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「2週連続で竜巻大発生」の米国から学ぶ、コロナ下の避難で注意すること

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
赤が12日の竜巻報告数 (出典:Storm Prediction Center)

多数の死者が出た、今月12日(日)の竜巻大発生から一週間。アメリカでは再び竜巻が発生し、被害が出ています。

新型コロナウイルスの脅威に震える中での度重なる災害です。人々はどのように避難をしているのでしょうか。

テキサス州などで竜巻大発生

アメリカ南部では、現地時間22日(水)から、多くの竜巻が発生しています。23日(木)にかけての竜巻の報告数は、40に及びます。

中でも被害が大きかったのが、テキサス州とオクラホマ州です。少なくとも6名が死亡したと伝えられています。

テキサス州のオナラスカでは、推定風速62m/sのEF3(竜巻スケールで上から3番目に強い)の竜巻が発生し、甚大な被害が出ました。300軒の家が損壊し、車は吹き飛ばされ、木は根こそぎ倒れています。 テキサス州刑事司法省で働くカップルを含む、3名が亡くなっています。

(アメリカ南部を襲った竜巻の写真↓)

イースター竜巻

アメリカ南部は、一週間前のイースターの日にも竜巻の被害を受けています。その発生数は一日で158個に及び、25名以上が命を落としました。

中でも、もっとも強い竜巻だったのが、ミシシッピ州ソーソーを襲った竜巻です。推定風速は86m/sでEF4(上から2番目に強い)でした。

左下から右上に向かって斜めに伸びる白い線が、竜巻の被害跡(出典: NASA)
左下から右上に向かって斜めに伸びる白い線が、竜巻の被害跡(出典: NASA)

驚くのはサイズで、竜巻の直径は3.6キロに及びました。これは州の観測史上最大、また全米の観測史上3番目に大きな竜巻です。

この竜巻は110キロも移動し、その被害は衛星からも捉えられるほどでした。

竜巻により運ばれたとみられる写真が、なんと280キロ先で発見されています。

アメリカでは今年初めからの竜巻による犠牲者が50人を超え、552人の死者が出た2011年以来、もっとも死者数が多くなっています。

コロナの脅威下での災害

新型コロナウイルスの脅威が深刻化する中での災害に、ある疑問が生まれます。

政府は外出禁止令や人との距離を2メートル以上保つソーシャルディスタンシングを指示していますが、こうした状況で竜巻警報が出た場合、どのように避難したらよいのでしょうか。

アメリカ気象学会は、下記のような提言をしています。

● コロナに避難を妨げられないこと。もし公共の避難所への避難が必要であればそうすること。 

● 避難する際には、マスクの徹底や、他人と距離を取るなど、アメリカ疾病予防管理センターの規定に従うこと。

●災害前の準備として、災害を想定して、もっとも良い避難方法を把握しておくこと。

●自宅に、地下室や窓のない部屋などといった安全な場所がなければ、近所の人や友達、家族と話し合うこと。

●近所に避難所があれば、前もってそこが開放されるのかどうかを調べておくこと。

災害シーズンに備えて

日本は、これから竜巻や台風シーズンに入ります。2012年にはゴールデンウィーク最終日に、茨城県つくば市で国内最大級の竜巻が発生し、大きな被害を出しました。コロナ下において、災害から自分の命をどう守るのか、今から考えおく必要があります。

苦しい時が続いています。どうか健康と安全を第一に考え、皆様お気をつけてお過ごしください。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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