8月11日から始まった停滞前線による大雨は、九州や中国地方を中心に特別警報が何度も発表され、各地に甚大な被害をもたらしました。気象庁からは、早い段階で「平成30年7月豪雨(西日本豪雨)に匹敵する恐れがある」と言われていましたが、実際の総雨量は暫定値ではあるものの西日本豪雨を上回った模様です。

近年記録的な豪雨が疑いなく増えている

 大雨の評価には、「一つの地点(観測場所)で、どれくらい降ったのか」というものと、「面積的にどれくらいの広がりを持ったのか」という二つの物差しがあります。大雨の規模を語る場合、数地点の極端なデータよりも、少しの雨量でもカウントして合計した方が大雨の実態を正しく反映します。

 例えば、100ミリの地点が3か所あれば300ミリです。しかし、50ミリの地点が10か所あれば合計雨量は500ミリで、こちらの方が規模の大きな大雨だと言うことが出来ます。

 そうして、過去36年間(1982年~2018年)の旬ごとの総雨量を回数別に棒グラフにしたものが下記の図です。

全国のアメダス地点(うち966地点)における旬ごとの総雨量の回数分布 出典:気象庁
全国のアメダス地点(うち966地点)における旬ごとの総雨量の回数分布 出典:気象庁

 Aは広島で大規模な土砂災害が発生した平成26年8月豪雨(広島豪雨)、Bは鬼怒川豪雨とも呼ばれる、平成27年9月関東・東北豪雨、Cは平成29年7月の九州北部豪雨、そしてグラフの一番右端(赤矢印)にあるのが、3年前の平成30年7月豪雨です。

 降水量の総和が10万ミリを超える頻度が相対的に少ないなかで、近年の豪雨が10万ミリをはるかに超えていることがわかります。

 なかでも、平成30年7月豪雨の雨量の総和は10日間で20万8000ミリ以上。俗に西日本豪雨と呼ばれ、当時は”これほどの雨が降るとは・・・”と、我々気象関係者は信じられない思いでした。

 それほど西日本豪雨は突出して雨量が多かったのですが、今回の総雨量(8月11日~18日)をざっと計算してみると、その西日本豪雨をすでに超えており、大雨が小康状態になった8月18日時点で、28万8600ミリ余りでした。なんと、期間は8日間で、西日本豪雨を8万ミリ以上も上回っているのです。

 気象庁は現在も一連の豪雨が終わっていないとして、詳しい報告はまだ発表されていませんが、今回の豪雨が歴史に残る記録的な雨量だったことは間違いがありません。

 また、上記の計算結果は観測地点数が気象庁の発表している地点より多いため、雨量も多くなったという向きもありますが、これを一地点あたりの雨量に直してみると、西日本豪雨は一地点あたり215.4ミリ、平成26年の広島豪雨は180.2ミリ、平成27年の鬼怒川豪雨は137.6ミリでした。今回は、概算で一地点あたり224.5ミリと、これもダントツで過去の記録を塗り替えたと言っていいでしょう。

 ではなぜこれほどの豪雨になったのでしょうか。

日本近海の海水温が異常に高かった

8月10日と20日の日本近海の海水温 出典:気象庁(スタッフ加工)
8月10日と20日の日本近海の海水温 出典:気象庁(スタッフ加工)

 ここからは私の推測ですが、一つの要素は日本近海の海水温の高さにあったのではないかと思っています。

 とくに日本海は豪雨前に、平年より3~4度も高い状態でした(白丸部分)。それが豪雨によって水温が下がりました。海水温が下がったというのは海がかき混ぜられた効果もあるでしょうが、その分の水蒸気が大気中に供給されたとも言えるでしょう。

 海水温が1度高いと水蒸気の蒸発が盛んになり、降水量も約13%増えるとの報告もあります。

 今年の梅雨は上空のジェット気流の流れが変則的で、西日本ではなかなか梅雨が明けませんでした。逆に東日本や北日本では7月下旬から晴天が続いて海水温を温め、その水温の高さが豪雨をもたらした一因ではないかと考えています。

 今後、気象庁から詳しい報告が出されると思いますが、いずれにしろ、地球環境激変の時代に我々は生きているようです。

(注)豪雨の名称については、俗称を使用しました。

参考

「平成30年7月豪雨」及び7月中旬以降の記録的な高温の特徴と要因について (気象庁)

温暖化に伴い強雨は増えるのか? -アメダス観測が示す気温と強雨の関係- (藤部文昭)