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大阪桐蔭、エース温存で完勝発進! 待ち受ける過密日程との戦い

森本栄浩毎日放送アナウンサー
1回戦最後に登場した大阪桐蔭は、打線が苦しみながらも鳴門を破った(筆者撮影)

 センバツはようやく1回戦の最後に優勝候補筆頭の大阪桐蔭が登場。鳴門(徳島)の好左腕・冨田遼弥(3年)の前に打線が振るわず苦戦。しかし先発右腕の川原嗣貴(3年=タイトル写真)が1失点の完投を演じ、エース・前田悠伍(2年)をマウンドへ送ることなく3-1で初戦を突破した。

昨夏泣いた川原が立ち上がりから全開

 川原は昨夏の甲子園、近江(滋賀)との2回戦で終盤に救援したが決勝点を奪われ敗退。当時のエース・松浦慶斗(日本ハム)の肩に顔を埋めて泣いた。秋も目を見張るような活躍を見せられず、前田に助けられてばかり。しかしこの日は見違えるほどの投球内容で見事に投げ切り、西谷浩一監督(52)の期待に応えた。西谷監督は「そろっと入る悪い癖がある」と川原を評していた。「そろっと」は関西弁の、「手加減して」の意で、目いっぱいの対義語。川原は立ち上がりから全開で、140キロを超える速球を投げ込み、3回まで鳴門を1安打に抑える。すると打線が早い回からしっかり援護した。

渾身の力でリードを守り切る

 3回裏、先頭の8番・鈴木塁(3年)の内野安打を足掛かりに好機を迎えると、2番・谷口勇人(3年)、4番・海老根優大(3年)の適時打で2点を先制。川原も6回まで散発3安打に抑えて終盤に入った。しかし7回、鳴門は2死から下位打線が3連打を川原に浴びせ、1点差と迫る。ブルペンでは前田が臨戦態勢で戦況を見つめていたが、川原は渾身の力で後続を断ってリードを守り切った。秋の状態なら、1点差になった時点で、西谷監督も前田への交代を決断していただろう。

「一番いい準備」と西谷監督

 大阪桐蔭は8回に7番・星子天真(3年=主将)のスクイズで突き放すと、川原は終盤2回をパーフェクト投球。最後の打者を三振に仕留めると大きなガッツポーズで喜びを爆発させた。筆者の代表インタビューでは「先発を言われた時から今日は一人で(投げ切る)。9回は全ての力を出し切ろうと思っていた。次の試合に向けて弾みがついたと思う」と胸を張った。秋までは気持ちや人間性の面での甘さが投球にも出ていたと自身を分析し「冬はゴミ拾いだったり、生活面から見直した」と振り返ったが、西谷監督も「(川原は)一番いい準備をしていたし、マウンドでも視野が広くなった」と成長を認めた。

過密日程に前田の状態は?

 しかしこれからは過密日程が待ち受ける。中1日で2回戦(対広島商)があり、準々決勝は翌日で連戦となる。土曜日が雨予報で仮に順延となれば、決勝前の休養日が消滅し、5日間で4試合という強行軍の可能性も出てきた。この日登板のなかった前田は試合前から準備していたが、ブルペンでの様子を見る限り、やや球にばらつきがあった。前田の状態については「企業秘密」であり知る由もないが、指揮官が起用をためらってはいないか。もし前田が万全でないなら、投手陣のやりくりは根本から見直しを迫られる。川原の好投は控え投手の刺激にはなるだろうが、早く前田の状態を確かめたいところだ。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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