手負いのレアル・マドリーがパリSGを迎える。欧州王者と新興勢力の象徴が激突【前編】
今季のチャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦において、一番注目のカードと言っていいだろう。
CL2連覇中のレアル・マドリーが、同大会初制覇を目指すパリ・サンジェルマンと激突する。だが両者のチーム状態は目に見えて異なっている。
■手負いのマドリー
マドリー(未消化1試合)はリーガエスパニョーラ第23節終了時点で首位バルセロナと勝ち点17差の4位に位置。コパ・デル・レイでは準々決勝でレガネス相手に不覚を取り、ベスト8敗退が決定している。
「手負いのマドリー」に、残された道はCL制覇しかない。そのマドリーの攻撃を牽引するのは、クリスティアーノ・ロナウドだ。今季リーガで19試合11得点と例年に比べて大人しいC・ロナウドだが、CLでは別の顔を覗かせる。
グループステージの6試合で、C・ロナウドは9得点をマーク。CL最多得点者(114得点)である彼は、今季7回目のCL得点王を目指して邁進している。
マドリーのエースは「ここぞ」という時に必ず現れる。先のリーガ第23節レアル・ソシエダ戦では、今季初のハットトリックを達成。この時期に照準を合わせてきたかのように、決定力を見せ付けた。
■「BBC」と「カーディフの11人」
C・ロナウドの力を最大限に引き出すためには、「傭兵」を揃える必要がある。ここがジネディーヌ・ジダン監督の悩みどころだ。
ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、C・ロナウドの「BBC」起用は歴代指揮官にとって絶対の掟だった。フロレンティーノ・ペレス会長の無言の重圧に逆らえる者はおらず、この3選手を巧みに扱いながら結果を出す操縦術が2013年夏以降、求められてきた。
だが昨季ウェールズのカーディフで行われたCL決勝で、ジダン監督は「BBC」を先発に組み込まなかった。ベイルが負傷明けだった影響もあるが、指揮官はイスコをトップ下に据える4-4-2で挑み、ユヴェントスを下して優勝を決めている。
GKケイロール・ナバス、DFダニエル・カルバハル、セルヒオ・ラモス、ラファエル・ヴァラン、マルセロ、MFカセミロ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチ、イスコ、FWベンゼマ、C・ロナウド。これが現在「カーディフの11人」と呼ばれるユヴェントス戦の先発メンバーだ。
現地時間14日に控えるパリSGとの一戦では、カルバハルが出場停止で欠場する。代役にはナチョ・フェルナンデスが入るとみられている。ただ、カルバハル以外には特に欠場者がいない状況で、ジダン監督は「BBC」か「カーディフの11人」を選ぶ必要がある。加えて、マルコ・アセンシオ、ルーカス・バスケスらの起用にも答えを出さなければいけない。
■守備の弱点とCLに伴う魔力
今季リーガのシーズン前半戦では、多くの対戦相手がマルセロの裏のスペースを狙ってきた。
失点のおよそ40%が左サイドを崩されてのものだった。だがジダン監督はその解決策を見出したように見える。
カセミロを「第3のCB」として最終ラインに埋め込む。右SBのオーバーラップを留め、左CBをサイドにスライドさせて臨時4バックを形成する。それが指揮官の施策だ。
1956年に初めてチャンピオンズカップ(CLの前身)を制したマドリーは、これまで計12回欧州制覇を達成している。これはミラン(7回)、バルセロナ(5回)、バイエルン(5回)、リヴァプール(5回)とヨーロッパの名門クラブを凌駕する数字だ。
マドリーとCLは不思議な縁で結ばれている。今季もマドリーはCLで強さを発揮してきた。それはCL6試合とリーガ22試合の1試合あたりの数字を比べれば明らかである。
得点数(CL 2,8得点/リーガ 2,3得点)、パス本数(665本/584本)、パス成功本数(90本/88本)、クロス数(29本/26本)、枠内シュート数(42本/39本)と、すべての面でCLでの記録がリーガでの記録を上回る。
魔力に引き寄せられるように、マドリーはCL通算13度目の優勝を狙う。その前に立ちはだかるのは、パリSGである。