リモートワーク増加で事務所スペース縮小 首都圏でトランクルームの法人需要が増加

トランクルーム(屋外型コンテナ収納)(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

 コロナ禍で、在宅勤務という新しい働き方が定着しつつある。在宅勤務ができない業種もあるが、多くの人たちがリモートワークをするようになってきた。このような中で、首都圏などではトランクルームに対する法人需要が増えている。

 一般にトランクルームと言われている中には、寄託契約と賃貸借契約があり、荷物に対する保管責任などが異なる。国土交通省に登録された倉庫業者が寄託契約で荷物を預かっているのがトランクルームで、不動産業者などが賃貸借契約でスペースを貸しているのをレンタル収納スペースという。さらにレンタル収納スペースには、建物の中を簡易間仕切りなどで区切って賃貸する屋内型のレンタル収納と、コンテナによる屋外型のコンテナ収納がある。

 だが、いずれも一般的にはトランクルームと称してかまわない。ここでは一括してトランクルームとしたり、あるいは収納サービスと表記することもある。なお、トランクルームは日本固有の呼び方で、国際的にはセルフ・ストレージという。

 トランクルームには個人と法人の利用がある。在宅勤務の増加で限られた自宅のスペースを有効活用するため、大都市では個人需要が増えているように思われがちだが、取材の結果では巣ごもりなどによる個人ニーズは全国的に少ない。

 一方、在宅勤務者が多い会社では事務所のスペースを縮小したり、狭いフロアーに移転するなどの傾向がみられる。それに伴って、首都圏などの大都市圏ではトランクルームに書類や備品などを預ける法人ニーズが増加している。

トランクルームに対する個人需要は例外的なケースを除くとむしろ後退、コロナで海外勤務期間が延びて預かりの長期化も

 矢野経済研究所が4月8日にプレスリリースした「レンタル収納・コンテナ収納・トランクルーム市場に関する調査」によると、収納サービスの国内市場規模は2019年度が757億5000万円で、2020年度は前年度比2.3%増の774億7000万円(見込み)という。拠点数も年々増加して1万3000カ所を超えるとしている。

 このトランクルーム市場がコロナ禍でどう変化しているか。個人需要から見ると、首都圏や関西圏、中部圏、全国政令指定都市などでも個人需要はあまり増えていないようだ。

 たとえば九州の経済の中心地である福岡でも、「福岡市の中心部以外は住環境がそれほど悪くはないので、巣ごもりなどによる需要が明確な形では現れていない。また、機密書類などの文書保管では個人情報保護法以来、トレンドとして安定的に需要が増加しているが、コロナの影響による需要増は特定できない」(福岡倉庫・富永太郎社長)という。

 それに対して東京の江東区と千葉県船橋市でトランクルーム事業を行っている事業者は、「この間、法人は増えているが個人は増えていない。そのため利用者の比率が以前は個人70%で法人30%だったが、この約1年間に法人が増加したので現在は50%ずつの割合になった」(結城運輸倉庫・結城賢進社長)という。

 全国的に見ても「テレワークや巣ごもりによる個人需要の増加はほとんど確認できない。むしろコロナで収入が減少して個人需要が減っている。だが、企業からの引き合いは昨年春から2倍ぐらいになっている」(押入れ産業経営戦略室・鈴木稔室長)。法人需要の増加で全国的にも利用者の比率が個人は60%から50%に、法人が40%から50%に変化しているという。「大阪や名古屋もほぼ同じような傾向」(同)のようだ。その他、全国各地の事業者に聞いても、地方ではコロナ禍による需要は個人、法人ともない。

 そのような中で約半年前に山形市に開設したトランクルームは特殊なケースだ。「老舗の料亭が廃業した跡地にマンションが建った。その近くに昨年11月にオープンしたが、すでに(4月中旬)43%の稼働率になっている」(ベア・ロジコ・熊澤貞二会長)。1年目で35%、2年目で70%、2年半で85%の稼働率が平均と言われているので、かなりのハイペースである。

 これには理由がある。スマフォで契約する非接触型の契約方法を採り入れたこと。また「山形はコロナの感染者が多く、家族旅行などを自粛し、替わってキャンプなどが増えている。新マンションで生活空間を広く使いたいので購入したアウトドア用品を預けたいというニーズがある」(ベア・ロジコ・熊澤会長)。

 コロナの影響では海外転勤に伴う家財等の預かりで、「コロナで通常の転勤サイクルの2年が1年延長になるなど預かり期間が長期化している」(中部地区の事業者)という。「海外転勤では長期に荷物を預けるため、セキュリティが高くて安心な屋内レンタル収納の利用が多い」(レンタル収納スペース推進協議会=RSA・吉田得生専務理事)。

テナントが撤退したフロアーを簡易間仕切りでレンタル収納スペース化、一方、事務所スペースを縮小し文書や備品等を預ける法人需要が増加

 首都圏などではコロナ禍で収納サービスの供給が増え、同時に法人需要も増加している。「コンテナ収納(屋外型)は地方都市に多かったが、最近は都市部での不動産活用として増えている。レンタル収納(屋内型)はコロナでテナントが撤退したビルのフロアーを簡易間仕切りで区切って参入するケースが増えている」(RSA・吉田専務)。

 首都圏などの土地所有者はコンテナ型なら比較的狭い土地でも簡単に不動産活用ができる。また、ビルのオーナーの場合には、テナントがコロナで撤退した空フロアーを簡易間仕切りの少額投資ですぐに活用できる。そこで不動産業者、土地所有者、ビルオーナーなどが新規参入しているようだ。

 採算は施設が自社物件かそうでないか、自社物件でも償却が終わっているかどうかで違う。自社の施設で償却済みなら稼働率が35%でも採算が取れるが、賃貸では2年目で70%の稼働率が必要という。

 このように収納スペースは「小規模な物流リートで、今後はますます増えてくるだろう。現在はその入口のところにいる」(RSA・吉田専務)。海外企業の日本市場への参入なども含めて、この分野への投資拡大が予想されるという。

 一方、コロナ禍を機に首都圏ではトランクルームへの法人需要が増加している。在宅勤務者の増加で事務所スペースを縮小し、同時に、文書保管などに使っていた部屋をなくすからだ。文書や書類が「段ボール箱で100ケースから200ケースぐらいの企業のニーズが多い」(押入れ産業・鈴木室長)。1000ケースぐらいの規模の企業になると、自社倉庫があったり、自社で管理することができる。だが、それ以下の規模では管理コストをかけられないからだ。

 また、地方都市の支店や営業所などでは、コロナ禍を機に事務所を閉鎖するケースもある。地方都市の出先はほとんどが営業部隊なので、東京や大阪から新幹線で1時間程度の都市では、今後はリモート営業を基本にして対面営業が必要な場合は日帰り出張にする。このような立地条件にある都市では資料などの保管需要が発生している。「法令で定められた期間は保存しなければならない書類などで、本社などに運ぶよりも現地のトランクルームで保管し、法令の期限が来たら事業者に責任を持って廃棄処分にしてもらった方がコスト的に安い」(押入れ産業・鈴木室長)という計算のようだ。