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『モンスーン豪雨』でミャンマー翡翠鉱山が崩落、インドは大洪水

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
ミャンマー北部カチン州の翡翠採掘場の様子 (資料画像)

深緑色に輝く「翡翠(ひすい)」は、金よりも珍重された歴史もあるほど美しい宝石です。この翡翠を世界でもっとも産出するのが、ミャンマー北部カチン州のパーカンです。

この世界的な翡翠の鉱山で2日(木)、大規模な土砂崩れが発生しました。泥流に飲み込まれて162人が死亡、また54人が病院に搬送されたと伝えられています。

事故が起きたカチン州はヒマラヤの東端に位置しています。標高5,881メートルのミャンマー最高峰である「カカボラジ山」がそびえ、高地が続いています。そのため過去にもたびたび土砂崩れが発生しているようです。たとえば2015年には、土砂崩れで翡翠の採掘労働者ら113人が亡くなっています。

(↑土砂崩れの瞬間がカメラに収められている)

土砂崩れの原因「モンスーン」

土砂崩れの原因は、大雨が続き地盤が緩んだためと言われています。というのも現在ミャンマーは、モンスーン(雨季)の真っ只中にあるのです。

【モンスーン】

モンスーンとは、元来は「季節」を意味する言葉です。ただ主に「夏に熱帯の海から陸に向かって吹く、南西の季節風」を指すことが多いです。この影響で、大気が不安定となって、毎日のように雷を伴った雨が降ります。ミャンマーの雨季は、6月から10月頃まで続きます。

ミャンマー北部ではおおむね6月上旬にモンスーンが始まります。

ただ今年は、例年よりも1週間ほど早く始まり、すでに豪雨や洪水がたびたび発生しています。今回の土砂崩れの原因ともなった6月下旬からの大雨は、ミャンマー北部のみならず、その周辺の地域でも災害を引き起こしています。

インド気象庁出典のモンスーン開始日の図に筆者加筆 (赤線が2020年、緑船が平年)
インド気象庁出典のモンスーン開始日の図に筆者加筆 (赤線が2020年、緑船が平年)

インドやバングラデシュで洪水

一体どれほどの雨が降ったのでしょうか。

米気象会社Accuweatherは、ヒマラヤ山脈の麓にあるインド北東部チェラプンジで、23日から28日の間に1,969ミリの雨が降ったと伝えています。中には、24時間で600ミリ近い降水があった日もあったようです。

一方、紅茶で有名なインド北東部のアッサム州では川が決壊し、多数の地域で洪水が発生したもようです。少なくとも33人が死亡、130万人に影響が出たと報じられています。

インド北部で降った大量の雨が、川を伝ってバングラデシュに流れ込んでいます。1日(水)には複数の河川が、危険氾濫水位を75センチ以上も上回ったそうです。流域では洪水が発生し、20万人が身動きが取れない状態に陥ったと伝えられています。

世界一の豪雨地帯

今回大雨が降ったミャンマー北部やインド北東部といった地域は、世界的にも雨が多いことで知られています。モンスーンの風がヒマラヤ山脈にぶつかり、大雨をもたらすからです。

中でも、先に紹介したインドのチェラプンジは「世界最大雨量の記録」を持っています。その記録というのは、1860年8月から翌年7月までの12か月間で降った26,461ミリと、1995年6月15~16日の48時間で降った2,493ミリです。

比較までに東京の年間降水量は1,500ミリ、日本一雨の多いとされる屋久島の山でも8,000ミリ程度です。

ただ現在「世界でもっとも雨の多い場所」として登録されているのは、チェラプンジから約40キロ離れたところにあるマウシンラムです。

1994年にチェラプンジから世界一の座を奪ったのですが、この時チェラプンジの住民は憤怒したのだそうです。どんな記録であろうと、2位じゃダメということでしょうか。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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