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近江の二刀流・山田 投打に躍動 甲子園まであと1勝

森本栄浩毎日放送アナウンサー
近江の山田が投打に活躍し、決勝進出を決めた。甲子園まであと1勝だ(筆者撮影)

 甲子園をめざす地方大会も終盤戦。27日までに49代表中29校が決定した。近畿のトップ切って、火曜日には和歌山で決勝が行われ、智弁和歌山が市和歌山の小園健太(3年)を攻略して優勝した。水曜日に京都で。木曜日には、兵庫、奈良、滋賀で決勝が予定されている。

近江の原動力は2年生山田

 滋賀は近年、近江の独壇場となっていたが、昨秋、今春と県大会で敗れていて、今大会も苦戦が予想されていた。しかし、ふたを開けてみれば、ここまで危なげない勝ちっぷりで、堂々の決勝進出を決めた。その原動力が、最速146キロ右腕の山田陽翔(はると=2年、タイトル写真)だ。中学時代からスポーツ系のバラエティー番組でも「スーパー中学生」として取り上げられるほどの逸材で、昨夏の独自大会でも、デビュー戦から投打に活躍して優勝に貢献した。

秋の近畿大会で号泣

 入学早々から主力として活躍する山田だが、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。新チームからエースに指名されたが、滋賀学園に敗れて秋は2位止まり。センバツの懸かった秋の近畿大会では、抑えで起用された初戦の神戸国際大付(兵庫)戦で暴投を連発。リードを守り切れず、痛恨の逆転負けを喫してセンバツを逃した。試合後にはベンチに突っ伏して、「チームを勝たせられる投手になりたい」と号泣した。

4番エースとして二刀流

 今大会はエースナンバーを先輩の岩佐直哉(3年)に譲り、背番号「8」を背負う。野手としての貢献も期待されている証拠だ。春の県大会優勝校・綾羽との準決勝は、4番投手での出場となった。まさに「二刀流」としての真価が問われる。初回を山田が三者凡退で終えると、2回に近江打線がつながった。下位からの4連打などで3点を先制し、2者を置いて山田に打席が回ってくる。

山田の打撃は絶好調。広い皇子山球場の場外アーチはなかなか見られない。二刀流で甲子園をつかむか(筆者撮影)
山田の打撃は絶好調。広い皇子山球場の場外アーチはなかなか見られない。二刀流で甲子園をつかむか(筆者撮影)

 初球の変化球で大ファウルを放って場内をどよめかせると、続く2球目は打った瞬間にそれとわかる大飛球。右手を突き上げて本塁打を確信した山田は、場外へ消えた打球の行方を見届けることもなく、悠々と走り始めた。

わずか4か月で12本塁打

 「初球は体が開いたので、開きに気をつけてまっすぐ1本に絞っていた。感触がよかったので、自然に手が上がった」と、会心の一打に満足した様子。4月以降の4か月だけで12本目今大会2本目のアーチで、一気に大勢を決してしまった。山田は5回にも満塁の走者を一掃する二塁打を放ち、チームは19-0(5回コールド)で圧勝。山田は6打点の活躍だった。投げては、3回を1安打5三振。「変化球をうまく振らせた。島瀧さん(悠真=3年)が、大きく構えてくださったんで投げやすかった」と先輩捕手に感謝した。

「チーム全員で勝ちたい」

 「島瀧さんとしっかりコミュニケーションをとって、自分の投球ができるようになった。低めも全部止めてくださるんで、思い切って投げられる」と、先輩に対して必ず敬語を使うのは、真面目な山田らしい。兄は山田同様、投手兼内野手として大阪桐蔭で活躍したが、1学年上が春夏連覇世代で、甲子園でのプレーがかなわなかった。自身は、地元・滋賀の名門で輝きを放つ。3大会連続甲子園まであと1勝。秋は独り相撲で勝ちを手放しただけに、「(決勝は)チーム全員の力で勝ちたい」の言葉に力がこもる。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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