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報徳復活! 近江と智弁和歌山は貫禄! 近畿で春の王者が続々と決まる

森本栄浩毎日放送アナウンサー
春の近畿府県大会も終盤戦。センバツ準Vの近江や報徳などが勝ち上がった(筆者撮影)

 春の公式戦は甲子園に直接結びつく大会ではないので、注目度は高くない。しかし当事者にとっては決して軽視はできない。甲子園につながる夏の大会のシードが懸かっているからだ。シード落ちすると、強豪との早期対戦や試合数増加などのハンディを背負うことになる。連戦を強いられる夏の大会は、1試合でも少ない方がいいに決まっている。

大阪も昨夏からシード導入

 全国で唯一、シード制を採っていなかった大阪も昨年から導入し、春の府大会16強がシードされる。2回戦からの登場が確約されることに加え、序盤戦でのいわゆる「つぶし合い」がなくなり、中盤戦以降、ハイレベルな試合が多くなるはず。出場校の多い地区はシード校も増えるが、大阪や兵庫では再抽選が行われている。近畿で最も出場校が少ない和歌山も、準決勝で再抽選だったはずだ。逆に言えば、有力校でシードを逃したチームは「ノーシード爆弾」と呼ばれ、早期に当たる強豪校にとっては脅威になる。近畿各府県のここまでの情勢を紹介したい。

報徳はエース左腕が「二刀流」の活躍

 7日の土曜日には、兵庫と滋賀で決勝が行われた。兵庫はセンバツ出場の東洋大姫路報徳学園が決勝で当たる注目の名門対決が実現。試合は予想通りの投手戦となり、報徳学園がエース左腕・榊原七斗(3年=タイトル写真)の好投で東洋大姫路を完封(スコアは2-0)した。榊原は打っても先制打を放つ「二刀流」の大活躍。初戦で取材した際、「将来は投手?野手?」と尋ねると、「野手です」と即答した。思わず「それはもったいない」と返したが、本格派左腕にありがちな制球の不安や立ち上がりのもたつきもない。チェンジアップやスライダーの精度も高く、当日「143キロ」と話していた最高球速も「144キロ」に伸ばした。間違いなく近畿でもトップクラスの左腕だ。姫路に近い高砂市の自宅から遠距離通学する頑張り屋でもある。この復活劇が4年ぶりの夏の甲子園出場へつながるか。3位は秋の優勝校・で、4位は滝川二だった。

近江・山田は「前言撤回」で完投勝ち

 滋賀はセンバツ準優勝の近江立命館守山に5-1で快勝して、貫禄の優勝を果たした。注目の山田陽翔(3年=主将)は先月中旬の初戦勝利後、「野手専念」を口にしていたが、準決勝の綾羽戦に先発。この日は、自己最速にあと4キロと迫る144キロを計測したようで、センバツ激闘による疲れを感じさせなかった。センバツ時「故障したらチームに迷惑がかかるので、体のケアを第一に考えている」と話し、『前言撤回』で登板したからには、よほど状態がいいのだろう。また、左腕・星野世那や長身右腕の小島一哲(いずれも3年)らがそれぞれに成長した姿を見せ、多賀章仁監督(62)を安心させた。大会を通して危ない場面は皆無で、近畿大会でも山田に頼ることなく勝てれば、目標の日本一にも手が届く。綾羽が3位で彦根総合が4位。実力校の滋賀学園は綾羽に競り負け、ノーシードで夏の大会を迎える。

智弁和歌山と市和歌山は駆け引きも

 和歌山では、センバツ8強の市和歌山と、昨夏甲子園覇者の智弁和歌山が準決勝で対戦。智弁和歌山が4-2で勝った。智弁和歌山が、武元一輝塩路柊季(いずれも3年)の豪華リレーを見せたのに対し、市和歌山は最速149キロ右腕の米田天翼(3年)を温存した。米田は3位決定戦でセンバツ後、初めて先発登板し、日高を完封して存在感を見せつけたが、夏の本番に向けて虚々実々の駆け引きも面白い。8日の決勝では智弁和歌山が4-3で和歌山商を破って、2年連続で春の県大会優勝を決めた。ホスト県の和歌山からは3校が近畿大会に出場するが、センバツ出場の和歌山東は日高に準々決勝で敗れ、夏のシード権を逃している。

京都国際はコロナ後遺症で敗退

 京都は、直前のコロナ禍でセンバツ出場を辞退した京都国際が、準々決勝で公立の西城陽に敗れる(スコアは2-3)波乱があった。エース・森下瑠大(3年)をマウンドへ送ることなく姿を消したが、小牧憲継監督(38)によると、コロナの後遺症は尋常ではなく、まだ体力が回復していない選手もかなりいるとか。とりあえずシード権は確保しているため、まずは万全の状態で夏の大会を迎えられるかが最大のポイントになるだろう。準決勝は、西城陽-福知山成美、古豪同士の龍谷大平安東山に決まった。平安と東山は激戦ゾーンを勝ち抜いていて、勝負強さを発揮している。

奈良では智弁学園が敗れ、シード落ち

 奈良でも波乱があり、昨夏甲子園準優勝の智弁学園が、甲子園未経験の公立・生駒に5-6で競り負け、3回戦で姿を消した。智弁の夏のシード落ちが決まった一方で、「2強」の一角・天理は順調に勝ち進み、奈良大付と決勝で対戦することになった。準決勝で天理は古豪の御所実と対戦。主砲・内藤大翔(3年)の本塁打などで9-7の乱戦をモノにした。奈良大付は初戦から僅差勝ちの連続だったが、畝傍との準決勝ではコールド勝ち。「2強」を追う一番手の座は揺るぎない。生駒、畝傍のほかに郡山奈良桜井も健闘していて、例年よりも各校の力は接近している。天理もセンバツでは初戦敗退を喫していて絶対的な力があるわけではなく、夏は混戦になりそうだ。

大阪はようやく8強決まる

 進行が遅れていた大阪はようやく8強が決まり、今週末から4日間で一気にファイナルへ向かう。準々決勝の組み合わせは以下の通り。

A 大体大浪商大阪桐蔭

B 初芝立命館上宮

C 東海大大阪仰星東大阪大柏原

D 履正社大商大堺

準決勝はA-B、C-D。

大阪桐蔭は苦戦の末、公式戦24連勝

 大阪桐蔭は5回戦で当たった大阪電通大付の好投手・的場吏玖(3年)の前に打線が振るわず苦戦。センバツ優勝の瞬間、マウンドにいた川原嗣貴(3年)が完投し4-1で勝ったが、公式戦24連勝目は手放しでは喜べない。的場は動画で見たが、長身から角度のある球とタテの大きな変化球で好投していた。夏の大阪でも注目投手になるだろう。ライバル・履正社も準々決勝では苦戦が予想される。相手の大商大堺は、5回戦でセンバツ8強の金光大阪にコールド勝ちした。大阪桐蔭を追う一番手としては、決勝まで負けられない。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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