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"9,400キロ"離れたアラスカでも爆発音 トンガ火山噴火の世界への影響

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
衛星がとらえた噴煙の様子(提供:CIRA/NOAA/ロイター/アフロ)

世界広しといえども、やはり地球は一つに繋がっているのだと感じた出来事でした。

15日(土)、南太平洋のトンガ諸島の海底火山が爆発しました。噴火した「フンガ・トンガ フンガ・ハアパイ火山」は昨年末から噴火を続けており、今回の噴煙は高度19キロにも達したようです。

伝えられているように、トンガ国内の通信インフラが遮断され、現地の様子が分からず、被害の全容もつかめていません。今どのような状況になっているのかが、大変心配されます。

世界各国の"火山津波"の高さ

この噴火で、日本では、急きょ「津波警報」が発令され、鹿児島県奄美市小湊で1.2メートルの津波が観測されました。四国では漁船が転覆し、このニュースは世界のメディアも報じています。

では世界の国々では、どれほどの津波が観測されたのでしょうか。外電や気象局の情報をまとめてみます。

[ペルー]

・北西部のランバイエケ県のビーチで2人が遺体で発見された

・沿岸の多数の建物が浸水被害

[米カリフォルニア州]

・ポートサンルイで1.3mの津波を観測

・サングレゴリオビーチでは釣り人2人が津波にさらわれ、1人が病院に搬送された

・サンフランシスコでは、複数のサーファーが沖合200~300m先で救助された

[オーストラリア]

ノーフォーク島で1.27m、ゴールドコーストでは0.82mの津波を観測

[ニュージーランド]

・グレートバリア島で1.33mの津波を観測

・ツツカカで多数のボートが沈没、マリーナではボートが係留から外れ、船同士が衝突するなど深刻な被害

[ハワイ]

・カウアイ島で0.82mの津波を観測(0.9m以上で津波警報のため津波注意報に留まる)

・沿岸の道路が浸水

・ハワイ島では桟橋が浸水し、高校のカヌー部のカヌーなどが流される

[チリ]

・トンガから10,000キロ離れたチャナラルで、1.74mの津波を観測

・海岸線6,400kmにわたって赤色警報が発令された

[米アラスカ]

・キングコ―ヴで1mの津波を観測

(↑ペルーの様子)

爆音は北米大陸でも

本来、津波は地震で起きるのが一般的で、今回のように火山が原因で起こる津波は珍しいといいます。

過去の火山噴火による津波で最悪の被害を出したのは、1883年のクラカタウ火山で、超巨大な津波が襲い、36,000人が亡くなったといわれています。

クラカタウ火山の噴火は、島の大部分が吹き飛んでしまうほどの歴史的な大噴火でしたが、今回の噴火がそれよりもすごいのではないのかと思われる点があります。それが爆発音の”飛距離”です。

クラカタウ火山では約5,000キロ離れたインド洋のロドリゲス島で爆発音が聞こえたそうですが、今回はトンガから9,366キロも離れたアラスカや、カナダ北部のユーコン州などでも聞かれていたようなのです。

ユーコン州に住む女性は、音はとても大きく、大型トラックが通り過ぎたような感じで、1時間くらい続いたとCBCの取材で証言しています。

反対に、トンガからもっと近いハワイでは爆発音は聞こえなかったようなので、今後の究明が待たれます。

世界の気圧変化

東北大学の今村文彦教授は、NHKのインタビューで、今回の津波は、噴火によって起きた空気の振動(空振)が伝わって水位の高さに変化をもたらした結果ではないかと話されています。

実際、日本では約2hPaの気圧変化、スイスでは2.5hPa、イギリスでも約2hPa、またニュージーランドでもそれより大きな気圧の変化があったと伝えられています。

ある一地点での噴火が、物理的にも世界中に”衝撃”を与えたことに、驚くばかりです。

(↓ニュージーランドの気圧変化)

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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