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「山田対浅野」投打の大会ナンバーワンが激突! 夏の甲子園は準々決勝へ

森本栄浩毎日放送アナウンサー
3大会連続で8強入りした近江は、山田が高松商の浅野と真っ向勝負する(筆者撮影)

 夏の甲子園は8強が決まった。優勝候補筆頭の大阪桐蔭は、二松学舎大付(東東京)に攻守で粘られたが、川原嗣貴(3年)が完封して4-0で勝った。3回戦は初日の15日が予想通りの激戦続きで、準々決勝も1、2試合目は特に熱戦が期待される。

準々決勝(※は2回戦からの登場チーム)

 愛工大名電(愛知)-※仙台育英(宮城)

 ※高松商(香川)-近江(滋賀)

 大阪桐蔭-※下関国際(山口)

 聖光学院(福島)-※九州学院(熊本)

4カード全てが「3勝組対2勝組」

 ここからは休養日を挟むため、この準々決勝もフリー抽選でいいような気はする。特に今回からは準々決勝前に休養日が入り、3回戦初日に勝ったチームは中2日での試合になる。4カード全てが、8強まで3勝と同2勝の対戦になった。消耗の激しい真夏に、1試合少ないのはかなりのアドバンテージになるが、結果やいかに。

試合結果に直結する強打と鉄腕の対決

 試合もさることながら、個人の対戦で最も注目されるのが、第2試合。高松商の最強スラッガー・浅野翔吾(3年=主将)と近江の鉄腕・山田陽翔(3年・主将=タイトル写真)の真っ向勝負だ。両者は昨夏も経験していて大会前から評判は高かったが、試合を重ねて投打のナンバーワン選手であることを証明した。もちろん、山田が浅野をどう抑えるか、浅野が山田をどう打つかが勝敗そのものに直結することは言うまでもない。

全打席出塁めざす出塁率8割の浅野

 浅野は佐久長聖(長野)との初戦で2打席連続アーチを放っていて、特に右中間に運んだ1本目はファンの度肝を抜いた。2-1とリードしてはいたが、浅野の2発で試合は高松商の一方的なものになった。スラッガーだが1番を打つ。高校通算66本塁打の長打力ばかりがクローズアップされるが、本人は「全打席出塁」をめざしていると言う。50メートルを5秒9という俊足の持ち主でもあり、今大会2試合で6打数4安打4四死球の出塁率8割。攻撃の起点にもなっている。

今季の高校ナンバーワン選手山田

 一方の最速149キロを誇る山田は、昨夏から3大会連続の甲子園で通算10勝に到達。奪三振数でもトップ10入りするなど、高校球史に残る活躍を見せている。今大会全選手中最速タイの148キロを何度もマークするなど好調を維持していて、特に直球と同じ軌道で鋭く変化するカットボール、スプリット、ツーシームは、並みの高校生ではまず打てない。バットでも2年連続アーチを放っていて、今季の高校ナンバーワン選手に異論を差しはさむ余地はない。

開会式で交流した山田と浅野

 山田は「三振を取るのは難しいと思うが、浅野君を抑えると(チームが)勢いに乗ることはない。長打を許さないようにしたい」と意気込みを語った。2日間の休養はありがたかったようで、「宿舎でもよく寝られているし、体もまだ余裕がある。3回戦前はノースローだったが、(試合前日は)キャッチボールをするかもしれない」と調整もバッチリのようだ。普段からSNSで交流があるという浅野とは開会式で言葉を交わしたそうで、「野球が好きなんだろうなと思った」と印象を語っていた。

今大会のハイライトになる投打の対決

 まずは第1打席に注目が集まる。山田は過去3試合とも早い回に失点していて、立ち上がりに球が浮く傾向があった。山田は以前から朝の試合を苦手としているが、準々決勝では初めて、午前開始となる。最初の勝負で打たれると、流れを一気に持っていかれる危険性があり、細心の注意が必要だろう。山田は「しっかり試合をつくり、後半まで粘りの投球をしたい」と話すが、プレーボールからいきなり試合が大きく動く可能性がある。高校ナンバーワンの投打の対決は、今大会のハイライトになるだろう。

仙台育英投手陣に打線好調の名電

 第1試合は、仙台育英の投手陣が、打線好調の名電をいかにかわしていくか。エース左腕・古川翼(3年)の状態がやや気になるので、須江航監督(39)の起用順や交代機などがポイントになりそう。名電はエース・有馬伽久(3年=主将)が復調した。4番・山田空暉(3年)らが援護して、前半で主導権を握りたい。

大阪桐蔭は序盤から攻勢かけるか

 第3試合は、大阪桐蔭に下関国際投手陣が挑む。左腕・古賀康誠(3年)がうまくタイミングを外し、速球が武器の右腕・仲井慎(3年)にいい形でつなぎたい。3回戦で川原の快投があった大阪桐蔭は、エース・前田悠伍(2年)が満を持しての先発となるか。3回戦では中盤以降、打線がやや湿っていたので、立ち上がりから攻勢をかけるだろう。

聖光、九学は初の4強入り懸ける

 第4試合は、投手陣万全の聖光学院が、好調の九州学院打線を抑えられるか。聖光はエース・佐山未来(3年)が試合ごとに調子を上げ、左腕の小林剛介(3年)も計算できる。九州学院打線は、3回戦で先制打を放った4番・村上慶太(3年)を始め、バットがよく振れている。エース・直江新(2年)も3回戦の完封で自信をつけたはず。しっかり守って、接戦を勝ち抜きたい。両校とも、勝てば春夏通じて初の4強入りとなる。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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