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ベンガル湾史上最強スーパーサイクロン「アンパン」、まもなく上陸へ

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
サイクロン「アンパン」の18日の衛星画像 (出典: NASA)

※※追記: 日本時間20日(水)21時頃、アンパンはインドの西ベンガル州に上陸しました。

世界でもっとも人が「密」に生活するベンガル湾沿岸に、スーパーサイクロン「アンパン」が接近しています。アンパンは日本時間20日(水)夜にも、インドとバングラデシュの国境付近に上陸する見込みです。

サイクロン「アンパン(※)」がベンガル湾に発生しています。恐ろしさを伝えるには少し可愛らしい名前なのですが、サイクロンの最強クラスである「スーパー」の階級にまで発達しました。

米軍合同台風警報センター(JTWC)によると、アンパンの最大風速(1分平均)は一時75m/sに達し、ベンガル湾の観測史上最強の強さとなりました。これまでもっとも強い記録は、1999年に発生したスーパーサイクロンで、風速は74m/sでした。

現在アンパンは少しずつ勢力を弱め、日本時間19日(火)15時時点の最大風速は57m/sまで下がっています。

今後の予想

インド気象局発表の予想進路図と高潮の予測
インド気象局発表の予想進路図と高潮の予測

インド気象局の予想によると、アンパンは日本時間20日(水)夜にも、インド北東部からバングラデシュの国境付近に上陸する見込みです。

上陸時の勢力は、上から2番目の強さである「エクストリームリー・シビア」か、それより一段階弱い「ベリー・シビア」と予想されています。予想される総降水量は400ミリ、高潮の高さは5メートルです。

ベンガル湾のサイクロンが危険な理由

サイクロン「ボラ」の衛星画像 (出典: NOAA)
サイクロン「ボラ」の衛星画像 (出典: NOAA)

ベンガル湾沿岸では、昔からサイクロンに伴う高潮や高波により、多くの人々が命を落としてきました。

50万人が死亡し、世界最多の犠牲者を出した熱帯低気圧と記録されている1970年の「ボラ」(Bhola)も、ベンガル湾生まれのサイクロンです。

こうしてベンガル湾沿岸で被害が大きくなる理由は、湾の形と人口密度などが挙げられます。

地形

まず、ベンガル湾は北側がすぼんだ形になっているので、サイクロンが北上すると、狭い湾口に海水が吹き寄せられ、海面が高くなりやすいのです。

その上、湾岸は海抜ゼロメートル地帯が広がっています。

世界一の人口密度

また沿岸のインド東部やバングラデシュといった地域は、地球上でもっとも人が密に集まる地域と言っても過言ではありません。

アンパンの進行方向には、1,500万人が住むインドのコルカタや、世界一の過密都市であるバングラデシュのダッカがあります。

さらに、90万人のロヒンギャ難民が生活しているバングラデシュのコックスバザールの難民キャンプにも、風雨が強くなりやすいサイクロンの右半円が通過する可能性が出ています。

このロヒンギャ難民キャンプでは、最近、初の新型コロナウイルスの感染者が出たというニュースがありました。ただですら恐ろしい状況が起きています。

避難・呼びかけの大切さ

2019年サイクロン「フォニ(Fani)」がインド北東部に「エクストリームリー・シビア」の勢力で接近したとき、甚大な被害が心配されました。

結局そのままの強さで上陸をしてしまったのですが、政府が前もって120万人を避難させたり、テレビやメールなどで警戒を呼び掛けたりなど、徹底した事前の呼び掛けを行っていました。

残念ながら72人の方々がインドで亡くなりましたが、救われた命も少なくなかったように思います。

※サイクロンAmphanは、ウンプンやアンファンなど様々な読み方で呼ばれていますが、イギリスBBCはアンパンと呼んでいることから、この名称で統一しました。なお言葉の意味は、タイ語で「」を表すようです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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