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世界初、スペインが熱波にネーミング 第1号は「ソエ」

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
7月13日、49度を示したセビリアの町の温度計(写真:ロイター/アフロ)

24日(日)、世界で初めて熱波に名前が付けられました。スペインで発生した、その熱波の名前は「ソエ(Zoe)」、命名者は都市セビリアです。

ハリケーンやサイクロン、冬の低気圧や山火事などは人名をつけて呼ばれることが知られています。命名することで、いくつか同時に発生している時に区別がしやすかったり、人の注意を引いて警戒を強めたりすることができるというのが理由のようです。

しかしこれまで、熱波に公式なネーミングが付けられた例はありませんでした。そもそも熱波には決まった定義があるわけでもないうえ、それほど多発するような現象ではなかったことが理由として挙げられるでしょう。

ところがこの度、スペイン南部の都市セビリアが、世界初となる熱波の命名に打って出たのです。セビリア市はアメリカのシンクタンクであるArsht-Rockと共に、着々と準備を積み重ねてきました。

名付けのルール

まず、気温、湿度、前30日間の状態を考慮して熱波を3つのランクに分けます。その中でもっとも深刻度の高いランクの熱波に、スペイン語の人名をつけることにしました。そしてその第1号がとしてつけられたのが、スペイン語で女の子の名前である「ソエ(Zoe)」で、26日(火)まで猛威をふるいました。

7月のセビリアの日最高気温の推移 (筆者作成)
7月のセビリアの日最高気温の推移 (筆者作成)

命名のルールは、名前の頭文字がアルファベットの逆順というものです。「Zoe」の次は、「Yago」(男の人の名前)、次が「Xenia」(女)、その次が「Wenceslao」(男)で、「Vega」(女)と続きます。

命名の狙い

命名の狙いをセビリア当局は、個人や会社、政府などに、熱波のリスクを深刻に受け取ってもらうためだと言っています。従来のように「ものすごく暑くなりますよ」と言うのではなく、「熱波ソエがやってきますよ」と言った方が効果的だと考えているようです。名前が付いたことで人々が耳を傾けたくなって、対策を講じるよう注意を喚起することができると期待しています。

WMOは今のところ慎重姿勢

米カリフォルニア州やギリシャのアテネなども、熱波のネーミングを検討しているようです。

しかしその反面、今の段階では命名に乗り気でないのが、世界気象機関(WMO)です。今のところ追随する予定はないと、きっぱり公言しているのです。

しかし一体なぜなのでしょうか。言い分はこうです。

・ハリケーンなどに有効な手段だからと言って、性質やもたらす影響の異なる熱波に適用して効果があるかは分からない

・熱波は最大10日前に予報することが多いが、もし予報が外れてしまったら、人々の信用を失う

・暑さによって人が亡くなるのは、単に気温が高いというだけではなく、冷房がなかったなどの理由もありうる。ネーミングが付けられていないからと、人々を油断させかねない

とても慎重な姿勢です。

とはいえ、ヨーロッパは2年連続の記録的な熱波に見舞われています。昨年はイタリアで欧州の観測史上最高記録となる48.8度が観測されたほか、今年もイギリスで国内最高気温となる40.3度が記録されるなど、歴史に残る酷暑となっているのです。

様々な懸念はあるものの、新しい方法で市民の生命や安全を守ろうというセビリアの姿勢は、称賛に価すると思います。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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