ビジャレアルが王者に宣戦布告。カンテラ重視への原点回帰で欧州の舞台を目指す。
サンティアゴ・ベルナベウで、黄色い歓声が上がった。ビジャレアルにとって、歴史的な一日が刻まれている。
リーガエスパニョーラ第19節、ビジャレアルは敵地ベルナベウでレアル・マドリーと対戦した。今季不振に喘ぐマドリーをよそに、86分にパブロ・フォルナスが値千金の得点を挙げ、ビジャレアルが勝利を収めた。
1998年8月31日。ビジャレアルが初めてベルナベウで戦った試合の日付だ。それ以降、16回ベルナベウでマドリーと戦ったが、ビジャレアルは一度も勝利を挙げられなかった。その「呪縛」を打ち破るまで、およそ19年の月日を要した。
■カンテラ重視への原点回帰
シーズンの幕開けは華やかなものではなかった。
リーガ開幕から6試合で、成績不振を理由にフラン・エスクリバ監督を解任。Bチームを率いていたハビ・カジェハ監督を昇任させ、クラブは立て直しを図った。
その拠り所となったのが、カンテラである。今季エスクリバ監督の下で、トップデビューしたのはダリオ・ポベダだけだった。昨季まで主力だったマリオ・ガスパール、マヌ・トリゲロスを重宝するのは当然ながら、カジェハ監督はアンデル・カンテロ、チュカ、ラミロ・ゲーラ、ダニエル・ラバらを次々とデビューさせている。
■時に仇となる若さ
指揮官とクラブの信念は合致した。しかし時には、「若さ」が仇となることもある。
リーガ第15節、本拠地セラミカにバルセロナを迎えた一戦では、試合をコントロールしながら終盤にラバがセルジ・ブスケッツに対する危険なスライディングタックルで一発退場。22歳の青年は主審に執拗に抗議するでもなく、ピッチを後にした。
ビジャレアルはバルセロナ戦で10人となった後に失点して、勝ち点を逃した。カジェハ監督は試合後に「あのファールをしたのがバルセロナの選手だったら、主審がレッドカードを提示したかどうかは疑問だ」とラバを擁護したが、経験不足が露呈したのは明らかだった。
■エースの中国への移籍
カンテラーノの台頭で持ち直したビジャレアルだが、今冬の移籍市場で新たな問題が生じる。今季リーガ15試合で9得点を記録していたエースのセドリック・バカンブが、中国の爆買いの「餌食」となった。
北京国安は移籍金3700万ユーロ(約49億円)を準備してバカンブ獲得に動いた。これほどの大金を積まれ、ビジャレアルが断れるはずもなく、クラブレコードに迫る大型移籍が成立した。
ビジャレアルは穴を埋めるため、江蘇蘇寧からロジェル・マルティネスを獲得。昨年夏に加入したカルロス・バッカと共に、「コロンビア人コンビ」に得点力を期待する運びとなっている。
■CL出場権をマドリーと争う
「素晴らしい感覚だ。チャンピオンズリーグ出場権獲得は不可能ではないと思う」。カジェハ監督はマドリーを撃破した後、そう語った。
ビジャレアルはシーズン前半戦を勝ち点31の5位で終えた。4位マドリーとの勝ち点差は1ポイント。チャンピオンズリーグ(CL)出場権が与えられる4位以内(1位~3位はストレートイン/4位は予選プレーオフに参加)確保は手に届く距離にある。
最後にCLに出場したのは、2010-11シーズンに遡る。8年ぶりに欧州最高峰の舞台へーー。ビジャレアルは昨季の欧州王者に「宣戦布告」を突き付けたのだ。