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ついに根尾が投手に! 大阪桐蔭最強世代の「現在地」は?

森本栄浩毎日放送アナウンサー
ドラフト指名された左から柿木、根尾、藤原、横川の各選手(18年10月、筆者撮影)

 プロ4年目を迎えた中日の根尾昂(22)が、リーグ戦再開を機に投手登録されるという報道があった。抜群のセンスで内外野を守れ、球界を代表する野手になるとの期待を受けた逸材は、いまだレギュラーをつかめず、甲子園で輝きを放ったマウンドに活躍の場を求めることになるのか。そして根尾と同じく、4年前の10月25日のドラフト会議でプロから指名された大阪桐蔭のチームメイトたち(タイトル写真)も、苦しい日々を過ごしている。

春夏連覇の最強プラチナ世代

 長年の取材活動の中で、大阪桐蔭の2017年からの2年間が最も試合を見た。17年センバツは履正社との大阪決戦を制して優勝。翌18年は史上初の2度目の春夏連覇を達成した。毎年、逸材が揃う同校にあっても、最強だった18年卒業組は「プラチナ世代」と呼ばれ、もてはやされたものだ。しかし入団から4年が経過しても、チームの中心選手になった者はいない。彼らの『現在地』とは?

投打とも1位級だった根尾

 岐阜県出身の根尾は入学早々から頭角を現し、1年秋から主力になった。投手兼遊撃手(外野も)で、打者としては3年夏の甲子園で3本塁打を放つなど、甲子園通算70打数26安打3本塁打。打率は.371を誇る。

逸材揃いのメンバーの中でも、根尾の信頼度は別格だった。1軍マウンドでは2試合で2安打無失点。変化球のキレが戻れば、十分にやれる。(筆者撮影)
逸材揃いのメンバーの中でも、根尾の信頼度は別格だった。1軍マウンドでは2試合で2安打無失点。変化球のキレが戻れば、十分にやれる。(筆者撮影)

 投手としては計7試合に登板し、5勝0敗で防御率は1.93。最速150キロの直球とキレのいいスライダーで42回を投げて41三振を奪った。いずれの数字もドラフト1位にふさわしい。甲子園の懸かった大阪大会や近畿大会でも大事な場面を必ず任されるほど西谷浩一監督(52)から信頼されていた。学業成績もトップで自己規律にも優れ、指導者からも同輩からも「根尾さん」と呼ばれていたが、それは尊敬の表れにほかならない。

昨季、満塁弾も打撃不振で投手専念?

 1位で4球団競合の末、中日が射止め、名古屋の放送局関係者が小躍りした姿が思い出される。プロでは野手専念で、遊撃を主戦場にしたが、攻守でプロの壁にぶつかった。3年目の昨季は5月にプロ1号となる満塁弾を放ったが、打率は2割を切った。今季も26試合でわずか8安打。5月21日の広島戦での投手デビューが話題になり、交流戦のオリックス戦(29日)でも1回を無失点に抑えた。最速150キロは高校時代と同じで、投手専念となれば能力が開花する可能性もある。球団の「迷走」は困ったものだが、将来、先発陣に加われれば「二刀流」としても注目されるだろう。筆者は、甲子園の成績が示す通り、投手としても1位級の実力だと思っている。

根尾を上回る活躍だった柿木

 その根尾を高校時代には凌駕していた日本ハム・柿木蓮(21)が、ようやく1軍初登板を果たした。4人の中では最後の1軍デビューになるが、甲子園でのインパクトは決して引けをとらない。

典型的なパワー投手の柿木。甲子園では2年夏の仙台育英(宮城)戦で9回2死から逆転サヨナラ負けし、号泣していた。3年夏はリベンジし、優勝投手に。(筆者撮影)
典型的なパワー投手の柿木。甲子園では2年夏の仙台育英(宮城)戦で9回2死から逆転サヨナラ負けし、号泣していた。3年夏はリベンジし、優勝投手に。(筆者撮影)

 3年夏の甲子園では準決勝、決勝で完投勝利を挙げるなど、通算5勝1敗。62回1/3を投げて67三振を奪い、防御率も0.86と驚異的な数字を残した。最速151キロの直球だけでなく、スライダーやフォーク、カーブも投げる。出身地の佐賀では中学時代から注目され、大阪桐蔭でもエースに成長した。いかにも投手らしい勝気な性格で、投球スタイルも正攻法。5位指名には納得いかないようで、会見でも冴えない表情をしていたのが印象に残っている。

