた。

■命運のかかった試合

準々決勝のユヴェントス戦は、ジダン監督の命運がかかる試合となった。

勝負は意外な幕開けを見せる。マドリーは敵地ユヴェントス・スタディウムで行われた第1戦でユヴェントスを圧倒。ポゼッション率(56%/46%)、パス本数(643本/507本)、ゴールチャンス数(14回/12回)、枠内シュート率(36%/17%)でイタリア王者に優り、3-0の勝利を収めた。

だが第2戦は苦戦を強いられる。マリオ・マンジュキッチの2得点とブレ―ズ・マテュイディのゴールにより、後半15分の時点でユヴェントスがトータルスコアをタイに戻したからだ。

第1戦とは打って変わり、ポゼッション率(62%/38%)こそ上回ったものの、枠内シュート数(6本/6本)、枠内シュート率(55%/33%)、決定率(27%/6%)とゴール前で差が出た。終了間際のPKで2試合合計スコア4-3で競り勝ったが、心臓に悪い試合運びだった。

それでも、この37年間、マドリーは一度もCLの決勝で敗れていない。つまり、準決勝が正念場になる。対峙するのはバイエルン・ミュンヘン。相手に不足はない。

バルセロナがローマに逆転負けを喫した一方で、マドリーはユヴェントスに勝ち切った。この事実が意味するところは、とてつもなく大きい。余りある「生命力」を、欧州で誇示している。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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