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米デスバレーで「54.4℃」観測、8月の世界最高気温か

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
華氏130度=摂氏54度(出典National Weather Service)

17日(月)静岡県で、国内史上最高気温1位タイの記録が生まれました。浜松市で観測された41.1℃の気温です。2018年7月に埼玉県熊谷市で観測された気温に並ぶ記録となりました。

一方、「世界一暑い場所」として知られるアメリカ・カリフォルニア州デスバレーでも16日(日)、記録が作られました。日中の最高気温が54.4℃(華氏130度)まで上昇したのです。もしこの記録が公式に認定されれば、8月の世界最高気温記録となるばかりか、とんでもない記録を塗り替えることになります。

現在の世界一の記録

これまでの世界最高気温の記録は、1913年7月に同じくデスバレーで観測された56.7℃です。その次が、またまたデスバレーで2013年7月に観測された54.0℃、そして※2016年7月に記録されたクウェート・ミトリーバの53.9℃が続きます。

つまり今回の54.4℃という記録は、8月としては世界史上最高、また全期間を通しては世界史上2番目の高温と言うことができます。

それだけでもものすごい記録ですが、もしかすると世界1位の記録となる可能性も否定できないのです。

なぜかというと、現在1位である1913年のデスバレーの記録は、その信ぴょう性が疑問視されているためです。

これまでの研究で、この高温は砂嵐に伴うものであり、実際よりも2℃以上高い可能性があると指摘されています。もしこの記録が無効になれば、今回の54.4℃は世界記録となる可能性もあるようです。

デスバレーはなぜそんなに暑いのか?

しかし、以前の記録が無効になったとしても、結局のところ世界一はデスバレーということになります。一体デスバレーは、なぜこれほど暑いのでしょうか。

まずデスバレーは、海抜がマイナス86メートルと、アメリカでもっとも海抜が低く、周囲は高い山で囲まれています。究極な盆地のため、暖かい空気がたまりやすいこと、さらにフェーン現象が起こりやすいことなどが挙げられます。

さらに、年間降水量はたった50ミリと、雨が極端に少ないことも理由の一つです。植物がほとんど育たず、岩や砂の砂漠を形成しており、直射日光によって温まった地面が、そのまま空気を温めるのです。

デスバレーという恐ろしい名前も、1849年にその過酷な高温環境から、多数の探検者が命を落としたことに由来すると言われています。

17日も54℃近い高温が予想されている (出典: National Weather Service)
17日も54℃近い高温が予想されている (出典: National Weather Service)

※訂正しました。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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