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イギリス42年ぶりの熱波でも、考古学者が喜ぶ理由

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
イギリス・ウェールズ地方(写真:アフロ)

連日猛暑となっている日本列島ですが、遠く離れたイギリスでも記録的な暑さが続いています。過去42年間で最も長い熱波で「モンスター熱波」などとも呼ばれているようです。農作物の被害や山火事が発生している一方で、考古学者にとっては思いがけない嬉しい出来事が起きています。

記録的熱波

普段は夏でも涼しいロンドンですが、今年の夏は大違いです。下は6月1日から7月中旬までの日最高気温の推移ですが、連日平年よりも暑い状態が続き、30℃を超えるような高温もたびたび発生しています。

ロンドンの日最高気温の推移(筆者作成)
ロンドンの日最高気温の推移(筆者作成)

ウェールズなどでは史上最も暑い6月となり、スコットランドでは観測史上最高気温となる33.2℃(6月28日)を記録しました。またイギリス全土の6月1日から7月16日までの日最高気温の平均は20.9℃で、1976年の21℃に続き、史上2番目に高くなりました。この1976年というのは、未曾有の猛暑となった年でしたが、今年の暑さはそれ以来の最長熱波となっています。

暑さと同時に、深刻な水不足も起きています。6月1日から7月16日までの降水量は47ミリと、統計開始以来最小となりました。マンチェスターなどで大規模な山火事が発生したほか、レタスなどの農作物にも被害が出ています。

(↑干上がったダムや貯水池)

庭の水やり禁止も

これを受けて、イングランド地方の北西部では、8月5日からホースやスプリンクラーを使った庭の水やりや洗車が一斉に禁止される予定です。施行されれば700万世帯に影響し、もし違反をすれば最大1000ポンドの罰金が科せられるということです。

ガーデニング好きのイギリス国民にとって、試練となることは間違いないでしょう。統計では、イギリスの平均的な庭の長さは15メートル、その広大な庭にはおよそ10種類の花々が植えられているそうです。「庭が命」と思う人も大勢いて、国民の3分の1が他人の庭に競争心を抱き、負けないようにせっせと庭いじりに取り組んでいるともいわれています。

ミステリー出現

しかし一方で、この熱波で微笑んでいる人々もいます。イギリス各地で古代や中世の墓、建物、庭、要塞などの跡が、まるであぶり出されたかのように次々と姿を現し「考古学のゴールド・ラッシュ」が起きているのです。

なぜかというと、もともと要塞の周りの溝であったところは、他の場所よりも地下水が豊富で栄養があり、背が高く、青々とした植物が育ちやすい一方で、城壁などがあったところは、周囲よりも土壌が乾いて栄養が少ないために、背が低く、植物が茶色になりやすいそうなのです。

普段は一面同じような植生に囲まれていて何も見えなくても、いざ熱波や小雨が続くと、その植生の差が際立って見え、遺跡が見えるようになるのです。

考古学者はこの機会を逃すまいと、自ら飛行機で視察に行ったり、ドローンを飛ばしたりして、雨が降る前にたくさんの記録を収めようと大忙しなのだそうです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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