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強まるベンゼマに対する批判。背景にある、マドリディスタのモラタへの懐旧の情。

森田泰史スポーツライター
リーガで決定力不足に喘ぐC・ロナウドとベンゼマ(写真:ロイター/アフロ)

勝利は取り戻した。だがレアル・マドリーFW陣の雄叫びがスタジアムに響くことはなかった。

5日のリーガエスパニョーラ第11節で本拠地サンティアゴ・ベルナベウにラス・パルマスを迎えたマドリーは、3試合ぶりに白星を飾った。しかしながらカリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドに得点は生まれず、マドリディスタの我慢は限界寸前となっている。

■マドリディスタの対照的な反応

ベンゼマ、C・ロナウドは今季のリーガで7試合1得点といずれも決定力不足に苦しんでいる。それでもラス・パルマス戦の観衆の反応は対照的であった。

C・ロナウドに対しては、シュートを外したとしても、その積極性に拍手が送られる。一方でベンゼマには開始3分の決定機を逸した場面を筆頭に、ミスをすれば容赦なくブーイングが浴びせられた。

得点を奪えなかっただけでなく低調なパフォーマンスに終始したベンゼマは69分にルーカス・バスケスとの交代でピッチを去った。その瞬間、マドリディスタの意見は真っ二つに分かれた。拍手喝采と指笛が入り交じる、奇妙な雰囲気がベルナベウを包んだのである。

■モラタを失った寂しさ

マドリディスタがベンゼマに厳しい目を向けるのには、理由があるようだ。

無論、レアル・マドリーで「9番」を背負う以上、サンティリャーナ、ウーゴ・サンチェス、イバン・サモラーノといった往年の名選手と比較されることは避けられない。だがそれ以上に、この夏にクラブを去ったカンテラーノの存在が、ベンゼマに重くのしかかっている。

アルバロ・モラタは8000万ユーロ(約103億円)に、ボーナス500万ユーロ(6億4500万円)を加えた移籍金で、今季開幕前にチェルシーに移籍した。自家栽培のストライカーの不在感が、マドリディスタの懐旧の情を強く刺激する。

先日、「初めて自分がレギュラーになったと感じている」と語っていたモラタは、先のマンチェスター・ユナイテッド戦でも決勝ゴールを挙げて勝負強さを見せ、初挑戦となったプレミアリーグですでに7得点を記録している。

今夏マドリッドを離れ、新天地で活躍しているのはモラタだけではない。移籍金800万ユーロ(約10億3000万円)でリヨンに移籍したマリアーノ・ディアスは、リーグアンで9得点をマークしている。

モラタ、マリアーノという2人のカンテラーノを放出し、残留した背番号9が得点力を欠いていては、マドリディスタが納得できるはずもない。

■火を噴いたアセンシオの左足

ベンゼマが批判を浴びる一方で、イスコ、マルコ・アセンシオはラス・パルマス戦で輝きを放った。

イスコはC・ロナウドのアシストから3点目を奪取。アセンシオは得意の左足で25メートル弾を沈めた。

アセンシオのシュートは、時速99Kmを記録した。スペインで「ミサイル砲」と形容される、アセンシオの左足は確実にマドリーの武器になりつつある。彼のレアル・マドリーでの得点は、17得点中6得点がペナルティーエリア外からのミドルシュートだ。

今季リーガにおいてシュート数48本で1得点という不甲斐ない数字を残しているC・ロナウドだが、彼はラス・パルマス戦でのイスコへのアシストで、マドリーでの84アシスト目を記録。これはラウール・ゴンサレス(83アシスト)を超える記録だ。

また、C・ロナウドはチャンピオンズリーグでは6得点を挙げて今大会の得点ランクで首位に立っており、大半のマドリディスタはエースの復調を信じ続けている。

だがベンゼマに関しては状況が異なる。フランス人ストライカーはできる限り早く目に見える結果を残して、彼自身の誇りとマドリディスタの信頼を取り戻さなければならない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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