Yahoo!ニュース

センバツ出場校決定! 波乱の選考会を徹底検証する

森本栄浩毎日放送アナウンサー
センバツ出場32校が決定した。その選考過程を検証する(一昨年の選考会=筆者撮影)

 第94回センバツの選考会が行われ、出場32校が決まった。焦点の3地区もさることながら、東海では地区準優勝の聖隷クリストファー(静岡)を、同4強の大垣日大(岐阜)が逆転する波乱があった。

二松学舎大付にチームの和と勢い

 北から順に一般選考の選出校が読み上げられた。焦点の一つだった関東・東京の「抱き合わせ枠」は、東京大会準優勝の二松学舎大付が入った。東海大相模(神奈川)との比較について、地区別小委員長の井上明氏は「相模はいい選手を揃え、投手層も厚いが、不安定さがある。対して二松学舎は、チームの和、チーム全体で勝負できていて、勢いで上回る」と説明。5年ぶりの東京2校となった。東京大会決勝で9回2死までリードしていた内容から、この試合内容で選ばれなければこの枠は「事実上、関東のための枠」とも言えるくらいだったので、まずは順当な結果だろう。

最大の波乱!意外な聖隷の落選

 そして大きな波乱となったのが東海だ。35年ぶりに静岡勢同士の決勝となり、県、東海と日大三島に連敗した聖隷クリストファーが落選した。これはかなり意外な結果。逆転した大垣日大は、優勝候補の享栄(愛知)を破っていたが、日大三島には序盤から投手陣が崩れて押し切られ、準決勝で姿を消していた。小委員会の鬼嶋一司委員長は「かなり意見は割れたが、『投打に大垣日大が勝る。東海地区の代表として、より甲子園で勝てる』という客観的判断。静岡2校は考慮していない」と説明した。春夏通じて初の甲子園確実と思われた聖隷の選手たちの落胆は、いかばかりかと察する。この悔しさをバネに、夏の甲子園をめざして頑張ってほしいと願っている。

予選順位を重視した近畿

 近畿は、市和歌山近江(滋賀)による「神宮枠」を巡る争いが焦点だった。敢えて「一騎打ち」にせず、地域性を排除した選考を行った。選出順がそれを証明している。近畿大会準々決勝敗退校からの5校目以降は、昨夏甲子園4強の主力が残る京都国際が5番目。そして6番目に市和歌山、7番目に東洋大姫路(兵庫)を選んだ。その理由について、小委員会の前田正治委員長は「6、7番目は3校で検討。守備力を決め手にして、市和歌山は県1位ということで6番目になった」と説明した。京都国際と市和歌山は予選1位。東洋大姫路と近江は同3位で、「予選1位は地域性を上回る」(前田氏)と補足した。ちなみに東洋大姫路、近江とも、近畿大会で予選1位校を破っている。

近江・山田の評価は加味されず

 近畿大会を実際に見た印象で言えば、この序列にそれほどの異論はない。近年の近畿の傾向は内容重視で、「地域的にバランスよく選んでいる」という認識でもない。しかし、神宮枠がなくてもこの順で和歌山2校を選び、東洋大姫路を落とせただろうか。近江には、昨夏甲子園4強に投打で貢献した山田陽翔(2年=主将)がいて、昨秋はヒジの故障でマウンドに立っていない。前田氏は「山田君が、参考になる試合で投げていないので、『想像で決めることはできない』という意見があった」と、あくまで近畿大会の内容で判断したことを明かした。これで滋賀勢のセンバツなしは、昭和45(1970)年からの5年連続に次ぐ、戦後、同県のワースト2位の4年連続なしとなる。

打力と地域性で倉敷工

 中国・四国の「抱き合わせ枠」は、倉敷工(岡山)に決まった。県大会で岡山学芸館に勝っていることには触れず、「中国大会は互角も、打力では倉敷工が上」(河原丈久・小委員会委員長)とし、明徳義塾(高知)との比較では、地域性も加味された。すでに高知が選ばれているため、同県2校を避け、岡山を選んだ次第である。このあたりは近畿と対極だが、各地区別に議論するので、ある程度はやむを得ない。

只見は熱いプレゼンで後押し

 21世紀枠については、丹生(にゅう=福井)が東の1位。大分舞鶴が西の1位で、3番目に只見(福島)が入った。只見のプレゼンテーションを行ったのは、木村保・福島県高野連理事長で、2年前に磐城を率いて同枠で出場している。さながら「恩返し」のような熱のこもったプレゼンだった。「小さな学校の大きな可能性への挑戦」と、全校生徒わずか86人の小規模校を強力に後押しし、「東北の復興のシンボル」と、部員13人にエールを送った。

豪雪地帯の2校もスタートラインは同じ

 今回は、豪雪地帯から2校が選ばれている。只見は新潟県境に近い会津地区にあって、現在も2メートルの積雪があるという。初めてセンバツ選考会の選考委員長を務めた寶馨(たから・かおる)日本高野連会長(64)は、「さまざまな困難を克服している点を評価した」と話し、同枠の意義を強調した。しかし、選ばれた以上は、同じスタートラインに立つ。全力で強豪に立ち向かい、全国の同じような境遇のチームに勇気を与えてもらいたい。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

森本栄浩の最近の記事