次々起こる欧州の異変、北極圏グリーランドでは観測史上初めての「雨」
グリーンランドの観測所「サミット・ステーション」では、これまで空から降るものといえば、雪だけでした。というのも、この観測所は北緯72度の北極圏に位置するうえに、高度3,200メートルという山のほぼてっぺんに位置するからです。
しかし今月14日(土)、この寒すぎる観測所に勤める隊員が起床して窓の外を見ると、そこには信じられない光景が広がっていたといいます。なんと雪ではなく雨が降っており、しかもほぼ一日降り続けたのだそうです。
それもそのはず、その日の最高気温は、この時期の平均を18度も上回る0.6度まで上昇し、9時間にわたって気温が0度を超えていたからです。サミット・ステーションで気温が0度を上回ったのは、過去10年の間でも2度しかありませんでした。
このサミット・ステーションでは1989年から有人観測が行われていますが、これまで雨が観測されたことは一度もなかったようです。雨と言えばいたって普通の出来事のように思えますが、この場所では、まるで東京の空にオーロラが現れたような稀有な現象なのです。
この異常高温によって、グリーンランドでは氷床の融解が進み、14日時点の氷の融解面積は、87万平方キロメートルに及んだと言います。これは最大記録ではありませんが、8月中旬という気温が低くなっていくこの時期としては観測史上最大だということです。
低くなり続けるスウェーデンの山
一方、暑さは、スウェーデンの雪山にも異変をもたらしています。
2019年、国内最高峰のケブネカイセ山の南峰が、頂上の雪が解けたことにより標高が下がり、同じくケブネカイセ山の北峰に一位の座を譲り渡したことがあります。その時の、南峰の標高は2096メートルでした。
ところがその標高はさらに見る見るうちに低くなって、グリーランドに雨が降った同じ日には2095メートルと、それから1メートルも下がっていることが分かったようです。この南峰は1990年代には、2,118メートルもあったといいますから、それから30年足らずで20メートル以上も小さくなって、1940年の観測開始以来最低を記録しています。
史上初かもしれない煙の北極到達
つい最近には、シベリアの森林火災の煙が北極に到達し、観測史上初ではないかと騒がれました。NASAは今月7日にロシア・サハ共和国の森林火災の煙が、北に3,000キロ離れた北極に到達したと発表しました。
そのうえで、それは観測史上初と紹介していました。その数日後に、観測史上初かどうかは定かではないと訂正を入れていますが、NASAも翻弄するくらい驚くような事実が次々と起きているようです。
ヨーロッパの観測史上最高気温の可能性
ヨーロッパでは今月11日にも、気象史を揺さぶるような高温が観測されました。イタリア南部シチリア島で48.8度まで気温が上がり、これまでの欧州1位の記録である48.0度(ギリシャ・アテネ、1977年)を抜いて、新たな記録となる可能性が高まっているのです。
2021年は観測史上初の出来事が続々と起きていますが、これらの記録もまた近々塗り替えられてしまうでしょう。