新庄ビッグボスに見出される

 プロ入りしてからは持ち前の球威が落ち、柿木らしさが影を潜めていた。今季もたまたまGAORAのファーム中継で見たが、速球がシュート回転して甘くなり、ことごとく痛打されていた。球速は140キロ台中盤だったが、高校時代を知る者からすれば、本来の姿にはほど遠い。しかし、新庄ビッグボスの眼力はさすがだった。真っすぐに着目したビッグボスの鶴の一声でチャンスをもらった柿木は、11日の中日戦で最速150キロをマーク。2打者のバットをへし折る球威で三者凡退に抑えた。大舞台での強さは柿木ならでは。武器になる変化球が加われば、さらに投球の幅も広がるはずだ。いい監督とのめぐり会いに感謝し、真価を問われる次回登板で自信を深めてもらいたい。

ポテンシャルの高い横川

 名門・巨人から4位指名を受けた横川凱(21)は、今季の初登板となった5月29日の日本ハム戦で4回途中7安打5失点と振るわず、負け投手となった。横川は甲子園実績では他の3人の足元にも及ばないが、190センチの大型左腕というポテンシャル(潜在能力)の高さを評価され、柿木を上回る順位での指名となった。

横川は甲子園での成績は平凡でも、ポテンシャルの高さは無限大。毎年、チャンスをもらっているが結果を残せていない。大器晩成か!(筆者撮影)
横川は甲子園での成績は平凡でも、ポテンシャルの高さは無限大。毎年、チャンスをもらっているが結果を残せていない。大器晩成か!(筆者撮影)

 甲子園では計4試合に登板して、3年夏の高岡商(富山)戦の1勝のみ(0敗)。防御率は5.23と平凡だが、10回1/3で15奪三振は、並みの投手の数字ではない。穏やかな性格も柿木とは対照的だが、「将来はメジャーに行きたい」と高校時代から志は高い。現在の同校エース・前田悠伍(2年)は、滋賀・湖北ボーイズの後輩に当たる。

2年目に初勝利のチャンスも

 巨人では杉内俊哉コーチの好指導もあって、徐々に才能が開花。2年目の一昨年11月8日のヤクルト戦では5回を1失点と好投し、プロ初勝利の権利も手にしたが、後続投手が打たれて、千載一遇のチャンスを逃した。昨季も惜しい試合はあったが、初勝利はお預けのままで、前述した今季の初登板時は調子落ちが明らかだった。ドラフトの際、恩師の西谷監督が「まだまだ本格化するには時間がかかると思う」と話したように、先は長い。チーム事情でオフには育成降格を味わいながら、4か月で支配下を取り返すなど、本人の頑張りは球団も認めている。

俊足と長打力の藤原

 4人の中では最も早く1軍デビューしたロッテの藤原恭大(22)も、手にしかけたレギュラーの座を取り返そうと必死でもがいている。4人で唯一、地元・大阪出身の藤原は50メートル5秒7という規格外の俊足に、強肩強打を誇り、1年秋から1番打者としてチームを牽引した。

藤原は三拍子揃った野手として、早くから注目されてきた。個人的には3年時に4番を打って打撃が崩れた印象で、プロでは1番打者として大成してほしいと思っている。(筆者撮影)
藤原は三拍子揃った野手として、早くから注目されてきた。個人的には3年時に4番を打って打撃が崩れた印象で、プロでは1番打者として大成してほしいと思っている。(筆者撮影)

 2年センバツ決勝の履正社戦では先頭打者弾を含む2アーチ。3年時は4番として無類の長打力を発揮し、甲子園通算5本塁打。中軸になって振りが大きくなり三振が増えた印象で、やはり長打もある1番打者として、塁上からバッテリーにプレッシャーをかける役割が向いているように思った。

昨季、月間MVPも今季は打撃不振

 3球団が1位入札し、抽選運のいいロッテへの入団が決まった藤原は、1年目のキャンプから1軍帯同で、開幕戦に1番中堅でスタメン出場し、プロ初安打も放っている。昨年は7、8月度の月間MVPにも選ばれるなど、チームの躍進に貢献したが、死球禍から精彩を欠いたのは残念としか言いようがない。それでも自慢の快速には磨きがかかり、4年間で17盗塁(失敗3)。今季は打率1割台と低迷し、調整期間が長くなっているが、盗塁は6回全て成功し面目は保っている。ロッテは育成方針が明確で、若い選手には無理をさせず、力を発揮できる状態で公式戦に臨ませる。バットに確実性が増せば、レギュラーは約束されている。

立教・山田も指名か?

 今秋、当時の中軸打者で、立教大で1年から4番を打つ山田健太(4年=主将)が上位指名されそうだ。春夏連覇を果たしたチームメイトも、プロに進めばライバルとなる。彼らが指名された日、代表インタビューを仰せつかった。それぞれの決意に満ちた表情を、頼もしく見つめていたことを思い出す。甲子園に劣らぬ熱気の中で、彼ら同士が対決する日を楽しみに待っている。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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