不気味に大きな目を持つ台風5号 その正体は『環状台風』か

2日の台風5号の赤外画像(NOAA/RAMMB)

ぽっかり空いたドーナツ状の穴

台風5号の衛星写真をみると、かなり大きな目があるのがわかります。その形はまるでドーナツかちくわのよう。

目の大きさも関係して、台風の中心には、大きな雨のないエリアができています(↓)。仮に九州南部に5号が上陸したとして、この雨域を当ててみると、鹿児島県がすっぽりと包まれるほどの大きさであることがわかります。

気象庁、4日夕方のレーダー。同じ雨域を九州南部に重ねてみた(赤い部分)
気象庁、4日夕方のレーダー。同じ雨域を九州南部に重ねてみた(赤い部分)

目が大きいのに強い『環状台風』

一般的に、台風の目は小さくて明瞭であればあるほど、強いとされます。それは、中心気圧が低いほど、強力な掃除機のように雲を中心に吸い込むからです。逆に目が大きくなるということは、台風が弱まってきたことの証しです。

しかし5号は、最盛期の「非常に強い」勢力の時からずっと大きな目を保持していました。

では、こうした、強いのに目の大きい台風は過去にも発生していたのでしょうか。

環状台風の特徴

この動画の雲画像は、2000年中国に上陸した台風17号(国際名:Jelawat)のものです。目の大きさは一時、直径170キロにも及びました。台風の目の平均のサイズは約50キロです。このように通常よりも目が大きく、全体的に左右対称の円形をしている台風は「環状台風(annular typhoon)」と呼ばれています。

環状台風の特色

こうした台風には、下記のような共通した特徴があるようです。

・ 一般に風速が50メートルを超えるような、勢力の強い台風に多い。

・ 急速に発達する。

・ 長い間強い勢力を保ち、衰えるのもゆっくり。

・ 北緯20度から30度の、海水温が26度から29度くらいの海域で発生する。

こうした特徴からも、今回の5号は環状台風ではないかと考えられるのです。

過去の環状台風

Kekuan Chu&Zhe-Min Tan氏の論文によると、1990年から2009年の間に発生した環状台風は12個で、全体の4%の確率で発生しているといいます。つまり、一年に一つのペースで発生しているのです。

下のリストはその12個の台風ですが、このうち2004年の台風22号(Ma-On)は東海地方に上陸後、関東地方を縦断、広く列島に大きな被害をもたらしました。静岡県の石廊崎では67.6m/sの最大瞬間風速が観測されたほか、渋谷駅前は冠水、また鶴岡八幡宮の大イチョウが倒壊しました。

Kekuan Chu and Zhe-Min Tan論文より
Kekuan Chu and Zhe-Min Tan論文より

5号の今後の動き

環状台風の特徴にもあるように、5号は今後も強い勢力を保ったまま奄美地方に接近します。進行速度が遅いため、長時間影響が続き、猛烈なしけや風、記録的な大雨になる恐れがあります。また6日(日)夜には九州に接近する見込みです。九州北部豪雨の被災地や大地震のあった熊本などでは特に土砂災害が起きやすい状態となっているので、さらなる被害が心配されます。(最新の進路予想はこちらをご覧ください)

*参考文献*

論文:Annular Typhoons in the Western North Pacific

Kekuan Chu and Zhe-Min Tan著