変わる大西洋 元ハリケーン「ロレンゾ」がイギリスなど直撃へ

アメリカ国立ハリケーンセンターが2日発表したロレンゾの予想進路図に筆者加筆

「ヨーロッパ大陸の西に位置する広大な海」から名付けられた「大西洋」は、良くも悪くも欧州の天候に大きな影響を与えます。

現在大西洋には、ハリケーン「ロレンゾ」から変わった温帯低気圧があり、3日(木)夜にアイルランドやイギリスに暴風をもたらす見込みです。

ロレンゾの詳細

ロレンゾは記録的なハリケーンでした。先月23日にアフリカ大陸上で熱帯低気圧として発生し、大西洋のど真ん中で急発達、28日には一時カテゴリー5に達しました。この位置でカテゴリー5のハリケーンが発生するのは前代未聞で、ロレンゾは1851年の観測開始以来、史上最も東さらに北に発生したハリケーンとなりました。

またサイズも大きく、大西洋のハリケーンとしては史上最大級ともいわれています。

ロレンゾは2日(水)、ポルトガル領アゾレス諸島に最接近し、家屋の損壊や洪水など大きな被害を発生させました。

(↑アゾレス諸島の様子)

ハリケーンの宿命

ハリケーンがハリケーンとしての性質を保つには、一般的に海水温が26℃以上であることが必要とされています。それは、ハリケーンは温かい海からの水蒸気をエネルギー源としているためです。

ヨーロッパが大西洋に面しているにもかかわらず、これまでハリケーンの上陸がほとんどなかった(※)のは、海水温が低いことが一因です。欧州南部のイベリア半島沖でも、現在その海水温は21~22℃しかありません。

ロレンゾも北上するにつれハリケーンとしての性質を失い、2日(水)に温帯低気圧へと変わりました。

アイルランド、イギリス直撃へ

この元ハリケーンが、3日(木)夜アイルランドを直撃、その後イギリスを通過する見込みです。

特に心配されるのが強風です。予想される最大瞬間風速は36m/sと、依然ハリケーン並みの暴風が起こるおそれが出ています。

イギリス気象庁発表の天気図に筆者加筆
イギリス気象庁発表の天気図に筆者加筆

近年増える、元ハリケーンの欧州直撃コース

ロレンゾのように、ハリケーンから変わった温帯低気圧がヨーロッパに到達するのは珍しいのでしょうか。

実は、過去にもそうしたハリケーンがしばしば発生しています。

例えば2018年にはハリケーン「レズリー」、2017年には「オフィリア」、さらに2015年には「ケイト」、そして2014年には「ゴンザロ」が、温帯低気圧としてヨーロッパ西部を直撃しています。

専門家によると、温暖化の影響で今後このようなハリケーンが増え2100年までには地中海でハリケーンが発生する可能性があるようなのです。

大西洋の海流への影響

温暖化の影響はハリケーンにとどまらず、大西洋の循環にも影響を与えているようです。

海水温の上昇で氷床が溶け、海水の塩分濃度が下がったことで、大西洋の海水を南北に循環させる海流システムが弱まってきているという研究があります。これがさらに進むと、北半球で極端な気象が増え、欧州では今よりも寒く乾燥した気候になるともいわれているのです。

※2005年ハリケーン「ビンス」から変わった熱帯低気圧がスペインに上陸しています。また1961年には、ハリケーン「デビ―」がアイルランドに上陸した可能性もあります。