Yahoo!ニュース

【サイクロン・ケネス】モザンビーク史上最強の勢力で上陸

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
上陸直前のケネスの衛星写真 (出典元: フランス気象局)

アフリカで死者千人を出したサイクロン・イダイから1ヶ月。再び別のサイクロン・ケネスがモザンビークに上陸しました。上陸時の最大風速は57m/sで、モザンビークの観測史上もっとも強いサイクロンとなりました。

サイクロン・ケネス

現地時間24日夜、サイクロン・ケネスがモザンビーク北部のカボ・デルガード州に上陸しました。上陸直前の中心気圧は940hPa、最大風速は57m/sで、サイクロンの階級では上から2番目に強い「強烈な(Intense)」の勢力でした。

被害の様子はまだ明らかではありませんが、これまでのところモザンビークで3人、コモロ諸島で3人が亡くなったと伝えられています。

ケネスは上陸後急速に弱まり、現在は低気圧となっていますが、週末にかけて雨が降り続くところがあるようです。総降水量はこの地域の年間降水量に匹敵する800ミリに達するおそれが出ています。

3つの記録

ケネスは下の3つの点で記録的なサイクロンとなりました。

モザンビーク史上最強

ケネスはモザンビークにおける観測史上最強サイクロンです。これまでの記録は、2000年2月に南部に上陸したレオンエリーンでした。この時は1ヶ月前からの大雨の影響も重なり、700人が死亡、46万人が家を失ったと記録されています。

初のサイクロンダブル上陸

モザンビークにサイクロン(最大風速33m/s以上)が上陸するのは、平均で9年に1度のことです。

しかし今年は、3月14日にサイクロン・イダイが上陸してから、わずか6週間後にケネスが上陸しました。ひとシーズンに2つ以上のサイクロンが上陸したのは、統計開始以来これが初めてです。

アフリカ史上最北サイクロン

wikiの作図に筆者加筆
wikiの作図に筆者加筆

ケネスはモザンビーク北部の町ペンバ付近に上陸しました。サイクロンがモザンビーク北部に上陸するのは、初めてのことです。

同時にアフリカ史上最北の上陸記録ともなっています。そもそもモザンビーク北部は緯度が低いので、地球の自転の影響が弱く、雲が渦を巻きにくいため、サイクロンの発生が少ないのです。

このようにモザンビークは、約ひと月の間に2つの強烈なサイクロンの直撃を受けたばかりか、ケネスはこれまでサイクロンの直撃を受けたことのない場所に、国家史上最強の勢力で上陸しました。まだ被害の全貌が伝えられていませんが、現在の状況が大変心配されます。

「観測史上最強」の連続発生

昨今、ケネスのような「観測史上最強」のサイクロンや台風を頻繁に耳にするような気がします。

例えば、去年サイパンを直撃した台風26号、同年オマーンに上陸したサイクロン・メクヌ、そして2016年フィジーを直撃したサイクロン・ウィンストンなども、それぞれの地域・国における最強の勢力での上陸でした。

その他にも2015年にはサイクロン・チャパラがイエメンに、続いてハリケーン・パトリシアはメキシコに、それぞれの観測史上最強勢力で上陸しています。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

森さやかの最近の記事