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大型台風8号 関東直撃の恐れも オリンピックへの影響は

森田正光気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長
7月27日(火)の雨と風の予想(出典:ウェザーマップ)

 台風8号は7月25日(日)21時現在、日本の東にあって北北西に進んでいます。中心の気圧は992ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は20メートルです。

 今回の台風は表面海水温28度以上の暖かい海をわたってきましたが、海面下50メートルの水温は20度前後と意外に低いので、最大風速はそれほど強くなっていません。

 しかし、15メートル以上の強風域は直径で約1000キロもあり、影響する範囲の広い「大型台風」となっています。

 最新の予報をみると、この台風が予報円のどこを通っても、7月27日(火)に東日本あるいは東北に接近、上陸する可能性が高くなってきました。

オリンピック屋外競技への影響は

 となると心配なのが、オリンピック競技への影響です。

 すでに組織委員会ではボート競技の日程を変更しましたが、今後、台風の進路によっては、大幅な予定変更が必要になってくるでしょう。

江戸川臨海アメダスの時系列予報(出典:ウェザーマップ スタッフ加工)
江戸川臨海アメダスの時系列予報(出典:ウェザーマップ スタッフ加工)

 台風が接近すると予想される27日(火)に予定される屋外競技は、朝6時半から始まるトライアスロン(お台場海浜公園)を皮切りに、ビーチバレー(品川区・潮風公園)、セーリング(神奈川県・江の島)、カヌー(江東区・海の森水上競技場)、サーフィン(千葉県・釣ヶ崎海岸)、自転車女子マウンテンバイク(伊豆)、馬術(江東区・海の森)、など東京湾を中心に行われます。

 上の図は、トライアスロンやカヌーが行われる会場に近い、江東区にある江戸川臨海アメダスの時系列予報です。27日(火)午後には雨風ともに強まり、さらに28日(水)には、雨はほぼ止むものの、台風の吹き返しによる、さらに強い風が予想されています。

 なお、図に記載されている風速は、10分間の平均風速ですから、瞬間的には2倍近い強さの風が吹く恐れがあります。平均風速12メートル前後であれば、瞬間的には約25メートル、風に向かって歩けなくなったり転ぶ人も出るほどの強い風が吹く可能性があるというわけです。

 ただし、台風の進路が東京のはるか北を通るか南寄りを通るかによって、予報が大きく変わってくる可能性もあります。

7月25日(日)21時現在の台風進路図 (出典:ウェザーマップ)
7月25日(日)21時現在の台風進路図 (出典:ウェザーマップ)

 もし、進路が南寄りになった場合、これは雨・風、両方が強まり大きな影響が出るでしょう。一方で、北へズレると2016年10号台風以来の東北上陸台風ということにもなりかねません。

 いずれにしても、会場への影響が出るのは必至で26日(月)以降、東北や関東地方の海上では非常に強い風が吹き、27日(火)には大しけとなる見込みです。

7月25日(日)16時55分気象庁発表 雨、風、波の予想

◆27日(火)18時までの24時間に予想される雨量・多い所で

  東北地方   100から200ミリ

  関東甲信地方 100から150ミリ

※その後28日(水)にかけて雨量が更に増えるおそれ

◆27日(火)にかけて予想される最大風速(最大瞬間風速)

  東北地方、関東甲信地方

  20から24メートル(25から35メートル)

◆27日(火)に予想される波の高さ

  東北地方、関東甲信地方 6メートル    (気象庁発表 台風情報より)

初のオリンピックと台風

 今回は太平洋高気圧がちょうど後退する時期に重なっており、その分、進路が北よりになる可能性も出てきましたが、台風のすぐ近くには寒冷渦(上空に寒気を伴った低気圧)もあるため、どちらのコースを辿るのか定まっていません。

 とはいえ、オリンピックへ影響があると想定しておいた方がいいでしょう。

 冬季オリンピックでは強風や吹雪などで、中止や延期になる競技が過去にもありましたが、夏季オリンピックに台風というのは今まで事例がなく(そもそもヨーロッパに台風がありません)、誰もが初めての経験となります。

 オリンピック関係者はもちろんのこと、そうではない方々も警戒が必要なのは言わずもがなです。今後の台風の進路と発達具合に十分な留意をお願いいたします。

※台風に関する記述は執筆時の情報をもとに作成しています。常に最新の予報を参照してください。

<参照>

東京都オリンピック・パラリンピック事務局 東京都ポータルサイト 競技場マップ

東京オリンピック・パラリンピックガイド

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長

1950年名古屋市生まれ。日本気象協会に入り、東海本部、東京本部勤務を経て41歳で独立、フリーのお天気キャスターとなる。1992年、民間気象会社ウェザーマップを設立。テレビやラジオでの気象解説のほか講演活動、執筆などを行っている。天気と社会現象の関わりについて、見聞きしたこと、思うことを述べていきたい。2017年8月『天気のしくみ ―雲のでき方からオーロラの正体まで― 』(共立出版)という本を出版しました。

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