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タマネギは輸入減少と昨年の北海道の不作で高騰 「産地リレー」が順調ならピーク越えの見通しも

森田富士夫物流ジャーナリスト
富良野のタマネギ畑(写真:イメージマート)

 野菜の値段が高騰し、家計を直撃している。なかでもタマネギは高値で推移し4月、5月は通常の2倍以上にまで高騰した。

 この理由は輸入タマネギの減少と国産タマネギの不作が重なったからだ。輸入タマネギの大部分を占める中国産は業務用が中心だが、中国のゼロコロナ政策による上海のロックダウンなどが影響した。また、国産タマネギは全国生産量の約70%を占める北海道の収穫量が、昨年の干ばつで減少したことが価格高騰の大きな要因である。

 ここでは国産タマネギを物流面から見ることにしよう。

 国内のタマネギ生産量のトップは北海道だ。なかでも北見エリアと富良野エリアが道内の2大産地になっている。この北海道に次ぐ2番目の産地は佐賀県で12%弱、3位が兵庫県(淡路島)の8%弱である。生産量首位の北海道と佐賀県や淡路島ではかなりの差がある。さらに4位の長崎県や5位の愛知県になるといずれも2%台といった状況だ。 

 国産タマネギの国内市場へのコンスタントな供給は、北海道、佐賀県、淡路島の3大生産地による「産地リレー」がベースになっている。同じタマネギでも産地の土壌の微妙な違いなどから、産地ごとに特徴があるといわれる。淡路島産や佐賀県産のタマネギはサラダなど生野菜としての消費が多く、北海道産は業務用にも使われているようだ。だが、産地の収穫期のタイムラグから「産地リレー」が上手く機能していれば、異常な価格高騰は招かない。

 「産地リレー」は次のようになっている。まず、最大の生産地である北海道の収穫期は8月中旬から10月の間が最盛期だ。収穫されたタマネギはほとんどが道内の保管施設で一部は冷蔵保存、多くはエチレンガス管理により長期保存される。そして首都圏などの大消費地に向けて、翌年の5月ぐらいまで計画的に出荷する。

 また、佐賀県のタマネギは3月ぐらいから早出しの収穫が始まる。その後、4月、5月、6月の3カ月が収穫のピークとなる。白石地区には貯蔵施設があり、貯蔵して8月ぐらいまで順次出荷する。さらに淡路島のタマネギは5月、6月に収穫し、一部は冷蔵貯蔵して11月から翌年3月まで出荷される。

 日本列島は北東から南西に長いので、このように産地の収穫時期にずれがある。またタマネギは品質を維持しながら貯蔵施設で保管ができる。そこで例年なら、国内3大産地の「産地リレー」によって、年間を通してタマネギがコンスタントに市場に流通するサイクルができていた。

 だが、最大の産地である北海道が昨年6月、7月に干ばつに見舞われた。その影響で不作になったことが今年4月、5月の品不足を招いた。北海道でタマネギの鉄道輸送をしている事業者は、「当社の取扱量が昨年は前年比で30%ほど落ち込んだ」といった状況である。同様に道内で貯蔵する量も減少し、「例年なら5月ぐらいまで出荷されるのに、今年は3月末には在庫が出つくした」という。

 さらにコロナや国際情勢の影響もあり、海外から緊急に手当てすることも難しかったのである。

 では、今後の見通しはどうか。佐賀県でタマネギの鉄道コンテナ輸送をしている事業者は、「苗を植える時期に雨が多かったので、今年3月の早出しは当社に限っていえば取扱量が前年より少なかった」という(オーダーの小ロット化やその他の事情で一部は鉄道輸送からトラック輸送へのシフトもあったようだ)。

 このような理由から4月、5月にはタマネギの供給が減少して小売価格が高騰した。現在は佐賀県や淡路島の収穫が始まったので、例年並みの収穫量になれば高値のピークは越えるものと思われる。だが、最大の産地である北海道の収穫は「6月、7月の天候次第という条件はある。昨年の干ばつのようなことがなければ価格も落ち着くだろう」とみられている。

(タマネギの生産量については複数の統計がある。ここでは北海道産のタマネギの鉄道輸送で約5%のシェアをもつ運送事業者が2019年作物統計調査をもとに独自に作成した数値を参考にした)

物流ジャーナリスト

茨城県常総市(旧水海道市)生まれ 物流分野を専門に取材・執筆・講演などを行う。会員制情報誌『M Report』を1997年から毎月発行。物流業界向け各種媒体(新聞・雑誌・Web)に連載し、著書も多数。日本物流学会会員。

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