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井手口陽介が移籍する「クルトゥラル・レオネサ」とは、どんなチームなのか。

森田泰史スポーツライター
移籍を決断した井手口(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

イングランド2部のリーズ・ユナイテッドは、井手口陽介の獲得でガンバ大阪と合意に達した。だが井手口の新天地はイングランドではなく、スペインになるようだ。

リーズの提携クラブであるスペイン2部のクルトゥラル・レオネサは4日に井手口の加入を発表している。今季終了時までのレンタルで井手口のレオネサ移籍が決まった。

■結果を出した最年少監督

レオネサのハイライトは1955-56シーズンだ。54-55シーズン、当時2グループに分けられていたリーガエスパニョーラ2部で、グループIで優勝を飾ったレオネサは念願の1部昇格を果たす。

アスレティック・ビルバオが優勝した55-56シーズン、当時16チームで構成されていたリーガ1部を15位で終えたレオネサは、わずか1年で2部へと降格する。そこからは黎明期に入り、1975年以降は3部と2部Bを往復するシーズンを過ごした。

そのレオネサを救ったのは、ルベン・デ・ラ・バレーラ監督だ。2016年夏に招聘された若き指揮官は、たった一年でチームを2部Bから2部へと昇格させた。

ルベン監督は32歳でリーガ2部で指揮を執ることになった。アラベスのルイス・スベルディア監督(36歳/9月17日に解任)、オサスナのディエゴ・マルティネス監督(37歳)、レウスのロペス・ガライ監督(37歳)、バルセロナBのジェラール・ロペス監督(38歳)らを抑え、今季開幕時点で1部・2部を合わせて最年少の監督になったのである。

■資金援助で財政を立て直す

2012年、クラブは財政難で消滅の危機に瀕していた。一時は赤字が600万ユーロ(約8億円)まで膨れ上がり、まずはそれを300万ユーロ(約4億円)に、続いて170万ユーロ(約2億2200万円)まで引き下げたが、そこで限界に達した。窮地に陥ったレオネサに手を差し伸べたのが、カタールの育成最高機関であるアスパイア・アカデミーだった。

母国開催の2022年ワールドカップに向け、カタールは若手選手の育成に注力している。アスパイアはそのプロジェクトを象徴する存在だ。欧州で拠点を探していたアスパイアは170万ユーロを支払うことで、レオネサと業務提携を結んだ。

1923年創設の歴史あるクラブは、国外からの資金援助で財政を立て直した。そして青年指揮官の就任で、昨季ついに43年ぶりの2部復帰を果たしたのである。

■実力が拮抗する2部

レオネサは現在22チーム中17位だ。だが12位アルコルコンまでは勝ち点3差でひしめき合っている。

リーガ2部は「全カテゴリーで最もタフ」といわれている。1部以上の試合数をこなさなければならず、移動も多い。

事実、レオネサは今季序盤戦で苦しんだ。第6節ラージョ・バジェカーノ戦から第18節ルーゴ戦までは13試合未勝利が続いた。第19節ナスティック戦で2-0と勝利してトンネルを抜けたが、年内最終戦となった第20節レアル・オビエド戦では0-3と完敗している。

井手口のスペイン2部への移籍を心配する声もあるようだが、昨季柴崎岳(現ヘタフェ)がテネリフェで見せたほどの活躍ができれば、それは杞憂に終わるだろう。ワールドカップイヤーに大きな決断を下した井手口の挑戦に期待したい。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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