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センバツのキーワードは「名将」? 秋の地区大会総決算

森本栄浩毎日放送アナウンサー
名門・東洋大姫路は、来春勇退する藤田監督の花道を甲子園で飾れるか(筆者撮影)

 秋の地区大会に続き、神宮大会も終わり、高校野球はオフシーズンに突入した。21世紀枠の候補校も決まり(辞退校もあり)、間もなく地区の推薦校も発表される。皆さんもセンバツの顔ぶれを予想されている頃では?今秋の熱戦を、簡単に振り返ってみたい。

クラークが北海道初優勝

 北海道は、夏の地区割で北北海道に組み込まれる2校が53年ぶりに決勝で激突。深川市のクラーク国際旭川実を3-1で破って初優勝した。旭川実は2年連続の決勝惜敗となった。東北は、強打の花巻東(岩手)が、4-1で聖光学院(福島)に快勝。4強には八戸工大一青森山田の青森勢が入った。

東海大相模は微妙な情勢

 関東は明秀日立(茨城)が、山梨学院との壮絶な打撃戦を制して優勝。4強は、浦和学院(埼玉)と木更津総合(千葉)で、今春センバツ覇者の東海大相模(神奈川)は、準々決勝で木更津総合に1-4で敗れ、選出は微妙な情勢。東京では、国学院久我山が、9回2死から二松学舎大付に逆転サヨナラ勝ちし、劇的な優勝を飾った。

敦賀気比が「2強」対決制す

 東海は35年ぶりの静岡勢同士による決勝で、日大三島聖隷クリストファーを破って初優勝した。4強は大垣日大(岐阜)と至学館(愛知)。優勝候補筆頭の享栄(愛知)を倒した大垣日大は、投手陣が崩れて日大三島に敗れた。北信越は、近年、地区2強を形成する敦賀気比(福井)と星稜(石川)のファイナル激突。気比が完封勝ちで7回目の優勝を果たした。4強には、小松大谷(石川)と富山商が入った。

実力校揃う近畿の8強

 激戦の近畿は大阪桐蔭が、初の決勝進出で勢いに乗る和歌山東を寄せ付けず、大差で退けて優勝。4強には天理(奈良)と金光大阪が食い込んだ。8強は、市和歌山東洋大姫路(兵庫)、近江(滋賀)、京都国際と実力校が並ぶ。大阪桐蔭の神宮優勝で、計7校が選出されるが、いずれも甲乙つけがたい。

明徳と岡山勢のラスト枠争いか

 中国は広島の名門同士が決勝で顔を合わせ、広陵広島商に快勝した。4強は岡山勢で、倉敷工岡山学芸館。四国は高知鳴門(徳島)に勝って、9年ぶり7回目の優勝。明徳義塾(高知)は準決勝で鳴門に延長11回の熱戦の末、敗れた。最後の1枠を岡山勢と争うことになるだろう。

大健闘の大島が準優勝

 九州は、九州国際大付(福岡)が、決勝で奄美大島の大島(鹿児島)を圧倒した。意外にも秋は初優勝。大健闘の大島は好投手を擁し、実力でのセンバツ出場が確実となった。4強は、長崎日大有田工(佐賀)で、今春センバツ準優勝の明豊(大分)は、準々決勝で九州国際大付に5回コールド負けした。

「抱き合わせ枠」と近畿が焦点

 選出における焦点は、関東と東京、中国と四国の「抱き合わせ枠」、それに近畿の顔ぶれだろう。21世紀枠については、10日に地区推薦校が決まってから検証したい。

星稜の林監督は「10年一区切り」

 さて、来春のセンバツでは、勇退を表明している2人の名将が甲子園で花道を飾ることになりそうだ。奥川恭伸(20=ヤクルト)を擁して夏の選手権で準優勝するなど、全国のファンを魅了した星稜の林和成監督(46)は、「10年を一区切りと考えていた」とのことで、これまで春夏8回、星稜を甲子園へ導いている。今夏は県大会で、部員にコロナ感染が出て出場を辞退しただけに、センバツが決まれば喜びもひとしおだろう。

東洋大姫路の藤田監督は岡田監督へバトン

 東洋大姫路の藤田明彦監督(64)も、来春で退任する。

東洋大姫路の藤田監督(中央)は、熱血漢として知られる。試合中は大きなゼスチャーで選手たちを鼓舞し続けた(筆者撮影)
東洋大姫路の藤田監督(中央)は、熱血漢として知られる。試合中は大きなゼスチャーで選手たちを鼓舞し続けた(筆者撮影)

 10年前の夏には、原樹理(28=ヤクルト)を擁して8強に導くなど、通算19年の指導歴で計5回の甲子園出場を誇る。今秋の近畿大会では、夏の甲子園準優勝校・智弁学園(奈良)に快勝して(タイトル写真)、準々決勝で大阪桐蔭に敗れた。藤田監督は、「選ばれることを信じて、練習したい」と話していたが、近畿増枠で見通しは明るい。ちなみに、藤田氏の後任は、東洋大姫路のOBでもある岡田龍生氏(60)で、履正社(大阪)を一昨年夏、全国優勝に導いた。名将から名将へ、名門のバトンをつなぐ。

報徳で優勝の日大三島・永田監督

 そして、東海大会のファイナルに進んだ静岡の両校は、名将に率いられて躍進した。日大三島の永田裕治監督(58)は、報徳学園(兵庫)の選手、監督として甲子園優勝を経験し、報徳退任後は高校日本代表監督も務めた。昨年4月、日大三島に赴任すると、チームは瞬く間に力をつけ、静岡に続いて東海大会も制した。前出の藤田監督とは、兵庫県内では最大のライバルであると同時に、強い信頼関係で結ばれている。「お互いが辞める時には(藤田氏は一時退任して復帰)記念試合をした」と話す永田監督は、同時出場を願う。甲子園での名将対決が実現するか?

聖隷の上村監督はミラクル野球人生

 聖隷クリストファーの上村敏正監督(64)は、浜松商の捕手として、夏の甲子園で、史上初(当時)の逆転サヨナラ本塁打で勝つなど2勝。早大を経て教員となり、浜松商、掛川西を甲子園へ導いている。夏の甲子園では池田(徳島)に延長14回サヨナラ勝ちして、静岡のファンを熱狂させた。今秋は県大会から劇的な試合の連続で、極め付きは甲子園を懸けた東海大会準決勝の至学館戦。9回裏に4点を奪って逆転サヨナラ勝ちする粘りは、まさに監督の野球人生の生き写しのようなチームカラーである。甲子園でも「ミラクル」を演じられるか?ちなみに上村氏は同校の校長で、選考会当日は自らが吉報を受けることになるのだろう。

センバツで師弟の絆を確かめたい

 試合をするのはもちろん選手たちだが、監督の経験や性格は、チームに色濃く反映される。監督を慕い、その師に導かれて甲子園をめざす。選手たちは、恩師の花道を飾ろうと奮闘する。そこには、師弟の「信頼関係」がある。次のセンバツでは、その強固な絆を確認したい。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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