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近畿の最終枠は大激戦に! センバツ選考会、焦点の地区を徹底分析

森本栄浩毎日放送アナウンサー
近畿最終枠はエース不在を全員でカバーした近江と好投手の市和歌山が争う(筆者撮影)

 来週に迫ったセンバツ選考会(28日)の焦点は、すでに述べているように、近畿の最終枠(7校目)と、関東・東京、中国・四国のいわゆる「抱き合わせ枠」である。この3つについて、詳しく分析してみたい。

近江のエース欠場をどう評価するか

 大阪桐蔭がもたらした「神宮枠」を巡る争いは熾烈になりそうだ。8強敗退組から、実力を高く評価されるはずの京都国際と、兵庫から唯一、初戦を突破した東洋大姫路はほぼ安全圏。したがって、最終枠は残る2校に絞られる。地域性で浮上する近江(滋賀)は、試合内容がもの足りなかった。投手陣が総崩れで、金光大阪に6点差をひっくり返されて敗れた(タイトル写真は、金光に敗れて肩を落とす近江ナイン。一番手前が山田)が、初戦の社(兵庫)にも、大量リードを追いつかれている。夏の甲子園での激闘でヒジを傷めたエース・山田陽翔(2年=主将)の登板回避が響いて、いずれの試合も控え投手陣が四死球からの自滅というパターン。2試合で総得点、総失点とも「17」だった。山田の実力は夏の甲子園4強ですでに証明されているが、近畿大会で投げていない投手をどこまで評価に加味してもらえるか。

市和歌山には世代屈指の好投手

 対する市和歌山は、好投手・米田天翼(つばさ=2年)がいて、これは大きなアピールポイントになる。

市和歌山の米田は最速148キロで、世代屈指の真っすぐを投げる。変化球の精度や投球術では先輩の小園に及ばないが、ポテンシャルはかなり高い(筆者撮影)
市和歌山の米田は最速148キロで、世代屈指の真っすぐを投げる。変化球の精度や投球術では先輩の小園に及ばないが、ポテンシャルはかなり高い(筆者撮影)

 先輩の小園健太(DeNAへドラフト1位で入団)ほどのスケール感はないが、最速148キロを誇り、出場すれば目玉投手の一人に数えられるだろう。市和歌山にとって痛いのは、県大会で破った和歌山東が決勝まで進んだこと。近江がコールド負けでもしていれば地域性云々にもならないが、近江は試合の大半で主導権を握っていた。2試合とも大味だっただけで、エースの不在を野手陣の粘りでよく補ったとも言え、総合力は近畿でもトップクラス。滋賀勢は3年連続でセンバツに出場しておらず、地域バランスを考慮した選考は、センバツの根底にあるべきだと思っている。

昨年よりアピールポイント少ない東海大相模

 関東・東京の「抱き合わせ枠」は、東海大相模(神奈川)と二松学舎大付の争いとなりそうだ。センバツ連覇の期待が懸かる相模は、前年と全く同じ立ち位置(関東5番手)だが、状況はやや異なる。敗れた試合も、初回に失った3点を挽回できずそのまま押し切られたし、前エース・石田隼都(巨人へドラフト4位で入団)のような看板選手も不在で、全体的にアピールする材料が乏しい。関東大会で登板がなかったエース・求航太郎(2年)の不振も響いた。ちなみに前年の当該試合は、東海大甲府(山梨)に、9回2死からの逆転サヨナラ負けだった。対する二松学舎大付は、9回2死までリードする展開からの暗転で、まさに「試合に勝って勝負に負けた」という印象。奇しくも、前年の相模と全く同じだ。東京勢はここ4年、この枠を逃していることも加味すれば、今回は東京勢にかなりのチャンスがあると言えるだろう。

岡山勢と明徳のきわどい争いに

 中国・四国の「抱き合わせ枠」に浮上するのは、中国が岡山学芸館倉敷工の岡山勢、四国は明徳義塾(高知)になりそうで、明徳の実力をどう評価するか、注目したい。まず、ともに中国大会準決勝で敗退した岡山勢の優劣であるが、試合内容そのものは学芸館がやや上回る。倉敷工は、広島商との準決勝で投手陣が終盤に大崩れしたが、県大会で学芸館に勝っている(3-0)のが大きな救い。昨年も鳥取勢が同じ状況(ともに準決勝敗退)で比較され、米子東が県大会で勝っていたのに、中国大会でのコールド負けが響いて鳥取城北に後れをとった。今回は中国大会での試合内容に明確な差がなく、仮に倉敷工が浮上しても、前年との整合性を問われることはないだろう。明徳の横手投げ左腕・吉村優聖歩(ゆうせふ=2年)は、夏の甲子園8強入りにも貢献していて、鍛え上げられた守備力も高い。岡山勢との争いは、地域性(高知が先に選出濃厚)との兼ね合いでやや苦しいとみられるが、真っ先に決まる21世紀枠も微妙に絡むため、数的バランスを念頭に置いた選考(例えば中国4に対し四国2はアンバランス)をする可能性もある。

リモート会議の弊害も懸念

 そのほかの地区で波乱が起こる可能性は極めて低いと思われるが、昨今のコロナの状況が好転する気配はなく、昨年に続いてリモートでの開催となった。選考会はもともと密室会議で、これまでどんな話し合いが行われてきたかを知る由もないが、地区別小委員会の委員長がイニシアチブを取り、議事を進行させる。リモート会議だと、場の雰囲気が瞬時に浸透しないため、新任など経験の少ない委員が、率直な意見を述べづらいのではないかと懸念している。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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