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手負いのレアル・マドリーがパリSGを迎える。欧州王者と新興勢力の象徴が激突【前編】

森田泰史スポーツライター
2015-16シーズン以来の対戦となるレアル・マドリーとパリ・サンジェルマン(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

今季のチャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦において、一番注目のカードと言っていいだろう。

CL2連覇中のレアル・マドリーが、同大会初制覇を目指すパリ・サンジェルマンと激突する。だが両者のチーム状態は目に見えて異なっている。

■手負いのマドリー

マドリー(未消化1試合)はリーガエスパニョーラ第23節終了時点で首位バルセロナと勝ち点17差の4位に位置。コパ・デル・レイでは準々決勝でレガネス相手に不覚を取り、ベスト8敗退が決定している。

「手負いのマドリー」に、残された道はCL制覇しかない。そのマドリーの攻撃を牽引するのは、クリスティアーノ・ロナウドだ。今季リーガで19試合11得点と例年に比べて大人しいC・ロナウドだが、CLでは別の顔を覗かせる。

グループステージの6試合で、C・ロナウドは9得点をマーク。CL最多得点者(114得点)である彼は、今季7回目のCL得点王を目指して邁進している。

マドリーのエースは「ここぞ」という時に必ず現れる。先のリーガ第23節レアル・ソシエダ戦では、今季初のハットトリックを達成。この時期に照準を合わせてきたかのように、決定力を見せ付けた。

■「BBC」と「カーディフの11人」

C・ロナウドの力を最大限に引き出すためには、「傭兵」を揃える必要がある。ここがジネディーヌ・ジダン監督の悩みどころだ。

ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、C・ロナウドの「BBC」起用は歴代指揮官にとって絶対の掟だった。フロレンティーノ・ペレス会長の無言の重圧に逆らえる者はおらず、この3選手を巧みに扱いながら結果を出す操縦術が2013年夏以降、求められてきた。

だが昨季ウェールズのカーディフで行われたCL決勝で、ジダン監督は「BBC」を先発に組み込まなかった。ベイルが負傷明けだった影響もあるが、指揮官はイスコをトップ下に据える4-4-2で挑み、ユヴェントスを下して優勝を決めている。

GKケイロール・ナバス、DFダニエル・カルバハル、セルヒオ・ラモス、ラファエル・ヴァラン、マルセロ、MFカセミロ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチ、イスコ、FWベンゼマ、C・ロナウド。これが現在「カーディフの11人」と呼ばれるユヴェントス戦の先発メンバーだ。

現地時間14日に控えるパリSGとの一戦では、カルバハルが出場停止で欠場する。代役にはナチョ・フェルナンデスが入るとみられている。ただ、カルバハル以外には特に欠場者がいない状況で、ジダン監督は「BBC」か「カーディフの11人」を選ぶ必要がある。加えて、マルコ・アセンシオ、ルーカス・バスケスらの起用にも答えを出さなければいけない。

■守備の弱点とCLに伴う魔力

今季リーガのシーズン前半戦では、多くの対戦相手がマルセロの裏のスペースを狙ってきた。

失点のおよそ40%が左サイドを崩されてのものだった。だがジダン監督はその解決策を見出したように見える。

カセミロを「第3のCB」として最終ラインに埋め込む。右SBのオーバーラップを留め、左CBをサイドにスライドさせて臨時4バックを形成する。それが指揮官の施策だ。

1956年に初めてチャンピオンズカップ(CLの前身)を制したマドリーは、これまで計12回欧州制覇を達成している。これはミラン(7回)、バルセロナ(5回)、バイエルン(5回)、リヴァプール(5回)とヨーロッパの名門クラブを凌駕する数字だ。

マドリーとCLは不思議な縁で結ばれている。今季もマドリーはCLで強さを発揮してきた。それはCL6試合とリーガ22試合の1試合あたりの数字を比べれば明らかである。

得点数(CL 2,8得点/リーガ 2,3得点)、パス本数(665本/584本)、パス成功本数(90本/88本)、クロス数(29本/26本)、枠内シュート数(42本/39本)と、すべての面でCLでの記録がリーガでの記録を上回る。

魔力に引き寄せられるように、マドリーはCL通算13度目の優勝を狙う。その前に立ちはだかるのは、パリSGである。

(後編につづく)

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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