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イタリアで竜巻次々と発生 コンテナ飛び、電車脱線、けが人も

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
赤く塗られた場所が竜巻の発生しやすい地域 (NOAAの画像に筆者加筆)

20日(火)イタリア南部で複数の竜巻が発生しました。けが人が出たほか、コンテナが飛ばされるなどの被害が出たもようです。ヨーロッパの竜巻は弱いものがほとんどですが、過去にはイタリアで欧州史上最強の竜巻が発生しています。

竜巻の発生

20日(火)イタリア南部の複数の都市で竜巻が発生しました。南部のサレルノでは下の動画のような巨大な竜巻が観測され、港のコンテナが飛んだり、建物が損傷するなどの被害が出ました。

20日の地上天気図 (出典元: イギリス気象局)
20日の地上天気図 (出典元: イギリス気象局)

一方タウリザーノでは、別の竜巻により倒木や家屋の損壊が起き、パラビタでも竜巻によって電車が脱線したと伝えられています。さらにクトロでも水上竜巻が目撃されています。

これら複数の竜巻を発生させた原因は、イタリアを通過した寒冷前線とみられます。同じ前線によりイタリアで直径4センチの雹、バルカン半島では24時間で200ミリの雨が観測されています。

竜巻の形の分類

ところで、竜巻の形は大きく分けて下図のように分類できます。

よく見られるのは、上空ほど太くて下層ほど細いアイスコーンのようなタイプです。次に、ひょろひょろ細長くて曲がったりねじれたりする「ロープタイプ」、これを少し太くした「ゾウの鼻タイプ」、さらに上空と地上付近の幅がほとんど変わらない「煙突タイプ」に、幅が高さを上回るような巨大な「くさびタイプ」もあります。

出典元: 「竜巻のふしぎ―地上最強の気象現象を探る―」(共立出版)
出典元: 「竜巻のふしぎ―地上最強の気象現象を探る―」(共立出版)

今回サレルノで発生した竜巻は、ゾウの鼻タイプでしょうか。

こうした形の違いは、空気中の水蒸気量、竜巻の発達段階、風の強さの違いなど様々な条件が影響しています。

ヨーロッパの竜巻

竜巻常襲国といえば、地球全体の年間竜巻発生数の4分の3にあたる1,200個が発生するアメリカが有名ですが、ヨーロッパもしばしば竜巻に見舞われます。その多くは弱いものですが、イタリア、特に北部では時に強大なものが現れることがあります。

例えば2015年7月8日には、ミラでF4(推定風速93~116メートル)の竜巻が発生し、1人が死亡、72人がけがをしたほか、1930年7月24日にはモンテロ近くでF5(推定風速117~141メートル)の竜巻が発生し、23人が死亡しました。これはヨーロッパ史上最大の竜巻とされています。

(↑2015年イタリア・ミラで発生したF4の竜巻)

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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