台風19号、米軍の解析で「世界最強の上陸台風」に

19号がフィリピンに上陸した直後の衛星画像 (出典: RAMMB/CIRA)

台風19号が1日(日)、「猛烈」な勢力でフィリピンに上陸し、壊滅的な被害をもたらしました。少なくとも17人が死亡し、直撃を受けたビラックという町では9割の家屋が損壊したと報告されています。

アメリカの解析では「世界最強の上陸台風」

米軍合同台風警報センター(JTWC)の解析では、19号は世界の観測史上最強の勢力での上陸となったようです。記録の残る、どんなハリケーンやサイクロンよりも強い勢力で陸地を直撃したことになります。

上陸時の最大風速(1分平均)は87m/sで、これまで世界最強とされてきた2013年30号と、2016年14号を上回ったと、Yale Climate Connectionsは伝えています。

気象庁の解析

しかし日本の気象庁は、JTWCとは大きく異なる解析をしていました。一体どれだけ違ったのでしょう。

【中心気圧】

まず上陸時の19号の中心気圧に関して、JTWCは884hPa、一方気象庁は905hPaと発表しました。一般に気圧が低いほど風が強く、勢力が強くなります。905hPaでもとんでもなく強い勢力ですが、それよりもさらに21hPaも気圧が低いというのは、とても大きな差と言えます。

【最大風速】

さらに最大風速に関しては、JTWCは87m/s(1分平均)、気象庁は60m/s(10分平均)と解析していました。

風速の基準の時間が異なるので、そのままでは比較できません。そこで気象庁の数値も1分平均に計算し直してみると、68m/sとなります。

つまり、同じ1分平均に直しても差は19m/sと、2つの解析には大きな隔たりがあることが分かります。

なぜ差が出る?

どうしてこんなに解析値が違うのでしょうか。

台風はハリケーンと異なり、航空機が雲の中に突っ込んで実際の風速や気圧を計測しているわけではありません。「ドボラック法」という方法を用いて推測されています。

ドボラック法とは、1970年代にアメリカの気象学者ヴァーノン・ドボラック氏が考案した、気象衛星画像に写る雲のパターンから強度を推定する方法です。

気象庁もJTWCもドボラック法を用いている点では同じですが、その際に使用している換算方法などが違います。台風の強さが異なって解析されることは度々ありますが、今回ほどの差が出たのは非常に珍しいことだと思います。

実際は?

では実際のところ、どちらの解析が近かったのでしょうか。

上陸地点にちょうど気圧計や風速計があれば、実際の数値が測れたでしょうが、生憎そうはいきませんでした。

そこで上陸地点の周囲で観測された風速を見てみると、上陸地点から数十キロ離れたレガスピという都市で観測された最大瞬間風速が45m/sでした。これが今回フィリピンで観測されたもっとも強い風です。

最大瞬間風速とは3秒間の平均風速なので、上の数値と比べるために1分平均に直してみると大体30m/sとなります。

つまり、JTWCが解析した87m/sには程遠いようです。

とはいえ風速計のなかった場所でも、とてつもない暴風が吹いていた可能性も否定できず、気象庁とJTWCのどちらの解析が真実に近かったかは謎のままです。