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史上初「6日連続34℃超」のイギリス ゲリラ雷雨で通信障害も

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
イギリス南部にかかる活発な雨域 (13日、イギリス気象庁出典)

今週は「酷暑」と「ゲリラ雷雨」が日本列島を襲っていますが、イギリスでも同じような天候が起きています。

前代未聞の最長熱波

イギリス南部では6日連続で最高気温が34℃を超え、1961年以来で最長となりました。

7日(金)には、南部のケントで38.5℃まで気温が上がって、17年ぶりに8月の最高気温記録を更新しました。また同日はヒースロー空港で36.4℃となって、この時期の気温を13℃も上回る暑さとなりました。

混み合うビーチ

酷暑の中、ビーチは涼を求める人々でごった返しました。海水浴場への道も長蛇の渋滞ができて、急きょビーチを閉鎖する対策を行った自治体もあったようです。

(↑先週末の海水浴場の様子)

大雨で脱線事故も

高温と強い日射が原因で、イギリスは連日雷雨に見舞われています。特に11日(火)から12日(水)にかけては、北部で大荒れの天気となりました。

スコットランドでは、洪水や土砂崩れが発生しました。さらに12日(水)朝には、土砂崩れが原因で列車が脱線し、車掌と運転手を含む3人が亡くなるという惨事も起こりました。事故が起きた当時、8月の月間降水量に匹敵する55ミリの雨が24時間で降ったとCNNは伝えています。

インターネットが繋がらない不満

さらに嵐の影響で、インターネットの通信にも障害が起こりました。

スコットランドのエディンバラでは11日(火)、10万人がインターネットに接続できなくなったようです。この事態を受けて、ブリティッシュテレコムは「洪水や雷雨の影響でブロードバンド機器が損傷し、通信障害が生じた。12日(水)には復旧する予定である。」と発表しました。

ところが、その後も完全には復旧できなかったようで、SNS上では不満の声が飛び交っています。コロナ禍でインターネットの需要が高まる中にあって、さぞや不便を強いられていることだろうと気の毒に思います。

日中の暑さ収まるも

イギリスの熱波はいつまで続くのでしょうか。

幸い、13日(木)からは日中の暑さが収まっています。例えば、ロンドンの最高気温は今後20℃台で推移する見込みです。

しかし夜間の気温は、今後数日間は高いままで、寝苦しい日々が続く予想が出ています。

増える熱帯夜

『熱帯夜(Tropical Night)』の気温の定義は、日本では「25℃以上」ですが、普段涼しいイギリスでは「20℃以上」です。

そして今年はすでにイギリスで熱帯夜が4日も起きているようです。

日本同様、近年イギリスでも熱帯夜が増えています。1961年からの30年間では、熱帯夜の日数は年平均1.5日だったものの、1991年からの30年間ではその倍に増えています。

ところで夏の夜と言えば、イギリス人劇作家・シェイクスピアの傑作「夏の夜の夢」を思い出します。しかしイギリスで熱帯夜が増えている昨今、そのタイトルから寝苦しさを連想する人が増えるのではないかと、少し気がかりです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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